第2話 半ば強制的な入部
???
「ウギャアアアアア!!!」
ドスン!!!
咄嗟にケンが振り向き、自分が落ちてきたマットの方を見ると眼鏡を掛けた小柄な男がマットの上にうつ伏せで倒れていた。
「だ、大丈夫ですか!?!?!?」
上からメイの心配する声が聞こえてくる。
眼鏡の男は立ち上がると、すいません大丈夫ですと言い、マットから降りた。
「すまないが、キミは誰かな?どうしてココに来たのかな?」
カナエが動揺を隠しながら尋ねると
「ぼ…僕は
ケンは、悪いのは目の前の高身長女だと訂正した。
「市岡くん黙りたまえ。関係のない人を巻き込んでしまいすまない。私はミステリー研究部部長、東カナエだ。よろしくね佐野くん。」
タダシはよろしくと言われて戸惑いながら、早く出してくれと言うとカナエは目を瞑って腕を組んだ。
ケンはさっきの話を聞いてからのこの態度は、何か嫌な予感がする………と思った。
「キミたちには、ミステリー研究部に入ってほしいんだ。」
ケンの嫌な予感は見事的中した。ケンは嫌そうな顔をむき出しにした。タダシはポカンと口を開けて、いかにも意味が分からないといった顔をした。続けてカナエは
「一応部は三人いれば存続可能だから、佐野くんが落ちてきたのは想定外だったけれども、部員は多いに越したことはないからね。」
と、暴論を言った。
タダシが、自分はバスケ部に入部して、モテたいからそれはできないと断ると言い、続いてケンも断ろうと口を開こうとすると
「嫌だね。」
子供の駄々のような返事で、二人は返す言葉を失った。
そこからカナエは、またケンのときと同じ説明をして、タダシに興味を持たせようとした。
ケンが聞いたところまで一通り話し終わると、タダシが部にカナエしかいなかったという事実に驚愕しながらも、カナエは地下空間で見つけた
「―――。地下空間で私は、
二人は言っている意味が分からないが、とりあえずカナエに付いていって異世界への門を見に行った。
洞窟の狭い空間をどんどん下ると、やがて教室一つほどの大きさの空間に辿り着いた。まずはじめに目に入ったのはロダンの“地獄の門“のような大きな門が開いていて、門の先の空間はジャイアントセコイアのような大きさの木の森があり、異世界としか呼べないほど異質な世界があった。門の境界は凪いでいる水面のようで、この世界と向こうの世界を隔てていた。門の周りは祭壇があり、白い岩でできている門や空間の壁、床そして天井には何も植物は生えていなかったが、別の石で作られた祭壇には苔などの植物が茂っていた。
「どうだい?これで分かってくれるかい?」
二人は信じるしかなかった。そして、ケンは悩みながらもこの門の先に何があるのかを知りたくなり、入部すると言った。タダシは、未知への恐怖ゆえに渋っていたが、メイが看板を撤去して落とし穴を塞ぎ終わった後に門の空間に三人を探して駆けつけてくると、すぐに顔色を変えて快諾した。
ケンとタダシ、そしてメイが入部届を部長に渡した後、外へ出てきたときにはもう昼下がりだった。地下空間の出口は、去年は草木に覆われていたらしいが、一年かけてカナエが整備したため普通に通れる道ができていた。そして、道は学園の通用門の近くの公園の端の方にひっそりと接続していた。
それからカナエは入部届を先生へ渡しに、タダシは寮棟で入寮の準備をしに、それぞれ学園に戻った。そして、ケンとメイは
「今日は、乱暴なことしちゃってごめんね…市岡くん。」
「いやいや、落とし穴はちょっとビックリしたけどあんな不思議な門を見れて良かったよ。あ…あと、ケ…ケンでいいよ……呼び方…」
ケンはとても緊張しながらも、出会って初日くらいしか言えないことを言えた。
「じ…じゃあケンくんって呼ぶね…!」
メイは動揺した。しかし、その動揺が
十数秒の沈黙の後、ケンが言った。
「で、でも、どうしてわざわざ落とし穴なんて仕掛けたの?別に呼んでくれたら来たのに。」
「それは、入学前に先輩が私に言ってたことだけど、入部してもらって、地下空間のことを秘密にすると約束してもらうまで、地下空間に閉じ込めて帰らせないつもりだったんだって。地下空間のことが学園とか多くの人に知られるのも危険で募集もできないから、興味のありそうな人をそうして入部させるしかなかったんだって。」
「そ、そう………」
もし、自分が入部したくないと言っていたら、今ごろカナエに地下に監禁されていたと思うと、ケンはゾッとして血の気が引いた。
学園と最寄り駅の片山台駅までの距離は歩いて六分ほどであり、高低差もほとんど無いため二人はすぐに片山台駅に着いた。二人は家の方向が逆だったので、そこで別れた。駅は、近くに住宅街も無く学生くらいしか利用しないので、ほとんど人はいなかった。そして、ホームは中央に線路をまたいで向かい合わせになる相対式ホームのため、二人はしばらく気まずい時間を過ごした。
先にケンが電車に乗った。ケンが手を振ると、メイが振り返した。この幸せがずっと続くことを願った。それから、連絡先を交換し忘れたことに気づいただろう。
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