④ 怒りの斬撃へのカウンター (4r~6r)

【訳文】


――〘怒りの斬撃 - 突〙はきみをも裁く

――対処の一撃:沈めた切っ先で胸を〘刺突※1する


 ここで師範は、〘怒りの斬撃 - 突〙を打ち破る方法を教示している。もし敵がきみに対して〘怒りの斬撃 - 突〙を繰り出してきたなら、彼の手首の内側を打て。もし敵がきみの顔面を突こうとするなら、腕をまっすぐ伸ばしてメッサーを低く沈め、切っ先で彼の胸を刺突せよ。この時、(切っ先で)彼を押しながら、自分の左足を大きく引く。


【解説】


〘怒りの斬撃 - 突〙への対応法が記されています、が……これはちょっと文字での解説が難しいので、再現団体の動画を観てください。


 ……と完全にマルナゲするのもなんなので、動画の理解が深まりそうなヒントを出しておきましょうか。


 ①で出てきた〘強い部位〙と〘弱い部位〙を思い出してください。相手の切っ先=〘弱い部位〙は、こちらの刃の根本付近=〘強い部位〙で簡単に制御することが出来ます。ゆえに「相手の切っ先を制御しながら、自分の切っ先を相手にねじ込む」といったことが可能になります。もちろん上手にやれば、ですが。


 このまま次の訳文も見ていきましょう。こちらも〘怒りの斬撃〙への返し技です。



【訳文】


 ――〘怒りの斬撃〙から右下方へ追い立てる術を学べ

 ――〘裏刃※2打ち、あるいは〘ついばむ刃※3


 敵が〘怒りの斬撃〙を放ってきたなら、きみは切っ先を下に向け、彼との間にメッサーを高く掲げ、メッサーと共に前進せよ。そして〘同時〙に手首を返し、裏刃で敵の顔面を打つか、斬り裂け。



【解説】


 切っ先を下にした状態で〘怒りの斬撃〙を受け止めつつ、そこから手首を返して〘裏刃〙で相手の顔面を打つという返し技です。


 すっかり解説を忘れておりましたが、メッサーは片刃直剣ではありますが、切っ先付近にちょろっとだけ〘裏刃〙が存在します。使用頻度はかなり高いです。お通し感覚で裏刃斬りが飛んできます(ドイツ剣術はみんなそうですが)。


「西洋剣が両刃なのは、片方の刃がナマクラになったらひっくり返して使うためだ」みたいなことを論じる人もいますが、本稿を読んだ人は違う意見を持つのではないでしょうか? 「裏刃で斬る技があるから裏刃があるんじゃない?」と。


 ともあれ、この箇所のように「メッサーを高く掲げた状態」から裏刃で斬り下ろした状態を想像してみてください。……クチバシの長い鳥がエサを啄む様子に見えませんか? これを以てこの技は〘ついばむ刃〙と命名されているのでしょう。たぶん。


 ところで最初の詩文は『右下方へ追い立てる』と訳しましたが、英語圏の方々は「deliver low to the right」と訳しているようです。


 僕は「この技が決まったら相手は(彼から見て)左顔面を斬られて、右下方に倒れるのでは?」と思ってこう訳しましたが、どうでしょう。



 さて、ここからは当面延々と〘怒りの斬撃〙から派生するコンボとその対応法が記されているのですが、すっ飛ばそうと思います。


「〘怒りの斬撃〙コンボ! 相手がこう対応したらこう! さらに対応されたらこう!」みたいな話が続くんですよ。流石にダレるのでこれは飛ばし、2つだけ〘怒りの斬撃〙以外の技を紹介して、締めに入ろうと思います。特定の構えを崩す技と、格闘技です。



【注釈解説】


※1 刺突: Stichシュティッヒ //英語だとStitch, Thrust


※2 裏刃: Kurzクルツ schneideシュナイデ //原文だとKurtz schneidなどと表記。直訳すれば「短い刃」。ロングソードは表裏で刃の長さが同じですが、メッサーの裏刃は本当に「短い」。


※3 啄む刃: Maulマオル schneidenシュナイデン //直訳すると「クチバシ刃」となりますが、「啄む刃」のほうが……なんかこう、厨二病心に刺さらない……?


\チュンチュン/



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