第49話 その後

 次の日、いつも通り教室に行くと全員の目が俺たちに注がれた。

 と思ったら、瞬く間に男子が群がってきた。

 もちろんシア目当てに。


 「シアさん、昨日はお休みに. . . . . .」


 「授業にいらっしゃらず. . . . . .」


 「何があったので. . . . . .」


 昨日シアが休んでいたので、他の男子は何があったのか訊きたいのだろう。

 いや、もしかしたらここで心配して、シアの気を引こうという魂胆かもしれない。

 俺の方を睨んでいる奴もけっこういるけど、俺は何もしていないぞ。

 まあ、同じ時に休んでるから、自分でも怪しいとは思うけど。


 そんなことを考えてると、あっという間にシアが囲まれてしまい、俺はその外に追い出された。

 前世の時から、こういう密集地には入れないんだよな。

 とりあえず席に行こうかな。

 ん? あれはルナか。


 「やあ、ルナ。おはよう」


 「一昨日はあなたがやったの?」


 挨拶もそこそこ、というか挨拶なしにいきなり訊いてきたな。

 確かに気になるだろうけど。


 「どうしてそう思うの?」


 「昨日もあなたは休んでた。それにあの魔力は授業の時と同じ」


 なるほど、ルナは俺の魔力を覚えていたらしい。

 まぁ、あれだけ派手にやったら、俺を知ってる人にはわかるか。


 「他の人はあまり気づいてないようだけど」


 さっき地震とか魔道具が爆発したとか聞こえたし。


 「気づかないのがおかしい。最初の授業であれを見ておいて、全員あっちしか見えてない」


 そう言ってシアの方を指さす。

 確かにシアは人気すぎるけども。

 俺ってそんなに空気みたいな存在だったかなぁ。

 ちゃんと入試で主席だったよね?


 「それで、何があったの?」


 う〜ん、これって言ってもいいのかな?

 ヒスイさん曰く、あのことを知ってる先生は少ないらしいし、あまり広めるのはよくないだろう。


 「ごめん。俺じゃ言っていいのかわからないよ」


 「そう。じゃあ、もう安全になったの?」


 「うん。危険なことにはならないはず。授業も普通にやってたでしょ?」


 「あなたは大丈夫なの?」


 「え? 俺? 俺は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」


 いきなりだったが、まさか心配してくれるとは思わなかった。

 いつもクールな感じだけど、意外に優しいんだな。


 「エイン様が心配なさってたから」


 エインも心配してくれてたな。

 昨日はちょっとでも授業に出るべきだったかな?


 ちなみにエインにあの魔物のこととか調べてもらったけど、特にめぼしいものは見つからなかった。



 ♢ ♢ ♢



 アイナ先生視点


 一昨日の臨時休校には驚かされた。

 なんせ学園の教員ですら臨時休校の理由を詳しく知らされなかったからだ。

 ほとんどの者が訝しげに思っていたが、学園長先生の決定であるし、よほど重大な問題が発生したのだろう。

 とにかく生徒の安全を最優先しろ、と言われた。

 学園にはとても強い先生方がたくさんおられるし、そこまで心配する必要はないと思っていたが、違った。

 一昨日、寮の近くで待機しているとき、恐ろしいほどの魔力を感じたのだ。

 あの入学試験のときよりも遥かに大きな魔力だった。

 しかし魔力の質は同じ。

 そもそも、あれほどの魔力は学園長先生でも出せないだろう。

 そう、あれはおそらくノール君の仕業だ。

 もはや災害としか思えない魔力を感じた後、実際に爆発音が聞こえてきた。

 あの規模の魔力ならば、学園が吹き飛ばされたのかと思ったが、どこにも実害はなかった。

 近くの人もみんな何が起こったのかと混乱していたし、生徒たちも寮からは出てこないが、窓の外を眺めていた。

 しかし時間が経って、翌日からは授業を再開するように学園長が仰った。

 もう危険はないという判断らしいが、あの爆発については何も仰らず、私は従うしかなかった。

 それでも、大体の事情は把握できる。

 なんせ昨日の授業にあの2人がいなかったからだ。

 あの大規模な魔力もノール君のものらしかったし、あの日に何かがあったのだろう。

 2人から何があったかを聞いてみたい気持ちもあったが、あの魔力を思い出すと恐ろしくなり、知らぬが仏かと思ってしまう。


 今日は教室に入ると、2人がいた。

 なにも変わったようには見えず、シアさんの方にはいつも通り男子が群がっている。

 ノール君には全く興味がないようだが、一昨日の魔力がノール君のものだと気づかないものだろうか。

 まだ1年生だし、可愛い子に惹かれてしまうのもわからなくはないが、魔術師を目指すのならば、これぐらいは理解できていないとダメな気がする。

 もうちょっと厳しく教育しよう。





――――あとがき――――


 この作品を読んで下さり、ありがとうございます。

 学園の地下編はこれで終わりとなります。

 いろいろと解決しないまま、区切りも悪いかと思いますがお許しください。

 次回からは学年対抗戦という、簡単にいえば体育祭に近いものが舞台です。

 できるだけ毎日投稿を頑張るつもりではありますが、何分ストックが少ないもので、どこかで日が空くかもしれませんが、ご了承ください。

 それでは、次の章もよろしくお願いします。

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