第10話 覚醒の時
凛は調査室で、教団の古文書に書かれた「覚醒の儀式」について再び読み返していた。儀式には「供物」が必要とされ、その供物を通じて教団の教祖は人々の欲望や恐れを操り、支配の力を得ようとしている。彼女は教団の野望を阻止するためには、すぐに行動するしかないと考えていた。
猫は静かに彼女を見つめ、「今夜が最後の戦いになるだろう。教団の本拠地で行われる儀式を止められるのは、君しかいない」と告げた。彼女は頷き、決戦に備えるために心身を整え、最後の覚悟を固めた。
夜が訪れると、凛は猫に導かれながら、教団の本拠地へと向かった。廃病院の地下室にある隠された部屋が、儀式の舞台となる場所だと聞いていた。彼女が廃病院に到着すると、地下への通路は既に開かれており、奥からかすかな光が漏れ出していた。
階段を降り、彼女が儀式の部屋に足を踏み入れると、そこには黒服の信者たちが一列に並び、静寂の中で彼女の到着を待っていたかのようだった。そして、部屋の中央には教祖が立っており、祭壇の上にかつて彼女が見た「覚醒のかつめし」が置かれていた。
教祖は凛を見つめ、低く響く声で話し始めた。「やはり、君がここまで来たか。君こそ、我々が長らく待ち望んでいた供物だ。君の強い意志と力こそが、真の覚醒を引き起こす鍵となる」
凛は拳を握りしめ、「あなたの儀式を止め、この町を守るために来たわ。私はあなたたちの道具にはならない」と言い放った。
教祖は冷ややかな笑みを浮かべ、手をかざすと信者たちが一斉に凛へ向かって襲いかかってきた。凛はカンフーの構えを取り、信者たちの攻撃をかわしながら次々に倒していく。狭い地下室での戦闘は激しさを増し、彼女の動きはまるで嵐のように鋭く、次々と襲いかかる信者たちを倒していった。
やがて、全員を倒し終えた凛は、再び教祖に向き直った。教祖は動じることなく彼女を見据え、「見事だ。しかし、君が真実の力を見たいならば、私に逆らうことなど不可能だ」と言い、かつめしを手に取った。
「このかつめしを供物として食せば、私は究極の覚醒を得る。それが我が教団の最終目的だ」
教祖はそう言うと、かつめしを口に運び始めた。しかし、その瞬間、部屋全体が異様な気配に包まれた。教祖の表情が変わり、苦痛と狂気が交錯する中、彼の体が震え始める。欲望や恐怖が一気に解放され、彼はかつめしの力に飲み込まれていったのだ。
「やめて…その力は危険なのよ!」凛は叫んだが、教祖はもはや聞く耳を持たず、狂ったように笑い声を上げながらかつめしの力に支配されていく。
突然、教祖の体から異様な光が溢れ出し、彼の姿が次第に異形のものに変わっていった。彼の体は膨張し、信者たちの恐怖や欲望が具現化したかのように巨大な怪物のような存在へと変貌を遂げた。かつて人間だった教祖が、もはや人知を超えた存在へと変わってしまったのだ。
凛は教祖が完全に力に飲み込まれたことを理解し、戦う覚悟を固めた。この怪物を倒さなければ、教団の目的が果たされ、町が危険に晒されることになる。彼女はカンフーの構えを取り、怪物となった教祖に立ち向かう。
怪物は凛に向かって巨大な腕を振り下ろし、彼女はそれを素早くかわし、逆に弱点を狙って打撃を繰り出した。しかし、その怪物は驚異的な耐久力を持ち、凛の攻撃をものともせずに襲いかかってくる。息を切らしながらも、彼女は次々に攻撃をかわし、怪物の隙を突いて攻撃を続けた。
やがて、凛は怪物の動きにわずかな隙を見つけた。怪物の胸元に、かつて教祖が持っていたシンボルがかすかに光っているのを見つけ、その部分が弱点であることに気づいた。彼女は全力でその場所に飛び込み、渾身の一撃を放った。
渾身の一撃が胸元に命中すると、怪物は激しく叫び声を上げ、全身が崩れ始めた。異様な光が消え、怪物の姿は次第に消えていった。そして、教祖だった者の残骸が床に落ち、廃病院の地下室には再び静寂が訪れた。
凛は息を整え、すべてが終わったことを感じ取った。彼女の戦いは町を守るためのものであり、教団の野望を打ち砕いたのだ。遠くから白い猫が静かに彼女を見つめており、その目には感謝と誇りが宿っているようだった。
「君は見事に教団を倒し、この町を救った。だが、幻のかつめし店の存在は、いずれまた語り継がれることだろう。そのとき、真実を知る者として君が必要になる」
猫はそう言い残し、凛の前から姿を消した。
凛は教団の脅威が去ったことを確認し、調査室へと帰路についた。廃病院を後にした彼女は、静かな夜の加古川の街並みを眺めながら、守り抜いた町の未来に思いを馳せた。
「私はまた、この町を守り続けるわ。どんな危険が訪れようとも…」
こうして凛の壮絶な戦いは幕を閉じたが、幻のかつめし店とそれに関わる謎は、今もなお、静かに加古川のどこかに眠っているのだった。
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