第51話 他クラスとの交流

 結局、エインの声のおかげで、俺とルナは出場することになった。

 ルナは特に、爵位的にはあまり良いように思われてはいなかったが、実力的に問題はないとエインが言ったことで選ばれた。

 エインは授業でルナと模擬戦をしているし、普段一緒にいることも多い気がするから、実力がよくわかるのだろう。

 ちょっと必死だった気もしなくはないが。


 ちなみにあと1人の枠は、2種目で違う人が出ることになり、順位的には5位と6位の人になったらしい。

 とても実力主義だ。

 当たり前ではあるけど。


 なんにせよ、出場できてよかった。

 エインとルナは安心できるけど、5位と6位の人は安心できない。

 どちらも男子であるからだ。

 練習中も気を抜けないな。


 「き、今日からよろしくお願いします!」


 緊張しながら俺たちのグループの代表のエインに話しかけてきたのは、一つ下のAクラス代表の者たちだった。

 エインは王族だから緊張するのはわかるけど、ガチガチ過ぎて練習になるかな?

 余談だが、大人数になると収拾がつきにくいので、まずはSクラスとAクラス、BクラスとCクラス、みたいな感じで実力の近いクラス同士で合同の練習をすることになっている。

 練習自体は授業内だから、クラス全員で合同授業だ。

 本番は俺たちしか出れないけど、練習は全員でやって、お互いを高め合うらしい。

 正直、そんなんでやる気が出るのかな?と思っていたけど、選ばれなかった人でもみんな真剣に授業に取り組んでいるようだった。

 たとえ自分が出れなくても、自分のクラスが活躍すれば多少は評価が上がるからなのだろう。

 ちなみに先生は突っ立ってるが、基本は生徒が自由に時間を使うらしい。

 訊かれたときに教えることぐらいはするようだけど。


 「あぁ、よろしく頼むよ」


 順番に挨拶をしていくが、あまり名前は憶えていない。

 それよりもやはりと言うべきか、シアに熱い視線が注がれていた。

 代表の者だけでなく、Aクラスの男子のほとんどからだ。

 ちらちらと盗み見る感じで見ている。

 本当に要注意だな。


 「まずは全員の実力を知ってもらった方がいいと思うから、簡単に模擬戦でもしようと思う」


 「は、はいっ」


 全員を前に、模擬戦をすることになった。

 何気に久しぶりだし、クラスのみんなからアドバイスをもらえる可能性があるので、いい案だと思う。



 ♢ ♢ ♢



 Aクラスの模擬戦を見ていたけど、やはりSクラスよりも洗練されていないものが多かった。

 しかし駆け引きを少しはしていて、これならばSクラスの下らへんの人に勝てるかもしれないって感じだった。

 いろいろと改善できる点もあるから、これから強くなれると思う。


 Sクラスの方は、5位と6位の人がやった後にエインとルナがやって、エインがめちゃめちゃ褒め称えられていた。

 ルナもだいぶ成長して強くなってるが、相手がエインではまだ勝てそうになかった。

 というか、エインで霞んでしまっているのは少し可哀そうだな。

 みんなエインの方に気が言ってるから、あまりまともなアドバイスは望めないだろう。


 「ルナ、君は苦手な魔術を無理して使っているような感じがあるから、得意なものだけにしてもいいと思う。最初に私に見せて警戒させるのはアリだけどね」


 「わかりました、エイン様」


 まぁ、エインがちゃんとアドバイス送ってるから大丈夫か。

 あれ? エインの奴、いつの間に名前で呼ぶようになってたんだろう?


 「2人はどうする? 私としては力を見せておいた方がいいと思うけど」


 みんな模擬戦をしたのに俺たちだけやらないのは不自然だし、俺たちの実力がわからなければ練習にも支障があるな。


 「そうだね。やらせてもらうよ」


 闘技場の真ん中に出る。


 「シア、本気で来てくれ」


 「はい。努力します」


 「2人ともいいかい? それでは、始め!」


 エインの合図でシアが動き出した。

 半年で魔力操作の技術も上がっており、さすがに強化無しでは避けられなくなっていた。


 「おっ、と」


 と思って避けようとしたら足元がぬかるんでおり、下を向いたまま無理やり避けたところで上から水の槍が降ってきた。

 水の槍を剣に魔力を纏わせて切り裂き、シアの方を見ると大きな火球が迫ってきている。

 そして横からは風の刃が。

 一振りで両方を切り裂くと、火球の後ろにさっきまでいたはずのシアが消えており、すぐ真横に迫っていた。


――ギーン


 鈍い音が響き、いったん距離をとろうとする。

 しかしシアがそのまま攻めてきており、後ろには火の魔術を展開していた。

 このままでは俺と一緒に突っ込むことになりそうだが、直前にシアが俺から離れ、土の壁を作りだした。

 俺は上へと逃げるが、強風が吹き下ろしてきており、地面に着地する。

 と同時にシアが攻めてきたので、再び避けようとすると、足が動かなった。

 ぬかるんでいた地面が固まっていたのだ。


 「きゃっ」


 可愛い声をあげたシアは、俺に後ろから抱きとめられ首筋に剣が置かれていた。


 「そこまで」


 「さすがノール様ですね。やはり敵いませんでした」


 「いやいや、だいぶ強くなってたよ。最後のなんてちょっと本気でやっちゃったぐらいだから」


 そう、最後のはちょっと焦った。

 足が動かないって思うとつい本気で身体強化をして地面を抉り、足場が不安定になったシアに風の魔術で乱れた気流を作り出して、体勢を崩させたのだ。

 相手を翻弄する戦い方がちゃんとできていた。


 「ば、化け物だ」


 そんな模擬戦を見ていた生徒たちは、目の前でいちゃついていることにすら反応できずにいた。

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