第3話 試練の幕開け
翌朝、凛のスマホに再びメッセージが届いた。「今夜、山沿いの廃工場に来い。そこで、君の覚悟を見せてもらおう」とだけ書かれていた。送り主は記載されていないが、これが教団からの「試練」の招待であることは明白だった。
凛は少しの不安を抱えながらも、覚悟を決めて廃工場に向かう準備を始めた。彼女は普段のトレーニングで鍛え上げたカンフーの動きと集中力を最大限に発揮できるよう、心身を整える。そして、夜が更けたころ、一人で指定された場所へ向かった。
廃工場はすでに長い年月を経て朽ち果てた建物で、そこかしこにひび割れた壁や錆びついた機械が残されていた。暗闇の中、微かな足音や風の音が不気味な静寂をさらに際立たせる。そんな中、凛は何者かの視線を感じ取り、警戒しながら進んでいった。
突然、彼女の目の前に黒服の男たちが現れた。先日、公園で出会った教団の男たちと同じような姿で、目には冷たく無表情な光が宿っている。
「お前がこの試練に挑む者か?」
一人の男が凛に声をかける。その声には威圧的な響きがあったが、凛は少しも怯まず、毅然とした目で相手を見返した。
「そうよ。幻のかつめし店の真実を知るためなら、どんな試練も乗り越える覚悟がある」
男は冷笑を浮かべ、「それならば、証明してもらおう」とだけ言い、手を叩いた。その合図とともに、数人の男たちが凛の周りを取り囲んだ。彼らの目つきと立ち位置から、明らかに戦闘を挑んでくる様子だった。
「これが…試練なのね」
凛は深く息を吸い込み、カンフーの構えを取った。廃工場の静寂が、彼女の戦いを迎えるために張り詰めた空気へと変わっていく。
最初の男が飛びかかってきた。凛はすかさず体を捻り、その攻撃をかわすと、素早く肘で相手の胸に一撃を入れる。男は苦しそうに呻きながらも、再び立ち上がり、ほかの男たちも次々と彼女に向かって襲いかかってきた。
一人ひとりの動きは荒っぽいが、数の力で押し切ろうとする戦法だ。しかし、凛は集中力を高め、冷静に敵の動きを見極めながら、的確な動きで彼らをかわし、反撃していく。その身軽でしなやかなカンフーの技は、廃工場の薄暗がりの中でまるで舞うように繰り出され、次々と敵を倒していった。
凛が最後の男を倒したとき、廃工場の中には静寂が戻った。息を整え、彼女が立ち上がると、奥の闇から先日の黒服の男が再び現れた。
「なかなかやるな。これで、お前の覚悟と力は認めよう。だが、これはほんの序章に過ぎない」
男は冷たい目で凛を見据え、低く言った。「我々が守る『真実』は、簡単に手に入れられるものではない。次の試練が待っていることを覚えておけ」
そう言い残し、男は廃工場の奥に消えていった。その言葉が意味するものが何であれ、凛には後戻りするつもりはなかった。
その夜、調査室に戻った凛は、再び現れた白い猫に問いかけた。
「教団の試練は、ただの脅しではないみたいね。彼らは本気で幻のかつめし店の秘密を守ろうとしている」
猫は静かに凛を見つめ、「試練はこれからさらに過酷になる。だが、お前には乗り越える力がある」と答えた。
「それを証明してみせるわ。私は、この街の真実を知るために、どんな試練にも挑む」
猫は意味深な笑みを浮かべ、再び姿を消した。
凛はその場に立ち尽くしながら、次に待ち受ける試練を思い、覚悟をさらに強くした。幻のかつめし店に秘められた真実を暴くための道は、これからますます険しくなっていくのだった。
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