第17話
昼食の時間は過ぎていたが、男は私が眠っている間に食べたらしい。
私に、今朝口移しした液体を口移しで同じように飲ませると、袖でまた口を拭ってくれた。
「おまえさぁ、男といるってわかってねぇな」
男は冷めた目をこちらに向けた。
わかってない?わかってるよ。
でも、どうだっていい。
何をされたって、もうどうでもいいのだ。
「……へぇ。どうでもいいなら、何されてもいいわけ?」
いいよ。
だって、ご飯もお風呂も使わせてもらったのに、私は何も持っていない。
お金もない。服もない。
家も戸籍も、何もかも、きっともうない。
「全部ないから何されてもいいってわけじゃねぇだろ。
お前は女だ。身体は大事にしろ」
そう言いながら、私の上に覆いかぶさってくる男は、そのまま私に口付けた。
唇に感じる温かさに、なぜか泣きたくなった。
キスをしながら、男は私の両手に自身の手を絡ませた。
顔の両脇で手から伝わる温かさに、懐かしい感じがした。
最初は唇が重なっているだけだったのが、だんだん激しくなっていく。
男は、私の唇を食むようにキスをする。
酸欠になり、口からの酸素を求めて唇を開くと、そこから男の舌が口内に侵入する。
口の中を蠢き、犯していくその舌に翻弄されながら、男の手と絡められている両手にぎゅっと力を込めた。
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