第5話 この世界は何?

「私たちに、この世界のことについて教えていただきたいのです。」

 カナエがそう言うと、長老は知っている範囲なら全て答えると承諾した。


 それからカナエはこの世界の基本的なことから聞き取り始めた。カナエは片っ端から聞いていったので、聞き取りは昼前から夕暮れまで行われた。三人とジルグは耐えかねて、昼食をとった後は長老の家から脱出した。ジルグは三人に村を案内した。





「このサバト村は、大昔はみやこの近くの村として発展していたんですよ。だから、村と王都を結ぶ街道はその名残りで整備されているんですよ、最近は補修の頻度が少なくなってきましたがね………」

 ジルグはこの村について説明した。


 ケンは村の周りを囲っている柵を村人たちが十数人で点検しているのを見て、ふと聞いた。

「柵、見た感じキレイだけどどうして点検してるんだ?」


「毎日、結界が機能しているか確認しているんですよ。魔物が侵入してこないように。」


「まっ魔物!?それは僕らを襲うのか!?!?」

 タダシが震える。


「ええ、そうですよ。だから毎日点検しているのです。」


「結界というのは、魔法ですか?」

 メイが質問する。


「ええ、結界魔法を使って張ります。そういえば、あなたたちは魔法が使えなかったですよね?どうやって生活しているんですか?」


「電気と機械ですかね…?電気というのは、かみなりみたいなものです。そのエネルギーで機械を動かします。」


「よく分かりませんが、代わりにそのようなものがあるのですね。」

 ジルグはケンたちの世界について色々と聞き、自動車や飛行機などの存在を知って驚いていた。





 夕方になり、カナエが長老の家から出てきた。ミス研は今日はとりあえず元の世界へ戻るため、霊廟へ向かうことにした。村人たちは、また明日と手を振った。


 カナエは歩きながら魔法について話した。話によると、

・魔法を使うとというものを消費する。

・魔法は、五歳から十歳までに発現する。

・魔法の性質は人によって異なり、遺伝することもない。

・読心魔法や結界魔法などの基礎的であり、かつ簡易的に能力を弱めた魔法は誰でも使える。

・魔法の発現する性質は、発現者の周りの環境によって決まるという説がある。

 例えば、戦災孤児は攻撃魔法が発現しやすい。

・おそらく私たちは魔法を使えない。

 ということらしい。


 ケンとタダシは、魔法が使えないと知ってしょんぼりしてうつむいていた。


「まだ、分からないことが多い。長老から聞いたんだがね、明後日にサバト村に行商人が来るらしい。そして、お金を払えば王都まで連れて行ってくれるらしいんだ。王都はこの国で一番発展している大都市らしい。行ってみないか?」


「でも、先輩。お金が必要なんですよね?僕らはこの世界のお金を持っていませんよ?」


「いいや、両方の世界で共通して価値のある物がある。きんだよ。王都に行くなら、五十グラムあったら余裕で足りるらしい。それくらいの金なら出せる。」


「先輩って何者………?」

 タダシが声を漏らした。カナエは不敵な笑みを浮かべた。


 しばらく進み、だんだん木々が高くなってくると、ケンは近くに木苺きいちごのような植物があるのを見つけた。


「先輩、木苺食べますか?」

 ケンは小腹が空いていたので木苺のような実を採ると口に運んだ。

 カナエが振り返ってケンを見た瞬間


「待て!食べちゃダメだ!!!」

 大声で言った。

 ケンは驚いて口に入れようとしていた実を落とした。


「この実って危ないんですか?長老に教えてもらったんですか?」


「いいや、分からない………なんでだろうな………?」


 全員は、困惑しながらも霊廟に到着し、門を通って部室に戻った。

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