僕が俺になるまで

@kekekeke

第1話

俺が初めて魔法に出会ったのは、中学2年の、ある古書店での出来事だった。

その古書店は近所の学校でちょっとした噂話の的になっていた、なぜかというと、最近雇われた店主が外国人の、それもなかなかに美形な人だというのだ。

古書店にそんな華やかな店主がいるということで、覗いてみようと行く人もいたが、どうも雇われ店主は気まぐれのようで、店が開いてないときも多かったそうだ。

そんな古書店に当時の俺が行ったのは、別にイケメン目当てというわけではなく(俺は男だし…)、祖父が理由だった。

祖父は大の本好きで、その古書店にもよく顔を出していた。

前の店主は祖父と同年代の男性で、付き添いで来た、引っ込み思案だった俺にもよく話しかけてくれた。

当時の俺は体も弱く、一人称も僕だった、今の俺を知るものからすると全く想像もつかないだろうが…

中学一年生のときに祖父が亡くなったあと、しばらく古書店には通っていなかった。

また通おうとしたきっかけは祖父の命日が過ぎて、ふと古書店を思い出したからだった。

正確にいえば噂話で話題にのぼったときにも思い出してはいたが、なんとなく、本当になんとなく行こうと思ったのだった。

思い立ったが吉日、古書店の前に立った僕はなんだか妙な違和感を覚えていた。

なんというか小ぎれいになっている…?

そんなことを考えていると後ろから声をかけられた。

「やあ、お客さんかい?」

ぎょっとなって後ろを振り返ると、確かに噂通りの金髪の外国人の男前がいた、まるで絵の中から出てきたようだ。それに…

「はい、久しぶりに来てみました。」

内心の動揺を押し殺し、そう答えた。

それにしても、なんだかこの世のものではないようだ、なにかしらの妖術を使っても不思議ではないとすら思える。

「ふーん、馳夫さんの頃からのお客さんかい。」

興味深いものを見るようなまなざし。

「じゃあ開けようか、どうぞお客さん。」

「ありがとうございます。」

そういって一歩踏み入ったとき、今までの古書店とは全く違った有様を僕は目にしていた。

同時に響き渡る声。

「言いそびれていたが僕は魔法使いでね、ベイルサークの魔導図書館にようこそ。」

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