第14話
「……はぁ。………風呂、行け」
かすかに笑う私を見て、男は言う。
ゆっくり起き上がり、絨毯の上に足を置いた。
ふかふかの絨毯は、裸足に床の冷たさを感じさせない温もりをもっている。
男が私の手を引き、風呂場へと案内してくれる。
「ここだ。
これがシャンプー、コンディショナー、ボディーソープ。あとはあるもん使え」
そう言うと、私に背を向け、手をひらひらさせて扉を閉めた。
脱衣所兼洗面所となっているかの部屋をぐるりと見渡す。
ずいぶん広い。
洗濯機と脱いだ服を入れる籠、洗面台にタオルケースとティッシュ。
広いのに、物はこれしかない。
そのせいか、広い空間がさらに広く感じる。
ゆっくりと服を脱ぐ。
お風呂なんてそうそう入れるものではなかったため、こんなに早く入らせてもらえるとは思わなかった。
ふらふらとした足取りで風呂場のドアを開けると、浴槽も大きかった。
円形で、大人が5人ほど足を伸ばせるくらいの大きさはある。
シャワースペースも広く、のびのびとくつろげる空間が広がっていた。
髪を洗い、体を洗う。
最後に顔を洗って湯船に浸かる。
温かくて、全身にその温もりが広がっていくのを感じた。
浴槽の端にに体を預け、縁に後頭部を置く。
自然に上向きになる。
ゆっくりと目を閉じ、温まっていくのを感じながら、意識を手放した。
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