第2話 CASE B


こんなニュースの見出しを、見たことありますか?



「20代無職、男性。●●●駅にて、60代女性に暴行。『邪魔だったから。』」



この見出しを見た感想を聞かれたら、どのような感情を抱きますか?






「若者は何を考えているかわからない。」

ですか?


「その男性は日本人じゃない。」

ですか?それとも・・・



「別に・・・」

ですか?












ある朝のことでした。

●●●駅を、急足で走る男性がいました。


彼は急いでおりました。夢のために。


彼はアルバイトをしながら、将来役者になる夢を持つ青年です。


この日は、彼の将来に関わるかもしれない、大事なオーディションがありました。

間違っても、遅刻するなんてことは、許されませんでした。



しかしよりによって今日、彼にとって予期せぬ事がこの駅で起きてしまいました。

時間に余裕はありましたが、緊張してて周りがよく見えてなかったのか、それとも、「よくある偶然」でしょうか。


おばあさんにぶつかってしまいました。





「大丈夫ですか!?」

青年はおばあさんを起こしました。


おばあさんは青年を口撃しました。おばあさんにしても突然のことでしたので、びっくりしたのだと思います。

大きな、大きな声で口撃しました。


青年は何度も謝りました。自身の持てる精一杯の誠意を込めて謝りました。



だけどおばあさんは許してくれません。青年の手を離そうとしませんでした。

より強い声で青年に言葉を投げつけました。


人が集まってきました。


青年は、申し訳ない気持ちと、焦る気持ちがごちゃ混ぜで、頭が真っ白になってしまい、「ごめんなさい!」

と、女性を振り払ってしまいました。


女性は、尻餅を付いて、倒れ、怪我をしてしまいました。








これを見ていた人々が、・・・これを内集団バイアスというのですかね。

見ていられなくなり青年をとりおさえました。



青年は警察の取り調べを受けることになりました。

青年は、申し訳なかった気持ち、そして、オーディションのことを一生懸命説明しますが・・・


警察に役者のオーディションの事情なんてわかりません。

要するに邪魔だったからだな。と、解釈されました。





次の日のニュースに、このような見出しがつけられました。



「20代無職、男性。●●●駅にて、60代女性に暴行。『邪魔だったから。』」




そんなアホな。と思われるでしょうか?

でもこれは現実に起きたことだと言えば信じてもらえますでしょうか?






こういうのを、なんて言えばいいでしょうか?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る