第4話
円卓院は、セインブルグ王国が本城であるグラン・ゼ・アートに取り込まれた一つの機関であり、一つの建造物でもある。
アークライツ建築様式という、コーリアガイアやリースライトを崇める神殿などに良く用いられる建築方法で作られている。
白亜の大理石を建築材の中心にするのが特徴で、厳かで荘厳な印象を与える建造物が多い。
逆に民衆や、絢爛な様相を好む者には好まれないが、現在もコーリアガイアの教会が新造の建築に用いることが多い。
元々、建国期に国主であるセインブルグ一世の国家運営における方針の一つに「国主である自分の力が増せば増すほど、民衆は自分に対して進言し辛くなるだろう。その時に奇譚なき意見を述べることができる場と、理知的で現実的、かつ革新的な案を生み出す環境、そしてなによりも国家運営の重責を負いながらも高い水準で、それを実現しうる優秀な者達と身分問わず、対等な議論のできる機関が必要だ」というものがあった。
そういう意志の元に設立された機関が円卓院である。
本城の中でも離れの外周寄りに位置するのは身分問わず、外部の者も比較的簡単に訪れやすくするためだとカーリアリアは聞いていた。
外周寄りの外部から侵入しやすい場所に位置するという事は逆に言えば外敵からも狙われやすいという事だが、初代の国王は火の粉を払う自信があったのだろうか。それとも、そのような事にすら気付かない愚王だったのだろうか。セインブルグが建国から三百年後も健在であることから考えると後者はあり得ぬ話だが。
ただ、歴史から紐解いていくと、後世の王達は初代ほど自信家ではなかったように思える。初代ほど円卓院という機関が用いられた記録はないからである。
外周寄りの機関という事は、歴代の王達から足を遠退かせる原因の一つになった事はおおよそ間違っていないようにカーリアリアは考えていた。時間と場所が決められているという事は、襲撃に向いているという事である。
勿論その間、歴代の王は警備を強固にしていたようだが、中には円卓院を利用しないで、別の建造物で円卓議会を行う王もいたらしい。
臆病な、とカーリアリアは思う。
現に、カーリアリアはそこまで警備を手厚くしなかった。
なぜか。
それは警備を手厚くしたいと思っても、警備の者が集まらないからである。
どうにも、悪質な嫌がらせなのか、内部にカーリアリアの警護を意図的に薄くしようとする動きがあり、若く、まだ力を持たないカーリアリアはそれをどうにもできなかった。
実際、その状況を生み出した者が誰であるかのおおよそな検討は付いているのだが、その大本の元凶はおそらく、現在でもこの国で五指の権力者であるため、ヒロイズムで打倒しようとしても返り討ちになる為に泣き寝入りをするしかない状況であった。
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