第7話 死んで(も)守る

しゅよ!!!創世の天誅てんちゅうをエリアン帝国軍第一番隊へお与え下さい!」


天の火ヤハウェ』!!!!



 カナエはひざまずいて、腕を上げて空を仰いだ。


「な、なぜ古代超魔法をッ!?霊廟の裏へ全員を転移しろ!!!!」

 ラドミルがそう言うと、武装兵のうち五人がそれぞれ魔法陣を展開し、一瞬で周りを囲んでいた武装兵の姿が消えた。ミス研にかかっていた手錠は、魔法を使った武装兵が遠くへ離れたため解除された。


「ハッタリが効くとはバカだな!ほら!!キミたちは逃げるんだ!!!」

 そう言うと、カナエは五十メートル先の霊廟へ向かって全速力で走り出した。


「せっ………………先輩!俺も手伝います!!」

 ケンはカナエの後を追った。


「ケンくんは行かないで!!」

 メイが叫んだがケンは聞く耳を持たなかった。





 その時、霊廟の裏では何も起こらないことからハッタリに騙されたことにラドミルが気づいた。


「まさかアレはハッタリだったのか!?あの女め………!」


「隊長!女と男がこっちへ向かってきています!」

 門の近くで魔物の召喚の準備をしていた兵士が、カナエが向かってきているのに気づいた。


「はッ!!まさか門を閉じるつもりかッ!殺してでも門を閉じさせるなッ!!!」


 兵士は遠くのラドミルの声を聞いた。

「了解です!」

「おい!止まれ!!止まらないと殺すぞ!!」

 カナエは兵士の言葉を無視して走り続けた。





「仕方ない!僕ら二人だけでも逃げよう!!」

 タダシは断腸の思いでメイにそう言った。


「嫌!二人を捨てて逃げられない!私はここで二人が帰ってくるのを待つから!」


のを待つ、って………」

 タダシはそれ以上は言わなかった。





「あと十メートル…五メートル…あと少しで………」


「し、死んでもいいんだな!?!?」

怪力ゼット光線』!!!


 兵士が右手で作った銃の人差し指と中指から生まれた真っ白な光が、カナエの中腹部を貫いた。超高エネルギーの光線が体に当たった衝撃で、カナエの体は二つに別れた。しかし、カナエの上半身は衝撃で門へ飛び、右手が門の境界に接触した。その瞬間、


双子の門パラレルゲート 閉も―――』!!!パキキキ門の境界がキキキキキ結晶化する音


怪力ゼット光線』!ジュワッッッ

 光線がカナエの上半身を穿うがつと、ちりとなって消えた。


『先゛輩゛ッ゙ッ゙ッ゙!!!!』


 三人に衝撃が走った。ケンの目の前には、飛んできたカナエのあしが転がった。


「お前ら!動くな!!動こうものなら、この男のあしを撃つぞ!!」


 ケンと、門のそばにいる光線を撃つ兵士との間は二十メートルほどあったが、逃げ切るのは難しい。


「あ…あああ………」

 ケンは恐怖で足がすくんだ。ケンは兵士に従わず、後ろに向かって走り出そうとしたが足がもつれて転んでしまった。


「いいんだな!?!?撃つぞ!!」

怪力ゼット光線』!


「ケンくんッッッ!!!!!」


 ジュワッッッッ


 は光線に灼かれて消えた。


「………え……?」

 ケンが振り向くと、銀色の盾が宙に浮かんでいた。盾は超高エネルギーを反射した衝撃でドロドロと溶け、盾の持ち手の手からだんだんと甲冑の兵士が実体化し始めた。


「ケンくん!!こっちへ!!」

 メイが呼ぶが、ケンは夢の中で何故か走れないように、なかなか立てずにいた。すると、甲冑の兵士がケンをお姫様抱っこして走り出し、三秒ほどで二人のもとへ戻った。

 そして、甲冑の兵士はケンとタダシをそれぞれ小脇にはさみ、メイをおんぶをするように背中に掴ませると全速力で走り出した。


「おい!追えッ!!」

 四人からは遠くからラドミルの声が聞こえたが、すぐに聞こえなくなった。


「ウガアアッッ…先輩ッッ……あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙―――」

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