第5話 教団の本拠地へ

手帳に記されていた恐るべき事実を知った凛は、幻のかつめし店がただの料理店ではなく、人の深層にある欲望や恐怖を引き出す禁忌の場所であることを理解した。教団がその店に執着する理由がますます不気味に思えたが、それを知るためには更なる調査が必要だった。


その日の夜、凛は調査室に戻ると、教団の本拠地について調べ始めた。情報は極めて少なく、その所在地はほとんどの人に知られていないらしい。しかし、手帳の最後のページにかすれた地図が描かれているのを見つけた。そこには、「加古川の北にある古い神社を抜けた先」という手がかりが記されている。


翌朝、凛は準備を整え、その古い神社へ向かう決意を固めた。神社に到着すると、薄暗い森の中で静寂が支配し、不気味な雰囲気が漂っている。境内に足を踏み入れると、何かがこちらを監視しているような感覚に包まれ、鳥肌が立った。


彼女が社の裏手に回り、さらに奥へ進むと、苔むした石階段が現れた。階段を上ると、やがて廃墟のような建物が見えてきた。それは教団の隠れ家であるかのように、周囲からは完全に隠れた場所に存在していた。


凛が建物に近づくと、中から話し声が聞こえてきた。そっと窓越しに覗くと、教団のメンバーらしき黒服の男たちが、何かの計画について話し合っているようだ。彼女は息を潜め、その会話に耳を傾けた。


「幻のかつめし店がもうすぐ見つかる。高橋が手に入れた情報もかなり役立ったが、あの若い探偵…凛という少女が邪魔だ。奴が調査を続ければ、教団の計画が危険に晒される」


「彼女はすでに試練を乗り越えた。だが、これ以上深入りされると困る。あの店の力を利用して、我々の目的を成し遂げるために、彼女を排除する方法を考えるべきだ」


凛はその言葉に息を飲んだ。教団は彼女の存在を既に把握しており、彼女がさらに謎に近づくことを阻止しようとしている。それだけではなく、彼らの目的が「幻のかつめし店の力を利用すること」だと知り、危機感を覚えた。


彼女は慎重に建物の陰から抜け出し、調査室へと急いで戻ることにした。しかし、去り際に何かの気配を感じた。振り返ると、遠くの森の中から、例の白い猫がこちらを見つめていた。その目はどこか警告するかのように鋭く光っている。


調査室に戻った凛は、猫が自分に伝えようとしていることが何なのか考え込んでいた。そしてふと、手帳に記されていた一節が頭をよぎる。


「この店を手に入れようとする者は、代償を払うことを覚悟しなければならない。」


教団が幻のかつめし店の力を利用することで何を得ようとしているのか、そしてそれがどれほどの危険を伴うのか、まだすべては明らかになっていない。しかし、凛はこの謎を解き明かし、教団の企みを阻止しなければならないという使命感を強く抱いた。


その夜、凛は再びカンフーの訓練に励み、次に待ち受ける戦いへの覚悟を新たにした。彼女の心は決して揺らがず、闇に潜む真実へと近づいていく準備が整いつつあった。

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