依存

「はぁ……」

「あれ、檸檬どうかしたの?」


私が教室でため息をついていると里奈が心配そうに話しかけてきた。


「私……好きな人出来たかもしれない」


―――私はあの一件をキッカケに、らすニャさんの配信に入り浸る事が増えた。それは野原行動だけではなく顔出し配信も含めて。

話は面白くて顔もカッコイイらすニャさんに惚れるのにそう時間は必要としなかった。

それに、配信外でもらすニャさんと2人きりで潜る事もあって、もしかして自分はらすニャさんにとって特別な存在なんじゃ……なんてことを考えてしまう。そんなわけないのに。


「え!檸檬好きな人が……おめでとぉー」

「いや、好きな人出来ただけなんだけど……」

「んーん!檸檬は可愛いからきっと大丈夫だよ!」

「そ、そうかな?」

「うん!うん!ちなみにどんな人なのー?」

「えっとね……PickUpで会った人なんだけど……」

「あーカッコイイ人多いもんね」

「ちなみに里奈は彼氏とかって……」


彼氏の話題になって思い出したが以前配信で一緒に居たのは彼氏なのだろうか?


「私?いるよ。言ってなかったっけ?」

「うーん聞いてない」


それから話を聞いてみると、案の定ライブ配信で一緒に男子こそが里奈の彼氏だったらしい。

だけど、今の私は嫉妬しない。だってらすニャさんがいるから。






「俺さぁ檸檬ちゃんのこと好きかも」


―――それは、突然だった。いつものように配信に行って、その後に2人で野原行動をやった後のこと。これで会話が終わり、そんな状況でらすニャさんが口にした事だった。


「私もらすニャさんの事が好きです!」

「え、まじ?」

「はい!」

「じゃ、付き合お」


初めてされた告白は思っていた以上にあっさりとしたもの。でも、私はらすニャさんの事が好きだから嬉しい。


「ちなみに檸檬ちゃんってLINEとか交換できる?」

「LINE……ですか?」

「うん、付き合ってるんだから交換しといた方が良くない?」


いいのかな?だって付き合ったとはいえネットで知り合った人と交換なんて。

でも、らすニャさんは怪しい人じゃないからいいよね?


「はい、大丈夫です」

「そっか良かったぁー」



「あの、らすニャさん」

「ん?」

「私たちって付き合ってるですよね?」

「うん、そうだよ」

「私らすニャさんを本名で呼びたいなーなんて……」

「え、それはちょっとなぁ本名を伝えるような関係かな?」


え、違うの?だって付き合ってるのに本名すら教えて貰えないっておかしくない?

でも、これが普通なのかな……だってネットを通しての恋人なんだから。


「てか檸檬ちゃんの顔とか見てみたいなー」

「え、顔……?」

「いやーだって檸檬ちゃんの顔とか絶対可愛いじゃん!見てみたいなぁー」

「……それは少し……」


多分、顔を見られたら今の関係は終わる。いや、絶対に終わる。だってこの人が知ってるのは、好きなのは檸檬であって、宮内檸檬という人間じゃないから。


「そっかぁ……そうだよねぇ。じゃあさ!体の1部だけでいいから!どう?」

「体の一部ですか?」

「そう!足とかさ」

「まぁ……それくらいなら」


これでらすニャさんが喜ぶなら、そう思って足の写真を送る。太い足をみてなんて言われるかな。


「わ!めっちゃいいね!やっぱ檸檬ちゃん可愛いと思うなぁ」

「……そんな事ないですよ」

「いやいや!可愛い子ほどそう言うの!」


ちがう、可愛くない。これで本当に可愛かったら良かったのに……



それから、らすニャさんの要求は日に日に過激な内容になっていった。

例えば、それは胸の写真だったり私の×××をする時の録音。

例えばそれは、らすニャさんと通話での×××をしたいという要求。裸そのものを要求する時もあって―――

だけど、断れない。断ることで嫌われたくないから。






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