プロローグ
「あぁ、どうして今年も来てくださらないの……」
ルイス
「ユーグリット様……なぜなのですか」
ユーグリット、その名前が指す人物は私の父である。
そして、
(……あんなに料理を用意させたんだ)
今日は両親の
二人にとって十二回目の記念日。しかし、お父様がその祝いの席に
元々は公爵
かくいう
「ユーグリット様、
こっそりと部屋に入ると、暗く重たい声が部屋の中に響いた。
「あぁ、ユーグリット様。私を愛してくれない貴方などいりませんわ。それなら──」
(殺してしまいましょう、ですよね? その先は言わせませんよ、お母様!!)
「お待ちくださいお母様!!」
「…………あら、イヴちゃん」
「はい。娘のイヴェットです」
(私を
手に力を入れると、お母様の目をじっと見つめた。
「愛することを
「……もう、無理よ」
はっと
「手紙を送ったり、会いに行ったり……一通りできることは
しかし、お母様の心には全く届かない。
(知ってますとも。重すぎる愛の押し付けをしていたのを、見てきましたからね)
決して言葉には出さず、けれども本人に気が付かれないように、うんうんと
「だからもういいの」
「いいえ! お母様がまだ一度も試していない方法があります!!」
「試していない方法……?」
その復唱は、興味があるような
「はい、押して
「知っているわ。引いてみろ、というのでしょう。それもやったの……だけど
食い気味に否定されてしまった私の意見だが、最後まで言い切っていなかった。
「いいえ。押して駄目なら、
ですわお母様!! ……お母様……様。
私の声はお母様の
ポカンとしているお母様を、私は自信満々の表情で見つめる。
「押して駄目なら押してみろって……? 結局は押すってことよね。それももうやったわよ……?」
「いえ、その押しではありません」
「イヴちゃん……何を言ってるの?」
「私の言う〝おし〟とは、推し活の〝推し〟ですお母様!」
「おしかつのおし?」
私の意図を説明すると、お母様の頭上にはこれまでにない大量の
「イ、イヴちゃん。ありがとう、私を
「お母様、私は本気ですよ!!」
そう力強く言えば、お母様のどんよりとした空気が
こんな不思議かつとんでもない提案をしたのには、もちろん大きな意味がある。
私は転生者であるが
今ここでお母様の闇落ちを止めなければ自分の命が危ない。だからお母様のお父様に対する負の感情を静められるよう、必死に説得した。
そこまでしてでも、生き延びたいという強い理由があったのだ。
(せっかく推しが
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