第23話
「よくやったわね!」
「えっ?」
ストーカーを撃退した俺たちの元へ、美咲先輩が姿を見せる。
「つけてきてたんですか?!」
「堅いことは言わないの。ほら、せっかくストーカーを撃退したんでしょ。お祝いにいきましょう。今日は智くんの奢りよ」
「なんでですか?!」
「智先輩ご馳走様です!」
「智君、ありがとう」
僕は三人の美女に囲まれて夜景が輝くホテルのレストランに、美咲先輩、由香、未来、そして僕の四人が集まった。
窓からは、夜空に映える街の灯りが一望できて、まるで宝石箱のような光景が広がっている。
照明もほどよく落ち着いていて、非日常感たっぷりのラグジュアリーな空間だ。
こんな場所で飲むなんて滅多にないことだけど、今日はとことん楽しもうと決めていた。
「さぁ、乾杯しましょう! 皆で無事に一件落着したことを祝って!」
美咲先輩がグラスを掲げ、にっこりと笑みを浮かべた。彼女の美しさがさらに際立ち、いつも以上に輝いて見える。
「乾杯!」
僕たちはそれぞれグラスを手に取り、軽やかな音を響かせて乾杯した。グラスの中のシャンパンが美しい色を放ち、わずかに酸味のある香りが漂ってくる。
「智君もお疲れ様。由香ちゃんも少しは落ち着けたかな?」
美咲先輩が由香に優しく尋ねる。
「はい! 美咲先輩のおかげです。本当にありがとうございました。智君もここまで付き合ってくれて感謝してるよ」
元気に微笑む由香の顔を見るだけで偽彼氏を演じたことに意味はあったと思える。
僕は、緊張から解放された彼女の笑顔が、心から嬉しそうで、それを見ると少し安心した。
未来さんが勢いよくシャンパンを飲み干しながら、にっこりと笑う。
「由香先輩、本当によかったですね! 私も一緒に見守ってたんですけど、やっぱり智先輩は頼もしいです! 惚れ直しちゃいます!」
僕は照れ隠しにシャンパンを一気に飲み干した。
未来さんの期待を込めたような視線に、少し恥ずかしくなりながら返事をする。
「いや、まぁ、皆がいたからなんとかうまくいったんだよ。僕一人じゃどうにもできなかったさ」
「智君がそんな風に言うなんて、珍しいわね!」
美咲先輩がからかうように笑いながら、僕にウインクを送ってきた。
少しずつ酔いが回ってきたのか、美咲先輩もなんだかいつもよりリラックスして見える。こうして和やかな雰囲気で食事をするのも悪くないな。
「それじゃあ、料理もどんどん頼んじゃいましょう! こんな高そうなお店なかなか来れませんからね」
「そうね。智君がお金持ちで感謝ね」
未来さんがウキウキとした様子でメニューを見つめている。シャンパンの酔いも手伝ってか、彼女の表情はさらに明るくなり、まるで少女のような純粋な目をしている。
美咲先輩や由香もそれに合わせて笑う。
「いいわね、せっかくの夜景だし、今日は思いっきり楽しもう!」
「もう好きにしてくれ! どんとこい!」
僕たちは次々と料理を注文し、まるで祝祭のようなディナーが始まった。
テーブルには次々と美味しそうな料理が並べられ、その香りと見た目だけで幸せな気分にさせてくれる。彩り豊かな前菜から、香ばしい焼きたての肉料理、そしてシーフードがたっぷり使われたサラダなど、目の前には絶品料理が並んでいる。
「いや〜、これは最高だわ!」
美咲先輩がフォークを持ちながら、至福の表情で一口食べる。先輩が満足そうに食べている姿を見ていると、なんだか僕も幸せな気分になった。
「智君も食べてみて! このお肉、柔らかくて本当に美味しいよ!」
由香が僕に料理をすすめてくれる。彼女の表情が心から嬉しそうで、今日の彼女の不安が嘘のように感じられる。
彼女が食べたフォークを差し出されて、間接キスに僕も恥ずかしいと感じながら、一口食べる。
口の中でお肉がほろほろと溶け、絶妙な味わいが広がった。
未来さんがさらに勢いを増して、ワインを頼んで、おかわりしようと店員を呼ぶ。
「みんなで飲みましょう!こんな素敵な夜に、控えるなんてもったいないです!」
ワインを次々に注がれると、僕たちもすっかり酔いが回ってきたようで、話題も盛り上がりを見せた。普段は静かな美咲先輩も、今日は少し口数が多い。
「ねぇ智君、由香ちゃんとのデートってどうだった? もしやロマンチックな展開があったりして?」
美咲先輩が興味津々の目で尋ねてくる。彼女の表情がからかい半分で、僕は返答に困ってしまう。
「そ、そんなわけないですよ! ただの友人としての付き添いですってば」
僕が慌てて否定すると、未来もニヤニヤしている。
「智先輩、本当は由香さんのこと気になってるんじゃないですか〜? 由香先輩ってミス帝都に選ばれるぐらい美人なんですよ〜羨ましいです」
茶化しているのか、羨ましがっているのかわからないが、未来さんが由香にも絡み出した。
「未来ちゃん、やめてってば! 私たち、本当に幼馴染なだけなの! まだ……」
由香が少し赤くなりながら未来さんに言い返すが、口元には楽しげな笑みが浮かべている。からかわれつつも、皆で笑い合えるこの雰囲気が心地よい。
美咲先輩がワインのグラスを揺らしながら、少し遠い目をして夜景を見つめていた。
「こうして皆で飲むのも悪くないわね。普段は何かと忙しいけれど、今日は特別な夜って感じがする」
「そうですね。普段はこうして集まる機会も少ないですし、今日のことは一生忘れられない思い出になりそうです」
僕も同意すると、美咲先輩が微笑みながら頷いてくれた。
その後も話題は尽きることなく、笑いが絶えないひと時が続いた。
未来さんが時折、ふざけた調子でアニメソングを歌い出し、僕たちはそれを聞いてまた大笑い。由香も楽しそうに未来さんに突っ込みを入れたりして、まるで親しい友人同士のように、心地よい時間が流れていった。
「さぁ、次の乾杯は、ストーカー撃退に!」
美咲先輩がグラスを掲げ、全員が一斉にグラスを持ち上げる。
「ストーカー撃退に! そして、私たちの友情に!」
由香が満面の笑みで声を合わせ、皆でグラスを合わせる音が夜景の見える窓に響いた。
未来さんがさらに元気よく続く。
「これからもずっと仲良くしましょうね!」
四人でまた大笑い。
レストランの雰囲気も相まって、まるで映画のワンシーンのような華やかな夜となった。高級料理とワイン、笑い声と共に過ごしたこの時間は、僕たちにとって忘れられない思い出となった。
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