第9話 あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
「おい!異世界人はどうなった?」
ラドミルが霊廟の
「おい…何やってる!!追えッ!!」
ラドミルは部下に命令したが時すでに遅く、甲冑の兵士が異世界人の三人を持って走り去ってしまった。
「――先輩ッッ……あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙―――」
遠くからケンの叫びが聞こえてくると、ラドミルは門のことを思い出して振り返った。
門は境界が水晶のような白色透明な鉱物で結晶化していて通れなくなっていたが、門の扉は閉まっておらず、完全閉門には至っていなかった。
ラドミルらはなんとか門を突破しようと策を練ったが、突破には最短でも二、三週間がかかると予想された。
「仕方ないな。突破できる魔法を使える者たちは残れ、それ以外は古都に戻って陛下に報告しに行くぞ。おそらく異世界人らはレスターの方へ逃げやがった。」
ラドミルらは少し離れた場所に留めていた馬に乗って、古都へ戻った。
カナエの両脚は回収されて、運ばれた。
「くそッ…緊急の寄せ集めの兵士では役に立たなかったか…しかし、村に密告者を置く作戦は役に立ったな………」
「パパ…メイお姉さんたちまだかな〜?」
「きっと大きな町に行ったんだよ。多分な……」
ミス研の三人はレスター王国の都市へ向かっていた。
「さっきはごめん。」
「話を遮っちゃったけど、さっきの甲冑がメイの魔法って………?」
ケンが尋ねる。
「何かね?ケンくんを守らなくちゃッ!!って思うと、力が湧いて甲冑が出てきたの。………うまく言えないや。」
「それって今も出せる?」
メイは試してみたが、出てこなかった。
「何だったんだろう………」
タダシが口を開いた。
「魔法の能力に名前つけて見たら出せるんじゃない?アスリートが掛け声で身体能力を上げる感じで。」
「ど…どういう名前にしようかな?」
「甲冑の兵士を出す………あっ、
ケンが止めた。
「なんで止めるのさ。いいじゃん、似てるんだから。」
「いやいや、さすがにそれは……」
「なんの話してるの?」
メイは
「じ、じゃあ
「えぇ………メイはどう思う…?」
「かっこいい名前!それにしようかな。」
メイの固有魔法名は
「やあッ!
メイが風で舞った木の葉に向けて言うと、甲冑は姿を現さなかったが木の葉は不自然に奥へ弾かれた。
『おおっ!すごい!』
ケンとタダシは口を揃えて言った。
それからしばらく歩くと、向こうの方に都市があるのを見つけた。そして、舗装されていないが都市へと続く街道に合流した。
「あそこか……つく頃には夕方か?」
タダシが呟いた。
「なあ、ふと思ったんだけどレスター王国はエリアン帝国の仲間じゃないよな…?」
ケンが聞くと、タダシとメイはまるで盲点だったと言うかのように慌てた。
タダシが急いでカナエのノートを開いてレスター王国についての記述を探し始めた。
「あっ!あったあった!大丈夫だよ!!」
『エリアン帝国とその他の国々は戦争状態ではないが、敵対状態にある。』
「もしかしたら、僕らを助けてくれるかもしれない。」
タダシはこれからのビジョンを考え始めた。
まず、エリアン帝国と敵対する国々と協力関係を築く。そして、大賢者の霊廟へ進軍してエリアン帝国の現世への侵略を阻止する。
現世と連絡をとって、不可侵条約を結ぶ。それらと同時並行にカナエを復活させる。
「それが、多分一番良い展開かな?あくまで理想だけど。」
「とりあえず、今の目標はレスター王国と友好関係を築くことかな?」
三人はその方向で行動することに決めた。
「現世には戻れないし、先輩のボディバッグは消えちゃったからお金が無いけどね…」
???
「ちょっと君たち!日が暮れると魔物が出るぞ、何してる?」
後ろの方から声が聞こえた。声の主は荷物を載せた馬を連れたおじさんだった。
「俺たち向こうの町へ向かってるんです。あなたは?」
「おう、俺は行商人さ。君たちと同じで、アドネー市に行くんだ。」
「行商人ってことは、お金持ってますか?」
タダシが質問する。
「お、おお持ってるが。もしかして君たち盗賊なのか?」
行商人は眉をひそめて、警戒し始めた。
「いえいえいえいえ!お願いがあるんです!」
「僕らの持ち物を買い取ってくれませんか?」
「おおっ!もしかして君たちお金を持ってないのかい!」
「えはは………そうですね…」
三人は顔を赤くした。行商人は予想が当たった、と嬉しそうに笑った。
「そりゃあ大変だな。今ここで、俺に買い取ってもらうのもいいが、市場で売ったほうが儲かるぞ。町の市場のことは俺が教えてやるからさ。」
三人は行商人と共にアドネー市に向かうことにした。
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【第0章完】トラブルシューターズ 〜ミス研は現世⇄異世界間の戦争を防ぐため奔走します〜 牽牛花 @kengyuka
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