最強
天まで届く炎柱は、彼女は最強と呼ぶに相応しい貫禄を魅せてくれる。
「えげつないな……最強」
「アンタ、近付かないほうが身のためよ」
(あぁ、わかってるが、おまッ黒かよ……)
足の円にある炎の領域からDNAみたいな螺旋状に炎が立ち昇る。ソレは見た目にそぐわない下着をちら見せしてくれた。
戦うたびにコレなら、コイツと同じクラスの奴は羨ましいな。
「さあ、行くわ! バケモノ!」
螺旋状の炎はノアの体に纏う衣に変わり、跳躍。刀は炎で何倍にも及ぶ大きさに形作られる。
(中に浮いた!?)
二刀の炎刀を大きく振り上げ、バケモノとぶつかった。凄まじいほどの衝撃、だが、奴は強靭な肉体の腕で受け止めて弾き返し、
うろたえること無く腕を振り上げる。
「フンッ、凄まじい威力ね……でもそれじゃ私は止められない!」
青く腐った腕を二刀で受けきったノアは頭上へ飛ぶと、横薙ぎ。反撃の炎刀を太い首へ。
刃は半分まで到達すると、更に暴れる奴は、人一人潰せる手を広げ、両方でノアを潰そうとする──刃を抜くが間に合わない。
「な、ノアァ──!!」
嘘だろ。 あの最強がこんな簡単に──
「なに騒いでいるのよ、みっともない……」
合わせた状態のバケモノの手から天に昇って炎が、ゆらゆらと滾っている。
炎が昇る方から声が聞こえ、上を見上げると、アイツの姿が。
「うぉ、凄えな! ……いつの間に上に」
「当然でしょ、私の技は誰よりも早く優れているの」
良かった、こりゃ心配無さそうだ。とにかく今は自分の傷の手当てが最優先。
俺はボロボロになった学ランを脱ぎ捨てるとシャツを包帯代わりに血塗れの腰下部に巻く。シャツは血で赤に染まる。
激しい攻防。その間、バケモノの腕を空中で紙のようにヒラヒラと数ミリ単位で躱し続ける。
ノアのスピードはLevel4。それに、技術や回避と知識でいとも簡単に躱しきれている。
流石だ──二つ名どうりの炎神
ノアの実力は総合Sランク、学園に五人しかいない、強者中の強者。そしてSランクには強者の証として二つ名が自然と付く──その名は
『
剣術のレベルが高くカウンターで『飛炎斬』という炎の斬撃を飛ばしているから名付けられたそう。
そして今もその『飛炎斬』を紙一重で躱しつつカウンターで何発も決めている。
「はぁ──!! そろそろ終わりにするわ!」
伸びきった奴の腕に乗り──居合の構え。
そのとき──咆哮がノアを襲う。
直に受ければ、吹き飛ぶほどの声量。腕に乗っているノアは距離が2mほどしか無く──直に受けた。
「うるさっ、ナニが──」
掠れた声で喋るノアは、今の咆哮で痺れて動けなくなった。バケモノはそんなノアに容赦なく、殴る。
激しく吹き飛び、壁に叩きつけられた。吐血し、体に纏う炎も消えてしまった。額から血が流れる。
まずい! 今直ぐ助けに──でも今の俺に何が出来る。 おとりか──それとも身代わり?
あ──もぉ! 何考えている、俺! 怯えるな! 助けるのに理由がいるのか?
否、要らないだろ!
「今行くぞ! ──なっ!? その怪我でなんで──」
──立ち上がったんだ。決意と共に湧き上がる炎は、何かを訴えていそうなほど燃え盛っている。
「負けない、負けられない──」
ノアに秘められた思いが爆発する。
「誰もが認めるように、努力するの──決して『才能』だなんて言わせない! 必ず勝つ!! 来い!」
決意を固めたノアは再び奴に二つの刃を向ける。
「精神力が凄い──けど、おかしい」
そう、おかしいのだ。さっきまで5mくらいだった巨体が……全体的に倍、いや三倍になっている。ノアがバケモノの腕に乗った時もそうだ、気づかなかったが少なくとも10mはデカくなってた。
しかも、傷が治っていやがる。
「ノア! 待て! それ以上攻撃するな回復するぞ!」
「何!? 今忙し──なぁ!? いつの間に!」
一瞬で目の前へ現れた奴は頭上に拳を下ろす。その大きさは縦だけでノアを優に超え、影で包むまれる程。
二刀流で受けるも……余裕が無く焦る。
「さっき受けたモノよりも、格段に強い……」
「避け続けろ! 攻撃したら更にデカくなるぞ!」
多分、攻撃したらダメージを吸収して回復する。吸収したらダメージに応じてデカくなる……そしたら辻褄が合う。
ノアは炎と合わせればパワーLevel5の超火力、それであんなにデカく成りやがったのか。
「くっ──はぁ! ──そんな事わかってるわよ!」
駄目だ──頭を打ってる
今はまだ何とか躱しているが、このままじゃ!
どうする──
どうする──俺!
あの力を解放するか
──でもそんな事をしたら
──全員死ぬって?
まだ克服してないアレを使えば、理性を失って──あの時みたいに?
……でもよ、逃げてしまったら二度戻れない気がする──なら、絶対に助ける。
血を流しすぎたが──条件は達成された。
さあ──克服しろ、ノアを殺さずに
バケモノだけを殺す──開眼しろ
「もう無理! 躱しきれない! 何か策があるんでしょ! 早くだしなさいよ!」
「……ノア、アイツは元、人間の超能力者──なんだろ?」
「そう、ってなんでアンタがソレを知って」
「人間に戻る方法はあるのか? 人間の頃の意識はあるのか? 死んでも誰も悲しまないか?」
「なに急に──グッ!? ええ、そうよ、 戻る方法なんて無い、意識も無い、誰も覚えてなんかいない……バケモノに改造されたなら、全て終わりよ」
「そうか……なら、良かった。コレで安心して──殺せる」
「もうだめっ……キャッ!」
既に限界を迎えていた彼女は、奴の攻撃を二刀流で受けるも吹き飛ばされてしまう。
また壁に追突する──半分諦めかけていたその時──ノアをキャッチし、受け止めた者がいた。その者は異様な異彩を放ち、まるで能面の様に無表情だった。
だがその顔にノアは見覚えがある──
「アンタは……さっきまでの奴? でも雰囲気が全然違う」
閉じていた左は開眼し、黒一色だった髪色には何束か赤毛が混じっている。そしてお姫様抱っこをしているのに全く感情が読めないこと。
でもノアには分かった──味方だと、あのバケモノを倒せる切り札だと。
「アンタ──名前は?」
「俺は──
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