第一章 推しが我が家にやって来た!①
イヴェット・ルイス。
ルイス侯爵家の一人娘である私は、両親の様子が普通ではないことを感じながらもすくすくと成長していた。母親
私が前世の
(ジョシュア、ですって? ……待って。この
前世で
前世の記憶だとしてもジョシュア様の姿は
(
正確には推しの幼少期を前にしているわけだが、興奮のあまり思考が
(待って……このままだと私、死んじゃう!?)
攻略対象者の中からジョシュア様を選び、そのルートをやり込んだからこそ彼に関するエピソードなら全て知っている。
ジョシュア様は不幸体質という設定があり、彼の生い立ちは
最初に引き取られて一家心中を起こす家というのが、このルイス
シナリオ通りに事が進めば、ジョシュアが養子として我が家に来てから間もなく私は死ぬことになる。
(二回目の人生なのに、もう死んじゃうの?)
転生したという自覚が芽生えたからこそ、幼いうちに死んでしまうという
(そんなの
ぎゅっと手に力を入れた瞬間、お父様に名前を呼ばれた。
「イヴェット、
「……はい、大丈夫です」
お父様の声で思考が止まった。
「そういうわけで、ジョシュアは今日からイヴェットの義弟になる」
これは自分が名乗る番だと判断すると、ジョシュアに少し近付いて彼の目を見た。一歳年下ということもあってか、ジョシュアは私より少し背が低かった。
「初めまして。イヴェット・ルイスです。これからよろしくね」
「……ジョシュアです」
(もしかしてまだ
何か緊張を解く話題を提供したいと考えたその時、窓から風が
彼のオッドアイはゲームでも数度しか出てこない。基本的に前髪で片方隠されていて、空よりも明るく
隠されていた瞳は星々のように
「
「えっ」
私が
(きっとこの家に来て、まだ慣れてないのよね)
そう判断すると、私は自分から積極的に話しかけることにした。
「お話ししましょう、ジョシュア! お父様、よろしいでしょうか?」
「もちろん」
「えっ、あの」
好きな食べ物という簡単な話題から、ルイス侯爵家とはどんな家か、両親はどんな人かという家にまつわることまで様々な話題を提供した。とはいえ、ジョシュアは
私は自室に
「……私が死ぬのは一年後のはず」
ジョシュア様ルートをやり込んだ時に出てきたサイドストーリーで、〝九歳の時に引き取られた家では、翌年夫人が
(一家心中でジョシュア様以外
どうにか落ち着いて情報を整理した結果、やはり死が近付いてきていることがわかった。
「あと一年で死ぬだなんて絶対嫌」
私は前世、交通事故に遭って死んでしまった。
ブラック
(前世は推し活
せっかくジョシュア様という推しが義弟になって、人生これからだというのに、あっさりと退場するのはお断りだ。必ず生き残って、推しのいる生活を楽しみたい。
確固たる意志を抱きながら、私はどうするべきか頭を
「でも逆に考えれば、死ぬまであと一年はあるということよね」
希望が見えてくると、私は強く決意した。
「死なないためにも、どうにかお母様の心中を
目的を声に出した瞬間、ふと疑問を抱いた。
「……それにしても、どうしてお母様は一家心中なんてしたのかしら?」
思い返してみれば、私はお母様のことをあまり知らなかった。心中の意図がわからなくては、阻止のしようがない。そう思った私はお母様のことを知ろうと、調査を
お母様の調査をする一方で、
(壁か……あれ? もしかして)
前世の
「ゲームの出会いと同じなのでは!?」
自室に私の声が
(お、大きな声出し過ぎた……!)
キョロキョロと部屋を見回すと、
『宝石に
ジョシュア様は
そんなジョシュア様との出会いイベントは彼の入学式になる──。
***
学園に入学してから二度目の入学式。
式が行われる会場近くを通ると、一人の生徒が木の下に
茶色いブレザーに黒いズボンは、
大丈夫だろうかと心配しながら近付くと、そこにいたのは
「何か用?」
低く響いた声からはどこか
「……
ネクタイの色が自身と違うことに気が付いた彼は、小さく息を吐いた。ゲームウィンドウに表示されたのは、自分が名乗るテキスト。
意図せず自己
「……俺はジョシュア・ウォリックです」
ジョシュア様は不満げな声で名前だけ告げ、こちらを改めて睨んだ。
「用がないなら見ないでください」
あふれ出る
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孤独な推しが義弟になったので、私が幸せにしてみせます。 押して駄目なら推してみろ! 咲宮/角川ビーンズ文庫 @beans
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