第31話
麗奈の卒業式に参列した後に彼女と心平は店の軽ワゴンの中で話をした。
「卒業、おめでとう。それで従業員も増えて、心平饅頭も売れに売れて、これもすべて麗奈のお陰じゃ思うとる。げに感謝しとる。ありがとの。そこで思うたんじゃけど、従業員を全員、連れて社員旅行をしよう思うとるんじゃ。もちろん、このコロナが下火になってからの話しなんじゃけどの。泊りがけで日光見物をして、勝手に師匠だが武平饅頭さんにも行って、あちらさんはワシが真似をしたこたぁ知らんのじゃけど、お礼かたがた行くのに付き合うてくれるかな?」と心平。
「私も連れて行ってくださるのですか?」と麗奈。
「うん、一緒に行ってもらいたい思うとるけぇ、新婚旅行のようなものじゃけえ」と心平。
「嬉しいです。私をお嫁さんにして下さるということで……良いんですか?」と麗奈。
「うん。麗奈が大学を卒業したけぇ、ワシのお嫁さんになってもらいたい思うとったし、どうかな?」と心平。
「嬉しいです。ありがとうございます」と麗奈。
「じゃぁ、従業員全員を連れて、社員旅行方々、日光見物に行こうな? ワシャ日光東照宮や二荒神社に行ったことないけぇさ」と心平。
「はい、そうしましょう。それと、お祖母ちゃまに社長からプロポーズしてもらった話をしてもいいですか?」と麗奈。
「うん。そうして。中山様にゃあ一番、お世話になっとるけぇ、ワシの方からも麗奈を正式にもらいに行くけぇ、その件も伝えてくれると嬉しいんじゃけど」と心平。
「社長! 本当に嬉しいです。ありがとうございます」と言って心平の首に腕を回してキスをせがんだ。
心平も優しく麗奈を抱いてキスをした。
「それと明日は一番でうちの両親にも会うてほしいし、中山様にも挨拶に行くけぇ、その事も伝えといて、後、中国のお父様にもね」と心平。
「はい。わかりました」と麗奈。
※ ※ ※
翌日。
麗奈が店に来たので、二階の住まいに連れて行き、心平の祖父と両親に会わせて、彼女が大学を卒業したので結婚をすることを伝えた。祖父と両親も中山様には世話になっていたので、すぐに麗奈のことは認識し承知した。
その足で麗奈と一緒に中山様の家に訪問してお祖母様に麗奈を嫁にもらいたいと話すと、喜んでくれて、さらにその場で中国の父親に電話すると安心したと喜んでくれた。
従業員全員にコロナが下火になったら、社員旅行で日光に行くことを皆に話すと喜んでくれた。
そして心平と麗奈は結婚して夫婦となり、麗奈は和菓子店 桔平の跡取り息子を妊娠し、幸せな家庭を営み商売も順風満帆となっている。
心平饅頭は広島を代表する銘菓となって、形もまん丸で真っ黒なので、別の名を「原爆饅頭」と謳われるようになり、「広島の土産といえば、原爆饅頭」と言われるようになっていった。
「祖母ちゃんのお陰で店の方も何とか軌道に乗り、麗奈と結婚もできた。ありがとの」と心平と麗奈は広島市内が一望できる禊萩が咲く丘の祖母の墓前で合掌し報告をした。
- 了 -
広島の街が一望できる禊萩が咲く丘 @k-shirakawa
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