第8話 どうしよう…

 甲冑の兵士は、三人を担いでサバト村を通ることなく大賢者の森を越え、自生する木の種類が変わっていくと、だんだん走る速度を緩めていき、停止した。そして、両膝を地面につけると風に吹かれたちりのように消えてしまった。


「ああ…消えちゃった………」

 メイが呟いた。


「そ…その……かっ…甲冑は何だったんだ………」

 タダシが言うと、メイが答えた。


「多分…私の…魔法…?」


「か、春日丘さんも魔法つかえるの!?」


「うん。なんか急に力がみなぎっ―――」


「ッ!何を呑気に話してるんだよ!!先輩が死んだんだぞ!!!お前らは見てないのか!?上半身が蒸発してッ………両脚が…目の前にッ………カッ…オッ…オエッ―――」

 ケンはカナエのことがトラウマになっていて、吐いてしまった。

 メイとタダシは、ケンが傷つかないようにカナエのことについて触れていなかったが、それがケンを刺激してしまった。


「ケンくんは悪くない!!だから傷つかないでっ!」

 メイはケンの背中をさすりながら言った。しかし、メイも深く傷ついていた。なにせカナエはメイが中学生の頃からの仲であったからである。タダシはケンと同様、カナエとは一ヶ月にも満たない関係だったが、身近な人の死に涙は堪えられなかった。





 突然タダシがバックパックから思い出したようにカナエのノートを取り出すと、流していた涙をぐっと堪えて食い入るようにノートを読み始めた。

 しばらくしてタダシは何かを見つけると、ケンにノートのある部分を指差して見せた。

「ほら!ケン!見ろ!このノートは、先輩が徹夜して書いていたものなんだ!ほらここ!」


『マ法は現世のことわりをも超越する』


「先輩は大賢者のにアクセスできるって言ってただろ。僕はが何者なのか分からないけど、先輩はさっきの軍の隊長の名前とか古代超魔法のこととかも知ってただろ?だから多分これも正しいんだ!生き物は生き返らないのが、現世の道理。だったら生き物が生き返る魔法もあるはずだよ!先輩にきっとまた会える!」


 ケンは伏せていた顔を上げた。

「ほ…本当か…?」


「ああ、今はとりあえずそのマインドで行動していこうよ。」

 ケンとメイは一安心した。


「ああ、そうだな。ここで泣いてるだけじゃ先輩は帰ってこない。ありがとう。」

「これからどうする?追っ手が来るかもしれない。どこへ行く?」

 ケンが立って言う。


「先輩のノートには、地図も描かれてたんだ。とりあえず、エリアン帝国から脱出しよう。」

 タダシは地図の描かれたページを開いた。


https://45599.mitemin.net/i904820/


「大賢者のって…すごい………」

 メイは地図に見入った。


「とりあえず、僕らはレスター王国の方へ行こう。」

 二人はタダシの考えに乗り、レスター王国の都市を目指した。

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