第5話

 ラトナは一仕事終えて戦利品の売却をする為にアルデ・ルシナの町まで来ると入り口の門に有る検問所で入門手続きをする。


[アルデ・ルシナ入門手続き所です。『マーカーカード』の提示をお願いします]

「マーカーカードね、はいこれ、私のブルーマーカーのカードよ」ピピッ


「こっちは俺のカードだぜ!」

[情報照会開始…ブルーマーカーのラトナとホーキンスですね。本日は何をお探しですか?]


「うーん、今日はお探しではなく売却したい物が色々と有るのよ」

[後ろのあの輸送車両ですか?かなり大きいですね]


「そうよ、車両不足のアルデ・ルシナには交易用の輸送車両が必要でしょう?」

[分かりました。幾つかの売却先を検索中…『トレーダー』が直ぐに集まりますので入門して下さい]


 二人が輸送車両と共にアルデ・ルシナに入ると沢山の『トレーダー』が群がるように集まって来た。


 現在、アルデ・ルシナでは交易用の大型の輸送車両が不足しており、他の町への物資輸送が滞っている。


 この町では食料プラントや水の補給プラントが有り、各種装備品、例えばスローターギアなども販売されている。


 破損したタクティカルアーマーが落とした珍品なども置いて有るので、そこそこ目利きが出来る者は目敏くソレを入手して自慢のスローターギアなどに組み込んでいた。


 今回のラトナの目的は主に先の戦いで手に入れた輸送車両の売却なので、トレーダーが群がるように集まり目の前で競りが行われていた。


「輸送車両1番の競りを行う。先ずは3000万セル!」


「3200万セル!」

「3300万セル!」

「3500万セル!」…


 ここで使われる『セル』は、このデスワールド内の共通の電子マネーで有る。


 ちなみにタクティカルアーマーを倒した際もタクティカルアーマーの溜め込んだ資材から数億のセルを得ているが、水などが高級品なので貯めれる時に貯めるのがデスワールドを生き抜く知恵である。


 デスワールド内では全ての機械の動力源に水などが使われる為、水よりも嗜好品や酒の方が安いと言われる位に水は値段が高い。


 最終的に競りが終わると輸送車両が1台当たりの平均価格で6000万セル、合計で3億7000万セルで売却出来た。


 ラトナとホプキンスの二人は別々に別れて行動して合流、ホプキンスは笑顔だったがラトナは特に買い足す物も無いため、スローターギアに乗り込んでアルデ・ルシナを後にして移動要塞アトラスにスローターギアを格納し、バンデッツの討伐依頼を出した『ダシタ・ワ・イライ』へと進路をとる。


[ラトナ、今回の輸送車両は高く売れたようですね]

「リクローが先にアルデ・ルシナの情報を得てくれてたからね。そりゃー高く売れるわよ」


「あんなチンケな輸送車両で3億7000万セルってマジでスゲェな。他所なら半値位だぞ」

[ミスターホプキンスは何か収穫は有りましたか?]


「おうさな、タクティカルアーマー・スコルピオの外装板が良い値で売れた位か。まあ、それも水と食料に弾薬で少しばかり目減りしたからな」

[ミスターホプキンス、このアトラスに滞在中は食料や水はこちらで出しますよ]


「いや、やめとくよ。リクローが用意してくれる食料ってバンデッツの死体から合成したタンパク質に水は体液だよな?」

[元はそうですが、ナノマシンで完全分解してますので元の素材は気にしなくても良いかと]


「リクロー、だからさー、その感覚が私達には分からないのよ」

「ああ、なんか人間辞めてる感じがすんぜ」


[そうですか、人間由来の物資はダシタ・ワ・イライで売却しますか?]

「ええ、そうするわ。あそこのプラントなら『サンドシャーク』由来のタンパク質と雨水由来の水を手に入れられるし、トレーダーからも人間由来のタンパク質や水は喜ばれるしね」


 デスワールドの世界では限られたリソースの取り合いが頻繁に行われる。


 現在砂海で行われているサンドシャークの捕縛のように…。

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