第9話

「百奈ちゃん超かわい。」


「え?てか、鹿助、お前百奈ちゃんと付き合ってんの?」



盾狼君、鹿助ろくすけって名前なの?似合わないけどウける。



私が彼らに向けて、女子禁制男子有効スマイルをお見舞いする。



脚は内股気味のハの字に、ストールをつかみ、埋もれた唇をこっそり覗かせて。斜め25度に傾けた顔で上目遣い。



しぱしぱ。可愛い私の出来上がり。



「おはようございまーす。鹿助君とお付き合いしてる百奈です!鹿助君のお友達に会えて、百奈嬉しい〜。」



はい、今の私、主演女優賞もの。



どーよ?と盾狼君を見上げて、瞬間的にドヤ顔を作る。


  

すると盾狼君が鼻で笑って、『レッドカーペット賞もん』と小さく囁いた。流れるカーペットで使い捨てする気かコノヤロウ。



「うっわ、百奈ちゃんと話せるなんて信じられん!」


「はあ?鹿助、彼女いんのに尚美なおみに手ぇ出したってわけか?」



グリーンメン寺道が、今にも盾狼君につかみかかりそうな勢いで迫る。



「出したっていっても最後までやってないし、」


「思いっきり手ぇ出してんじゃねえか!」 


「でも誘ってきたのは尚美からだよ?」


「尚美がんなことするわけねえだろが!!てか気安く呼び捨てすんなよ!」 



盾狼君が、私の手をクイクイっと引いて合図をする。



いやいやいや、可憐な乙女が4人組相手にどう立ち迎えっての?この私を平気でチンピラの巣に放り込むなんてどんな神経のドSよ?

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