教えて、グレン先生



グレンはセレフィナに基本の構えを教えながら、彼女の真剣な眼差しを見て、自身も気を引き締めた。「まずは、足の位置をしっかりと固定することが大事だ。剣を持つ手は、力を入れすぎず、リラックスさせておけ。そうすれば、よりスムーズに動けるようになる。」






セレフィナは言われた通りに姿勢を整え、剣を持つ手に意識を集中させた。その瞬間、彼女は剣が自分に馴染んでいく感覚を得て、心の奥底からわくわくする興奮が広がっていくのを感じた。魔法使いとしての力を誇示することもできるが、剣を振るうことにはまた別の魅力があった。




「その調子だ!今度は実際に振ってみよう。」グレンの声に導かれ、セレフィナは剣を振り下ろした。その瞬間、空気が切り裂かれるような音が響き渡る。力強さはないものの、彼女の動きには不思議な華やかさがあった。






「いい感じだ!でも、まだまだ力が入りすぎてるな。」グレンは彼女の動きを見ながら、少し首をかしげた。「もう少し自然に振ると、もっと力強くなるはずだ。」






「なかなかやるじゃないか、セレフィナ。」グレンは驚きの表情を浮かべ、彼女の成長を見て感心した。「お前は才能があるかもしれないな。もっと続けてみるか?」






「もちろんだ。だが、我が力を思うと、まだまだ物足りない気もする。」セレフィナは微笑みながら言った。彼女の心には、魔法使いとしての自分と、剣を持つ新たな自分との間で葛藤が生まれ始めていた。この新たな道を進むことで、どんな未来が待っているのか、それが彼女の興味を引きつけていた。






「じゃあ、次はコンビネーションを試してみよう。剣を振った後、すぐに魔法を発動させるんだ。」グレンの提案に、セレフィナは頷き、心の中で新たな挑戦を決意した。剣と魔法、二つの力を併せ持つことで、彼女の戦いの形がどのように変わっていくのか、彼女自身も期待に胸を膨らませていた。




セレフィナはその言葉に頷き、再び剣を振り下ろす。今度は彼女の動きは以前よりも軽やかさを増し、少しずつ剣を扱う感覚が掴めてきた。振るたびに新たな力を発見するようで、彼女の心は高揚していた。






* * *




セレフィナは剣を軽く構え直し、意識を集中させた。剣を振り下ろす動作と同時に、手の中に魔力を練り上げる。剣先にわずかに青白い光が灯り、次第にその光は淡い炎のように揺らめき始めた。




「よし、そのまま続けろ!」グレンが声をかけると、セレフィナは剣を振り下ろす勢いに合わせて魔法を解き放った。剣先から放たれた光が、目の前に小さな衝撃波として広がる。






「これは…想像以上だな。」彼女は小さく息を吐きながら、自分の力が剣とどのように調和したのかを感じ取っていた。魔法剣士としての新たな可能性が、彼女の心に深く刻まれる。




「お見事だ!ただでさえ魔法に秀でているのに、剣術にもこれだけの適性があるとは…驚いたよ、セレフィナ。」グレンは心底感心した表情で拍手を送る。








「ふふ、これくらい当然だ。」セレフィナは少し得意げに笑って見せたが、その表情にはどこか楽しげなものが含まれていた。久々に挑戦する新しい感覚、そして魔法とは異なる鍛錬に身を投じることが、彼女の心を活気づけていた。




「なら、実戦での動きをイメージしてみようか?ただ剣を振るうだけじゃなく、動きの中でどれだけ自然に魔法を組み合わせられるかが鍵だ。」






グレンの提案に、セレフィナは少し興味を示し、剣を手にもう一度構えた。そして、周囲の動きや空気の流れを感じながら、剣を振り、続けて魔法を放つ。魔法と剣術の連携が次第にスムーズになり、彼女の動きは一層鋭さを増していった。




「これが私の新しい力…いや、可能性か。」セレフィナは小さく呟き、目の奥に挑戦者のような光を宿した。その姿に、グレンもまた熱意を掻き立てられた様子で微笑んでいた。








彼女が帝国から来た「大魔法使い」という仮の姿であれ、その剣の振るい方にはただの魔法使い以上の闘志と情熱が込められている。新たな自分と向き合いながら、セレフィナはこの冒険の旅に一層深く没入していくのだった。

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