第4話 異世界交流

「ニホンゴ、エイゴ、ドイツゴ…とは何ですか?」


「通訳とは、ある言語の言葉を同じ意味を持った別の言語の言葉に移すこと…かな?日本語、英語、ドイツ語は、言語の名前だよ。」


「あなたたちはが全く使えないのですか?」

 まるで、「大人が自転車に乗れないのか?」と聞くようなくらいの感覚でロナは尋ねた。


「ああ、私たちは魔法の使い方を知らない。そもそも使えるのかも分からない。」

 カナエはハッキリと答え、ロナを驚かせた。

「キミの住んでいるところには、大人はいるかい?大人に聞きたいことが山ほどあるんだが。」

 ロナは頷くと、村の方まで案内してくれた。





「良かったなタダシ。クマじゃなくて、女の子で。」

 ケンが笑いながら言うと、タダシは言い訳をひねり出して並べた。そして、メイも


「ケンくんは正常性バイアスが強いから、自分たちは安全だと思っているけど、そのままだといつか本当に危ない目に遭っちゃうよ。先入観で物事を判断せずに、慎重に行動しないといけないよ。」

 と言ったが、ケンはそれも言い訳だと言って一蹴した。


 巨木の森…大賢者の森林を進んでいく途中で、メイが思い出したかのようにスマホのカメラで森林を撮ると、シャッター音でロナが振り返った。


「それは何ですか?」


「これは、スマートフォンだよ。カメラで写真を撮って、記録しているの。」


「…どういうことですか?」


「ほら、見てみて。景色を写し取るんだよ。」

 ロナはメイの隣に移動して、メイは撮った写真をロナに見せた。


「この板はあなたたちの世界のものですか?とってもキレイ…………」

 ロナは目を輝かせながら画像に見入った。メイは、自身の撮影技術に惚れてしまったか…と言わんばかりにニヤニヤしていた。





 しばらく歩いていくと、だんだん木々の樹高は低くなっていき一キロメートルほど歩くと、木々は見慣れた高さにまで低くなった。そして、向こうの方に何か建物があるのが見えた。


「ちょっと待っててね。」

 ロナはすっかりメイに懐いていた。ロナはとりあえず両親を呼びに行った。


「僕たちには全然懐かなかったのに…春日丘さんはずるいなあ…なあケン?」


「そうだな…やっぱり顔じゃないのか?メイは顔が良いから…」


「なんだい?私はみにくいとでも???」


『いや、そこまでは………』


「つまり、醜いと言いたいんだね。」


『いえ!美しいです!』

 二人はそう言わざるを得なかった。


 そんな話をしていると、向こうからロナがスカートを履いた、金髪で三つ編みの女性と、麦わら帽子を被った、農民のようなガタイの良い男性を連れてきた。

 ロナの両親は驚いた顔をしながらロナに手を引かれて、近づいてきた。


「この人たちが、別の世界から大賢者の霊廟を通って、ここに来たんだって。」


「と、遠いところからよくお越しになりました。私は、ジルグです。」

 ジルグはそう言うと、右手で麦わら帽子を脱いで、深くお辞儀をした。ジルグは目の前の四人組が嘘をついているとは思えなかった。なぜなら、見たこともないような服装をしていて、身なりが綺麗だったからである。彼は、異世界人という存在に納得するしかなかった。


「わ、私は、カリサです。娘の相手をしてくださり、ありがとうございます。」

 カリサはジルグと同じようにお辞儀をした。


「はじめまして、私は、東カナエです。」

 他の部員も続いて挨拶をした。


「単刀直入に聞きますが、この村の村長はどなたですか?私たちはこの世界についての情報を知りたいのです。」


「村長は私です。しかし、情報を知りたいならば長老に聞くのが一番でしょう。私が案内しましょうか?」

 ミス研はジルグの提案に乗り、村の中央の辺りに一緒に行った。村の通りを通ると、何人もの人々がミス研を不思議そうに見た。


「ねえねえ村長さん、その人たちは誰ですか?」

 あるおばさんが尋ねる。


「ああ、この方々は別の世界から霊廟を通ってやって来たらしいのです。今から長老のところへ行くところです。」

 ジルグがそう答えると、どよめきが生まれた。





 コンコンコンとジルグが長老の家の扉を叩く

「カーツさん?あなたに会いたいという人たちを連れてきました。」


「おう、入れ。」


 長老は、八十代ほどのしわしわでよぼよぼのおじいちゃんだった。髪はほとんど無く、大きな白い髭が特徴的で袈裟けさのように肩に大きな布を掛けていた。長老はジルグらに、まあ座りなさいと言って全員を大きなテーブルを囲むようにして座らせた。

 家は木造で、二階へつながる階段や暖炉、ロッキングチェアがあった。天井に照明は無く、代わりに大きなテーブルの中央に燭台しょくだいがあった。壁の周りは本棚だらけで窓のあるところ以外の壁はほとんど見えなかった。本がたくさんあるからか、古本屋の匂いかしていた。


「最近、珍しいのが手に入ってなあ。、飲んでみるか?」


「なんですか、オチャって?」


「飲めば分かるさ。あんたたちはどうだい?」

 ミス研は全員が飲むと答えた。カナエはジルグの発言を聞いた後、周囲を見回してから碇ゲンドウのようなポーズをしてうーんと熟考し始めた。


 長老が台所で何やら魔法を使ってお湯を沸かすと、テーブルには人数分の紅茶が出された。


「さて、話とはなんだ?」


 ジルグが答える。

「この方たちは、別の世界から大賢者の霊廟を通ってここにやって来た、異世界人なのです。」


「そうか。で、なぜわしに会いに来た?」

 長老は別に驚くことも、言葉が詰まることもなく質問した。ミス研はその落ち着きように圧倒された。しかし、カナエだけはその限りでなかった。ずっと考え事をしていたかと思えば、はっ…と気づいたように顔を上げると


「私たちはこの世界のことについて何も存じません。霊廟のことやこの世界の文化、そもそも魔法とは何なのか、など知りたいことが多々あります。そのため、私たちにこの世界について教えていただきたいのです。」

 そう言うと、カナエは頭を下げた。

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