第8話

連れて行かれたのは、ホーム内にたむろする男子集団の前だった。



ゆるダボな格好をした4人組が、喫煙所の前でタバコをふかし、笑い声を響かせている。


 

「おはよ、寺道てらみちくん。」

 


盾狼君が、髪色がグリーンの男の子を見ながら言った。



あまり関わりたくない集団。果敢に飛び込んでいくもんだから、盾狼君に握られた手をぎゅっと握り返す。

 

 

「おう鹿助ろくすけ。何しにきたの?」


「ん、ちょっとこの間のサークルの件、ちゃんと謝ろうかと思って。」


「はあ?もうお前はうちのサークルに入れねえよ?」


「うん、知ってる。」



威圧的な空気にも物怖じしない、盾狼君の空気感。



え?サークル入れないの?ププッ、私と一緒。



朝からやめときな?その綺麗なお顔が傷つくし、私を巻き込まないでくれる? 



「それよりも、寺道くんの彼女に手を出したこと、謝っとこうと思って。」


「……てか、え?なになにその子!薬学の百奈ちゃんじゃね??」



後ろにいた他メンバーが、珍しそうに前のめりになって聞いてきた。



私の頭の中で、出てきたワードを並べてパズルをカチカチはめていく。



“相殺”、“グリーンヘアの寺道くん”、“寺道くんの彼女”。そして今、これ見よがしに繋がれた手。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る