第22話

 ラトナ達がサバンナ地帯に向かう頃、タクティカルアーマー・コブラが砂漠地帯とサバンナ地帯の境界線に陣取っていた。


 砂漠地帯からはトップナンバーズのナンバー10ジョンソンと巨大浮遊艦に中型浮遊艦10数隻の小さな艦隊が100機のスローターギアと、サバンナ地帯からはナンバー37トロイとナンバー98トライデントが総勢、浮遊要塞2基、超巨大浮遊艦1機、中型浮遊艦や小型浮遊艦合わせて400機の大艦隊に600機を超えるスローターギア達が総攻撃を仕掛けた。


 初手、ジョンソンは味方艦でも小型の浮遊艦に音響爆雷を大量に積んでタクティカルアーマー・コブラに特攻させる。


 これには流石にタクティカルアーマー・コブラも一時的に完全に動きを止め、近接攻撃型スローターギアの一斉攻撃と各浮遊要塞と艦隊からの一斉射を受けて戦闘は終了したかと思われた。


 しかし、次の瞬間に大量の強酸が周囲にばら撒かれて、近接攻撃をしていた30機余りのスローターギアと、浮遊艦5隻が撃沈した。


 そして、タクティカルアーマー・コブラは狂乱モードに入り、手当たり次第に周りに居たスローターギアを呑み込み、浮遊艦を尾で打ち付けて破壊し、膨大な数の小型浮遊艦が大破し、200に届くスローターギアの破壊が終わると、あっという間に凄まじい速度でサバンナ地帯の内部へと入っていってしまう。


 最終的に最前線で指揮をしていたナンバー98トライデントが死亡、スローターギアの被害は325機を数え、浮遊艦の破損は大破158隻、中破125隻、小破98隻であり、無傷の浮遊艦は少なく、トライデントの浮遊要塞も強酸に被弾して惨憺たる状況となる。


 ラトナは新たなる力を得る為に上空3000メートルへとエンジェルアイズの高度を上げ、ナノマシンの容量を4倍強に増やして防御能力も引き上げた。


 更に簡易版ヘブンリーライトを無数に創り常に敵の攻撃に備えてエンジェルアイズにアクティブステルスと光学パターン迷彩、ナノシールドを展開させる。


[ラトナ、残念な話が有ります]

「なあに?」


[ジョンソンの艦隊がタクティカルアーマー・コブラに完敗しました]

「仕方ないんじゃない?ジョンソンが無能だっただけでしょ」


「あの馬鹿たれ、相手がタクティカルアーマーだからって前に出やがったんだな?」

[概ね当たっています。ミスターホプキンス。しかし、初手に音響爆雷を小型艦に詰めて特攻したのですが、1分も持たずに再起動して狂乱モードが起動したようです]


 ラトナはジョンソンの事などスッキリと忘れ、今はタクティカルアーマー・コブラの狂乱モードに興味を持ったようです。


 この位の割り切りの早さと情報収集能力がなければデスワールドでは生きてはいけません。


 ラトナが考え出した戦法が効かなかった相手に興味を持つのは自明の理でした。

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