第一章 前代未聞、開校以来初の落第生⑤
***
『これくらいの毒、何でもありません』って、
コレットが深いため息をつきながら辺りを見回すと、
ひえぇぇぇぇ!
これはマズい。非常にマズい。面接がどうこう以前に、不敬罪で
ここはもう……
コレットはすくっと立ち上がると、ドアに向かって駆け出した。
先ほどまで固まっていた黒髪の青年が、
「いやあぁぁぁ! 放してぇぇぇ!」
「逃げないでください!」
「あ、あたしには父がいないので、母と四人の弟妹を養わなくちゃいけないんです! お願いですから、逮捕はご
コレットがバタバタ暴れても、青年の手はびくともしない。
「落ち着いてください!
「でも、でも、
「そんなことくらいで逮捕したりしません!」
コレットはしばらくもがいていたが、何度も
「……ほんとですか?」
「本当です」
暴れるのをやめると、コレットの身体はようやく解放された。
落ち着いて考えてみれば、身分を明かしている以上、逃げたところで
ムダに
「……あのう、ところで、あなたは?」
「おっと、申し
そう言って彼は、
「ジル副大隊長? ジル様? ジルさん?」
「女性なら呼び捨てでも構いませんが?」
「さすがにそれはどうかと思いますので、せめて『ジルさん』で」
「ベッドの中ではそんな
「……うん?」
どういうことか聞こうとしたところ、ジルが突然「アイタッ」と
「ジル、いい度胸だな。俺の
ドスの
こ、この人、本当に王子様?
出会ってこの方、
「いきなり
「目を覚ましたら、お前がおかしな自己
「あのですねぇ。私が
死体が歩いてる?
コレットが首を
「死体……。お前、一回死んで生き返ったのか?」
王子に真顔で問われて、コレットは相手が王族であることも忘れて、「はあ?」と
「死んだ人は生き返りません。回復属性
「もちろん知っているが、自分の姿を見ても同じことが言えるのか?」
コレットは自分を見下ろして、「ぎゃあぁぁぁ!」と悲鳴を上げた。
この日のために買った新しいワンピースに、べったり
「あ、あたしの
「問題はそっちか!?」と王子に
「血って、シミ
コレットがキッと顔を上げると、王子はなんだか
「その服は
王子はじろりとジルを
「あ、いえ、そこまでしていただかなくても……洗えば落ちますし、安物ですから。それより面接の方は……?」
コレットが気になるのは、それ以外にない。これで試験をクリアしたことになるのか、それとも血を
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