第2話 鑑定結果
ボクとエリンは、母のエドナさんの所に戻った後、教会の鑑定師に調べてもらう番が来た。
村長であり、父のカルヴィンさんも一緒に、ボクとエリンを期待の目を向けている。
教会の調査員男性は、眼鏡をクイッと上げながら、ボクとエリンに声を掛ける。
「最後はね、村長さん達の子のエリンちゃんとクロノ君だね」
「わたし、エリンで合ってます!」
「はい、ボクはクロノです。先ほどから君呼びが気になるんですが…」
「ん?クロノ君は男の子ではないのかね?」
「はい、そうですけど」
「これはこれは、失礼したね。クロノちゃん」
「いえ、ボクの見た目が、ボーイッシュですから」
調査員の男性は、軽くボクに謝った後、話が進んだ。
「先にどちらから行くかね?」
ボクとエリンは顔を合わせる。
「エリンからでいいよ。ボクは鑑定結果にこだわってないから」
「うん!私からやる!」
「決まったようだね。エリンちゃん、この机にある水晶を手を当ててくれるかね?」
「はい!手を付けます!」
エリンが水晶に手を当てた瞬間、光始めた。
教会関係者と騎士団の方々は騒めくが、調査員の男性は冷静に分析していた。
「エリンちゃん。手を放していいね」
「はい!手を離しました!」
気になったカルヴィンさんは、心配そうに調査員の男性に聞いた。
「鑑定結果はどうだったんですか?エリンはどんな素質をお持ちで?」
「結果だがね、光の聖女の素質があるね。これは教会の保護対象だね。村長には申し訳ないけどね、連れて行く事になるね」
「そんなぁ…」
「まだエリンは5歳なのよ!」
「パパとママとお姉ちゃんとおわかれ…?」
「本当に申し訳なく思うね。だがね、これは教会の決まりなのだね」
「いやぁだぁ‥‥ふぇええええん」
カルヴィンさんとエドナさんは、泣くエリンを抱き締める。
ボクは、カルヴィンさんとエドナさんを安心させるように耳打ちする。
「もしかすると、ボクも同じ結果になるかもしれない。その時は、ボクがエリンを守るよ」
「希望観測に過ぎないが、クロノに頼むしかないか…」
「そうね。一緒に行ってくれる方が安心だわ」
「話は終わったかね」
「はい、ボクの鑑定はまだでしょうか?」
「そうだったね。最後だと思っていたね。クロノちゃん失礼したね」
「大丈夫です。ボクの鑑定お願いします!」
「では、この水晶に手を当ててくれるかね?」
「はい!」
ボクは水晶に触れる。
(何でもいい、良い素質結果を‼)
心の中でそう呟く。
『ならば、お主に時間を司るスキルを与えよう』
此処にいない誰かの声が、ボクの頭に響く。
次の瞬間、エリンよりも大きな光が当たりを照らした。
「マズイ!クロノちゃん手を離したまえ!」
「は…はい‼」
「危なかったね。クロノちゃんの手が数秒遅れていたらね、ここら一帯が爆発していたね。爆発しなくて良かったね。…水晶はこの通りヒビが入ってしまったね」
「すみませんでした…ちなみに結果は…?」
「そうだね、言わないとね。クロノちゃんの素質はね…時間だね!」
「…時間?」
ボクは首を傾げた。
そんな素質、聞いたこともないし見たこともない。
「村長の姉妹は凄い事だね。これは二人とも連れて行ってしまう事になるね。私の力が及ばず申し訳ないね」
「ボクも連れて行ってくれるって事ですよね?」
「そういう事になるね、さて戻る準備するお願いするね!」
調査員の方々は騎士団と混ざって道具を片付け始めた。
ボクはエリンを一人させずに済み、ひと安心する。
エリンはそれを理解して泣き止み、ボクに話しかけてきた。
「お姉ちゃんといっしょ?」
「そうだよ!」
「やったぁ!」
後ろから、カルヴィンさんとエドナさんがボクとエリンに肩を掴んで、しゃがみ込む。
「クロノ、エリンの姉として宜しく頼む!」
「うん!ボクに任せて!」
「エリン、お姉ちゃんと立派に成長するんだぞ!」
「うん!」
「よし、2人とも頑張ってこい!」
「はいっ!」「あいっ!」
ボクとエリンは、母さんの方に向く。
目に涙を浮かべながら我慢をしていた。
「母さん?」「ママ?」
「クロノも私の子だと思ってるわ。だから…クロノとエリンが教会から村に戻れる時が来たら、一度は一緒に帰って着なさい!いいわね?」
「はいっ!」「あいっ!」
母さんがボクとエリンと一緒に少しだけ抱き締めて離した。
教会の調査員は、荷物をまとめている。
鑑定してくれた男性がボクとエリンに声を掛けてくる。
「両親との別れの挨拶は済んだかね?」
「はい。終わりました」
「おわりました」
「この子たちを宜しくお願い致します」
「お願い致します…うぅうぅ」
母さんは堪えていた涙を流してしまった。
両親との離れる光景を何度か見てきたのか分からない調査員の男性は、父と母に申し上げる。
「改めてね、ネンネン司教と申しますね。クロノちゃんとエリンちゃんは、責任もって立派に成長させますね」
「ありがとうございます…!」
父さんは言葉を振り絞るように、ネンネン司教に感謝を伝えた。
母さんは感謝の意を伝えるように頭を下げる。
「クロノちゃんとエリンちゃんね、あの馬車に乗ってね」
ネンネン司教の指さす方向は、豪華そうな教会マークの付いた馬車だった。
その前には、メイドさんの姿をした女性が突っ立っている。
ボクとエリンは手を繋いで馬車の前に近寄る。
「選ばれた者ですね。名前を伺っていいですか?」
「ボクは、クロノです」
「エリンです!」
「クロノ様とエリン様ですね。本日からお世話係を務めさせていただきます、メラニアと申します。お願い致します」
「メラニアさん宜しくお願いします!」
「おねがいします!」
「では、此方の馬車にお乗りください!慣れないうちは酔いますので、後部座席にお願いします」
「はい、助かります。エリン、お姉ちゃんが支えるから先に乗って!」
「うん!」
座るとクッションの敷き詰めて作られた椅子だった。
後頭部の窓を覗くと、父と母の姿が見える。
「エリン!母さんと父さんが手を振ってるよ!」
「手をふる!」
父さんと母さんは、ボクとエリンが乗る馬車に向けてずっと手を振り続けていた。
姿が見えなくなった後、ボクはエリンを抱き締めながらお互いワンワン泣いていつの間にか眠りに落ちてしまったという。
◇
「クロノ様、エリン様。そろそろ起きてください!到着しますよ」
ボクとエリンは、メラニアさんに体を揺さぶり、起こされる。
「うぅん…ここは…」
「メラニアお姉ちゃん…ここどこぉ…」
「ここはですね。首都ビーリャで御座います」
外は日が暮れる直前だ。
街並みを見ると、綺麗な白色のレンガで建てられた2階建ての家がずらりと並ぶ。
たまに赤レンガの家も含まれていたが、馬車で進む道は、揺れも少なく整備された滑らかな道路だった。
街並みを見てもボクとエリンは何とも思わず、エリンは変わる環境を我慢している様子だ。
メラニアさんは真剣な顔をしながら、口を開く。
「貴族専用の宿泊施設に泊まります。馬車を降りたら、私に離れずについて来てくださいね。治安は良い方ですが、誘拐されて連れ去られる危険もありますので、お気を付けください」
「わかりました!」
「クロノお姉ちゃんとメラニアお姉ちゃんといっしょにいる!」
少しすると馬車が停まり、外から「到着致しました‼」という護衛の騎士団の声が響き、馬車の扉が開く。
「クロノ様、エリン様!降りましょう」
「はい!」「あい!」
馬車を降りると、ネンネン司教が立っており、ボクとエリンに声を掛ける。
「長旅ご苦労ですね。今日から数日間、手続きが終わるまで、クロノちゃんとエリンちゃんの滞在する施設になりますね。その後は、決められた場所で過ごしてもらいますね」
「わかりました」
「はい…」
元気がなさそうなエリンを心配しながら、ボクとエリンは、メラニアさんに泊る部屋に案内されていくのだった。
その数日後、ボクとエリンは別々に過ごす事になるとは知らず…
◇
4話目以降物語が大きく動く予定です。
執筆がんばりますので、応援宜しくお願いします。
クロノロード クロノヨロイ @TeaArce527
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