闘戦学園の双刀炎神《デュアルブレイム》
ゆりゅ
日常
──続いてのニュースです。先日、
ピッ。
──人を殺した事はあるか?
昨日見た映画では、殺人なんて当たり前。
主人公は殺人という罪を犯したが、仲間と共に窮地を乗り越え、自分がしてきた事の過ちを反省し罪を償う。
だからまず仲間が欲しい! だなんて思っちゃイケナイ。そもそも人と関わっていはイケナイ。だって現実でそれは受け入れられない存在だから。こんな能力者や特異体質が溢れた世界でも、俺は。
だからなんとしてでも俺、
普通に平凡な人生を送りたい。
ベットから横になってテレビを見ていた世良は、寝起きという事もあり、体が重く起きられずにいた。
枕元の携帯をみると──時刻は午前七時。このマンションから学園へ向かうまで、バス使って二十分だから……
余裕持って八時に出よう。
朝起きたら、学園までの時間を逆算してから、いつもと同じルーティンを摂る。
今日もいつものルーティン……のハズだった。
……ピンッ……ポーン
(誰だよ……こんな朝っぱらから)
少し溜めてからのポーン。
独特のチャイムの鳴らし方にイヤな予感がする。
重い体を起こし、昨日タンスから放り出して置いたワイシャツを羽織り、制服のズボンを履く。
辿り着いた玄関ドアの覗き穴から、外を見た。
するとそこに──やっぱり。
「……ぅ゙」
──
パワー・スピード共にLevel3だが、技術面はLevel5。他にも色々、総合されてランクが決まる。Cランクの俺とAランクの結依じゃ、まるで住んでいる世界が違う。
なんでここにいるんだろうな、男子寮だぞ。
彼女は「
めんどくさい……が素直な感想だ。なら、いっその事、居留守を使おう。足音は立ててない、今なら──あ。
ドンッ!
「うおっ!」
──最悪だ。玄関で足がもつれ、床に思いっきり体をぶつけてしまった。
「りゅ、りゅうちゃんどうしたの? 大丈夫?」
ドアの外から、結依の声がする。
駄目だ。音を聞かれた。
もう居留守は使えないぞ。
「あ、ああ、大丈夫」
平静を装い、玄関のドアを開けると……
何やら大きな包みを持って立っていた。
「で、何の用だ。後、りゅうちゃん言うな」
「ご、ごめんね。りゅうちゃ……あ、りゅうくん。今日来たのは昨日疲れてただろうし、夜ご飯とか食べてなくて、お腹減ってるかなって思って」
……ちゃん。を、くんに変えただけだろ、昔から何も変わってないぞ。
「飯は、食ってないけど……下のコンビニで買ってくるから良いよ」
「それじゃ駄目だよ! りゅうちゃ……あ、りゅうくん、今日戦闘訓練の日でしょ? しっかり食べないと持たないよ!」
最後まで言いきってから、あわあわと口を手で押さえる。
……文句を言う気も失せるな。普段の学園でのクール美女は何処いった。キャラ変わりすぎだろ。
「……えっとね。りゅうちゃ……あ、りゅうくんの為にお弁当作ってきたから、朝とお昼の分。良かったら食べてね……」
「わかったって。ちゃんと食べるから……ほら、早く帰った。ここ、男子寮なんだぞ」
「う、うん──また、学校でね! あ、あと──気を付けてね、最近『最強殺し』って言う学園最強だけを狙う狂人もいるみたいだから──」
あぁ、今朝ニュースで流れてたやつか。
「分かった、分かった。気をつけるから……
それじゃ、また学園でな」
「うん、またね……あ、明日金曜日の夜にお弁当取りに行ってもいいかな?」
「あぁ、良いぞ。明日の金曜日だな、覚えとく」
「バイバイ……! りゅうくん」
──ガチャん
足早に去っていく音を聞いて、少し申しわけなさを感じる。今度、お礼でもするか。
それにしても、全くだ。
「最強殺し」なんて、俺の所に来るわけ無いだろ。一生お目にかかれそうにないよ。
──グルルルッ
いい匂いに釣られたのか腹から信号が鳴る。正直、週に三回は来る彼女に助けられている節もある。
どうしてこう世話を焼いてくれるんだろうか……なんて考えるのは辞めた。
多分……あの出来事が原因だから。あの忌まわしき記憶。俺が一人ぼっちになったあの記憶。
──グルルルッ!
先程より大きく長く鳴って、もう限界に近い腹をどうにか持たせて、リビングのデカ机で結依の持ってきた弁当を広げて食べた。
いかん、腹が減った。今すぐ食わなきゃ……助かった、結依。
プルプルッ、ブーブー
携帯が震えだし、最終アラームが鳴る。
最後の砦は七時三十分だ。
マンションを出る前は準備や飯で二十分はかかるので、余裕を持った設定にしている。
余裕ありそうだし、二十分だけ漫画を──
だらだら、ぐで〜ん。
俺は満腹になって満足し、本棚にあった漫画雑誌から一冊取り出して読みふけっていた。
──ふと、携帯の時計を見る。
午前七時 五九分──
やば、後一分しかない。少しだらだらしすぎたか。
ソファーに放り投げてあった、学ランを手早く着る。愛用武器「
部屋は五階。真下には、コンビニや公園、バス停などがある。
──残り三十秒。
このままだと間に合わない。──なら。
三階付近の階段で手すりを乗り越える。そして俺は、助走もなしに飛んだ。
──おっしゃぁ!!
誰もいないところで、豪快に着地。痺れる足を無視して、バス停に向かって一直線に向かう。
十秒程走り、そして、バス停に着いた。
だが、目の前に広がる光景に俺は膝から崩れ落ちた。
ちくしょう、なんで──なんで今日に限って、満員なんだ。既に定員オーバー三十人。中には、一人顔見知りもいるし。
「あっ世良じゃねえか! どうしたんだそんなところにいて」
コイツ……わかってるくせに。
「うっせ須藤。わかっとらぁ」
「八時五十分までにはつけよー! じゃあな! 世良〜」
走り去るバスを横目に、俺は仕方なく自転車で向かうことにした。
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