学年対抗戦編

第50話 学年対抗戦について

 地下の魔物事件から早半年。

 あれからずっと、平和に学園生活が続いている。

 何も起こることなく学園生活を楽しんでいると、いつの間にか学園の一大イベント、学年対抗戦の時期になった。

 これは各クラスから代表の人を選抜し、いくつかの競技で点数をつけ、最終的に学年の合計で競い合うイベントだ。

 競技自体はクラス対抗だが、総合の勝ち負けは学年で決めることになっている。

 普通に考えたら一年生が高学年に勝てるとは思えないが、これは他クラスとの親睦を深めるのが目的らしく、そこまで勝ち負けにはこだわらない方が良さそうだ。

 しかし、今の二年生は昨年に、一つ上の学年に勝っているらしい。

 どうやらかなり強い集団がいるようだ。


 まぁ、とりあえず何が言いたいのかって言うと、俺はこれに出なければならない。

 別にこの対抗戦に特別こだわりがあるとか、誰か(とある先生が思い浮かぶ)に強制されたとかじゃない。

 俺がこれに出るのは、シアが出るからだ。

 さっき言ったように、これは他クラスとの親睦を深めることが主な目的である。

 その上シアは、このクラスの誰からも推薦されるだろう。

 そうなれば、シアは他のクラスの奴にも顔が知られてしまう。

 そしてこの対抗戦を利用して近づいてくる奴も出てくるはず。

 それほどの人気ぶりなのだ。

 なんなら生徒だけではない。

 前の魔物事件のように、学園の関係者もあまり信用できない。

 いや、もちろん担任のアイナ先生やゼム先生とかは信頼できるけど。

 対抗戦中は何が起こるかわからないし、シアの近くにいたほうがいいだろう。


 と、いうわけで俺はクラスの代表に選ばれなければならない。

 順位的には俺が選ばれてもいいと思うんだけど. . . . . .


 「. . . . . . というわけです。種目は2つありますが、両方同じ人が出なければいけないわけではありません。1つの競技に出れるのは5人ですので、最大で10人まで出ることもできますし、上位の人で固めていくのもありです。そこは全員で話し合って決めてください」


 なるほど、全部に出る必要は無いのか。

 半分の人は出れないことになるけど、他のクラスは四分の一しか出れないから、そこまで気にする必要は無いか。

 ちなみに2つの競技とは、5対5でフィールド内で戦う前半戦と、全学年の代表者が同じフィールド内で戦い合う後半戦である。

 前者は完全にクラス対抗の形だが、勝敗は学年で集計される。

 後者は各クラスの代表5人で1つのグループとなり、他学年の撃破数を競うので、こちらは学年で協力ができそうだ。

 いずれにせよ、戦闘力が高い方が有利なので、基本はメンバーに変更が無いだろう。


 「ではここは私が仕切ろうか。まずはみんなに聞きたい。みんなは上の学年の人たちに勝つつもりがあるかい?」


 「もちろんです。去年は勝っていたそうですし、僕たちはSクラスです。負けるわけにはいきません」


 「そうだ! 負けるはずがない」


 「これで勝てたら自慢できる. . . . . .」


 侯爵?とか言ってた身分の子を始めとして、他の子たちも口々に賛同する。

 去年みたいに上の学年に勝てたら、他の貴族へのアピールとなるのだろう。

 まだ一年生でも、すでに貴族の一員であるらしい。


 「わかった。それでは出場したい者は手を挙げてほしい」


 さすが王子、みんなのことを上手くまとめている。

 というかほぼ全員の手が挙がったな。

 まぁ、これは他の人に自分をアピールできるチャンスだから、特に貴族の人なんて必死だろう。

 あれ? シアが挙げてないな。

 でもシアは確実に出るだろうから、俺はここで手を挙げておいた。


 「ほとんど全員が挙がったようだから、ここからは推薦で決めようと思う。その方がみんなも納得できるだろうからね。推薦したい人がいないならそれでいいから、誰がいいかを前に書いていってほしい」


 そう言うと、みんなが前に書き出した。


 「ノール様は誰を推薦されるおつもりですか?」


 「う~ん、シアはほとんどの男子から推薦されるだろうし、エインも女子の人気高いからな~。あと俺が知ってるのは. . .あ、ルナがいたね」


 「やはりノール様はあの方に興味があるのですか?」


 「え? 興味があるとかじゃなくて、最初の剣術の試合の時に4位だったっぽいし、ちょうどいいかなと思ったんだけど」


 なんかシアが疑うように見てくる。

 別に何もおかしなことはしてないと思うんだけど。

 すいてきたし、そろそろ書きに行くか。

 ん? あれはルナか。

 エインを推薦したみたいだな。

 パッと見た感じ、女子はエインを推薦してるっぽい。

 男子は言うまでもないだろう。


 俺はルナを推薦してさっさと席に着く。

 前に書かれているのを眺めると、シアとエインの名前が多かった。

 っていうか、シアとエインの名前しか無かった。

 いや、ルナの名前が2つと、シアが書いてくれた俺の名前が1つあっただけだ。

 あれ? 誰がルナに入れたんだろう?

 こんなに一致してる中で推薦するとは、何かしっかりした考えでもあるのかな?


 「みんな書いてくれたようだし、聞こうと思うけど、シアさんと私は確定でいいかな?」


 全員が頷く。


 「あと2人、ノールとルナさんだが、私的には2人とも代表として相応しいと思う。みんなはどうかな?」


 「いや、そこは僕を」


 「何言ってんだ。俺だろ」


 「私も出たいです」


 「シアさんとグループになりたい」


 今度は口々に自分が出たいと言い出した。

 たまに下心のある発言が混じっていたし、なんとしても出なければ。

 男としての戦いが、今、始まる. . . . . . ?

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