魔王、ダンジョンに潜る
セレフィナはダンジョンに潜りたい
ある日の夕暮れ、リリィと共に旅を続けるセレフィナは、ふと輝く瞳でリリィを見つめながら、唐突に言い放った。
「リリィ、我もダンジョンというものに挑んでみたい!」
リリィは目を瞬かせ、少し驚いた表情を浮かべる。「セレフィナ様が…ダンジョンに、ですか? あまり興味がなさそうでしたが」
「いや、興味がないというわけではない。ただ、長きにわたって戦場での戦いばかりだったからな。だが…この世界に足を踏み入れてからは、どうも好奇心が湧いてくるのだ。人間が冒険心を抱くように、我も挑んでみたくなったということだな」
リリィは思わず笑顔を浮かべ、セレフィナのその意外な一面に感心しつつ頷いた。「でしたら、ダンジョン都市に向かうのが一番です。そこには数々のダンジョンがあり、冒険者も多く集まっているのでセレフィナ様にもぴったりかと」
「ふむ、決まりだな。我が力をある程度抑えていても楽しめるというのなら、なおさらだ!」セレフィナの表情には、自信と期待が入り混じったような輝きが宿っていた。かつて戦場を支配してきた彼女にとって、単なる戦闘の場ではなく、未知なる試練の地であるダンジョンに挑むことが、どこか新鮮に思えたのだ。
数日後、二人はダンジョン都市「ヴァレリア」へと足を踏み入れた。活気あふれる街には、異国の装束を纏った冒険者や商人、騎士団の者たちが行き交い、街のいたるところから賑やかな声が響いている。周囲にはダンジョンの入口がいくつも点在し、冒険者たちが各々の武器を抱え、準備を整えていた。
「ここがダンジョン都市…ヴァレリアか。何とも賑やかなものだな」セレフィナは、街並みを見渡しながら呟いた。その眼には好奇心が宿り、どこか興奮さえも感じられる。
リリィは微笑みながら案内を始めた。「この街には、さまざまなレベルのダンジョンが存在しています。初心者向けからSランク以上の難易度まで。冒険者の腕試しや実力の証明の場として、多くの人が訪れるんです」
「ほう…それは面白い。では、早速腕試しといこうか!」
リリィが止める暇もなく、セレフィナはすでにダンジョンへ向かう足を早めていた。彼女の背中には、未知の冒険への期待と、ダンジョン攻略への意欲が溢れている。
* * *
ヴァレリアに到着した翌日、セレフィナとリリィは街中を歩き、ダンジョンについての情報を集めていた。商人の活気、冒険者たちの会話、遠くから聞こえる武具の音…初めて訪れるダンジョン都市の雰囲気に、セレフィナの好奇心はますます膨れ上がっていた。
ふと、ダンジョンの出入り口付近で、冒険者たちの間から一際目を引く話題が聞こえてきた。
「なあ、知ってるか?最近発見された未踏破のダンジョンのことを…」
セレフィナの耳がその一言を捉え、興味が引かれた。「未踏破のダンジョン…?」
リリィも気になり、二人で近づいて話に耳を傾けた。冒険者の一人が興奮した様子で仲間に語っている。
「そうだ、未踏破ダンジョン! どうやら先日、新しいダンジョンが見つかったらしい。何でも、これまでのダンジョンとは全く違う構造で、最深部に辿り着いた者はいまだに誰もいないとか…しかも、中に潜む魔物の力が凄まじいんだとさ」
「へえ、そいつは腕の見せどころだな! もしそのダンジョンを攻略できたら、一躍有名になるって話だぞ」
それを聞き終えたセレフィナの目が輝いた。リリィは彼女の表情を見て、また好奇心がうずいたのだと気づく。
「セレフィナ様、もしかして…その未踏破ダンジョンに興味をお持ちですか?」
セレフィナは軽く肩をすくめ、にやりと笑みを浮かべた。「ふふ、少々な。未踏破とは、我がこれまで見てきたどの戦場とも異なる未知の地というわけだろう?挑戦する価値があるかもしれん」
「ですが、未踏破ということは、非常に危険で…何が待ち受けているか予測もつきません。それに、誰も最深部に辿り着けていないとなると…」
「だからこそ面白いのだ。危険なほど、我が本来の力を試す場として最適だろう」セレフィナの口調には自信がみなぎり、すでに彼女の視線はその未踏破ダンジョンに向かっていた。
リリィは少し心配しながらも、セレフィナの決意を尊重することにした。「…分かりました。それなら、未踏破ダンジョンへの挑戦のための準備を整えましょう」
「うむ、リリィ、頼むぞ」
こうして、セレフィナは未踏破ダンジョンの情報を集め、いよいよ新たな試練の地へと向かう準備を始めるのだった。彼女の心には、未だ誰も成し得なかった冒険が待っているかもしれないという期待と興奮が満ち溢れていた。
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