ガーベラ

 私が『ひまわり』という題名のついた、雨宮薫と浅野明日花の約束の話まで読み終えたところで、玄関の方から先輩捜査官の声が聞こえてきた。

『さっきから、何やってんだ?早く次行くぞ』

『すみません、少し気になる物を見つけまして』

『こんな何もないような部屋で何見つけたってんだよ』

先輩捜査官は無理やり私が持っていた一枚の原稿用紙を取り目を通す。

『うわっなんじゃこりゃ。マス目の意味ないくらい文字びっしりだな…気持ち悪りぃ、早く捨てて次行くぞ』

『ちょっと待ってください。この紙も何かの証拠になるかもしれんません』

 私は先輩捜査官から紙を強引に取り返した。

『わーたよ、全く。早く最後まで読んで次行くぞ』

 先輩はため息をつきながら床に座りこちらを見ている。

私は気にせず続きを読み始めた。

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