第2話 教団との接触

翌朝、凛は調査室の机に広げた地図を睨んでいた。加古川の町中にあるかつめし店の場所を記したもので、ここ数日、彼女が訪れた場所が赤い印で記されている。どの店も普通のかつめし店で、「幻のかつめし店」に関する手がかりは得られなかった。だが、高橋の言っていた「ある場所に行けば手がかりがつかめる」という言葉が頭をよぎる。


そのとき、彼女のスマホに通知が入った。メッセージの送り主は匿名で、「真実を知りたいなら、加古川駅前の公園に来い」とだけ書かれていた。何か罠のような気もしたが、凛は高橋の行方を知るために向かうことを決めた。


加古川駅前の公園に着くと、朝の薄霧の中、数人の黒服の人物が立っているのが見えた。どこか威圧感のある雰囲気で、彼らは周囲を警戒しているようだ。凛が近づくと、黒服の一人が静かに彼女に目を向けた。


「君が…高橋のことを探している凛さんか?」


凛は一瞬、相手の警戒を感じ取ったが、毅然とした態度で答えた。


「ええ、あなた方は誰?」


「我々は『真理の会』と呼ばれる者たちだ。幻のかつめし店について知りたいと願う者に、真実を示している」


「真理の会…?」凛は不審に思いながらも、その名を心の中で繰り返した。これが高橋が話していた教団なのだろうか。


黒服の男は続ける。「高橋氏も我々と接触し、真理を知る道を求めた。しかし、ある事実に近づきすぎたがために、行方不明となってしまったのだ」


「つまり、あなた方が彼に何かをした…ということ?」


男はにやりと笑みを浮かべた。「それは君が判断することだ。我々の教団は、幻のかつめし店を求める者が真の価値を見出すための導きを与えるのみ。もし知りたければ、君もその道を選ぶのだ」


凛の胸に怒りが湧き上がる。高橋が教団の手によって行方不明になったのだと確信する一方、幻のかつめし店がこの教団と深く関わっていることも感じ取った。


「私は真実を知りたい。ただし、あなた方の操り人形になるつもりはないわ」


その言葉に、男は軽くうなずいた。「いいだろう。君の意思が本物なら、我々の試練に立ち向かえるはずだ。近々、試練の案内が届くだろう。それを待つといい」


男が去った後、凛は公園の静寂の中で立ち尽くした。自分が何か大きなものに巻き込まれている感覚が、肌に伝わってくる。それでも、彼女の決意は揺らがなかった。


その夜、調査室に戻った凛は、自分のカンフー技を使った戦闘訓練を始めた。もし教団が危険な相手なら、どんな状況にも備えておく必要がある。そして、ふと窓の外を見ると、昨夜会ったあの白い猫がまた現れていた。


「試練に備えるのか、凛?」


猫はじっと凛を見つめ、再び意味深な問いを投げかける。


「そうよ。私は幻のかつめし店の真実を知るためなら、どんな試練でも受けて立つ」


猫は不敵な笑みを浮かべると、「よかろう。だが、その道は容易ではない」とだけ言い残し、再び姿を消した。


凛は拳を握りしめ、心の中で覚悟を固めた。「どんな試練が待っていても、私は負けない。高橋さんを救い出し、真実を手に入れる」


彼女の戦いは、これから本格的に始まるのだった。

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