第48話 新たな技術
ヒスイさんの部屋から出て、俺たちは気配を偽って空を飛び、ノワールたちのもとに来ていた。
学校が嫌になったから抜け出したとかではなく、俺の魔力の実験?をするためだ。
あの戦いの後、俺の魔力の一部が変質しているらしいが、おそらくこれは最後にあの魔物の魔力に偽った後、もとに戻らず定着してしまったからだと思う。
もしこれらを別々に偽ることができるならば、仮転移とか魔術そのものに干渉できる人数が増えるということだ。
つまり、さらに強くなれる可能性がある。
「む? 主ではないか。昨日は来なかった代わりに今日は早く来たのか?」
ちょうど子供たちに体の使い方を教えていたノワールが俺に気づいた。
「あぁ、いや、ちょっと試したいことがあってね。みんなに手伝ってほしいんだ」
「何するのー?」
「私でもできそうですか?」
「俺でいいなら手伝う」
「僕もがんばります」
「なんでも言って下さい」
「. . . . . . もう動けない」
エレナはノワールの鍛錬に疲れているようだが、他の子たちは全員やる気があるな。
さすがにこの時間はレイさんとザックさんはいないようだ。
まぁ、あの人たちにはだいぶお世話になってるから、今度何か差し入れでもしよう。
「えーっと、まずはシアとサラ、魔術で火を浮かべてくれる?」
「こうですか?」
「そうそう、ちょっとそのままでいてね. . . . . .」
俺は自身の魔力をシアのものに偽り、変質していた魔力をサラのものに偽った。
そしてシアとサラの魔術を同時に操る。
――ボゥッ
「っ、火が大きくなりました」
「私のも大きくなってます。ノール様、実験成功ですね」
シアとサラ両方の魔術を同時に操ることができた。
「うん、これはとても使い勝手がいいぞ」
「ノール様、魔術に干渉できるのは1人までではなかったのですか?」
「そう、この前までは無理だったんだけど. . . . . .」
みんなに学園で起きたことを説明した。
「すごいです。Sランクの冒険者でも倒せなかった魔物を倒すなんて」
「僕は学園に行かなくて正解でした」
「主もいろいろと暴れておるの」
「いや、暴れていたわけじゃないからね? まぁとにかく、俺の魔力が変質して、2種類持ってるから2人の魔術を操れたんだよ」
「3人以上はできないの?」
そう聞いてきたのは、さっきまでバテていたエレナだ。
この中で一番魔術が得意だから、興味があるのだろう。
「それを今からやってみようと思ってるんだ。じゃあ、エレナにも協力してもらおうかな」
「わかった」
そう言って、手の平に小さな炎を出した。
シアとサラも火を出す。
俺は自身の魔力を3種類に偽り、それぞれの魔術を同時に操った。
♢ ♢ ♢
結局何回かやってみて、最大で5人まで同時に偽れることがわかった。
少ない人数なら普通にできたんだけど、6人以上になるとどうしても、どれかが疎かになってしまった。
たぶん処理能力?的なものの問題だから、練習してればもっと偽れる人数が増えていくと思う。
まぁ、今の5人に増えただけでも相当強いんだけどね。
「あの、ノールさん。ずっと気になってたんですけど、今日って学園の授業がある日ですよね?」
「うん、そうだよ。でも俺は、今朝まで丸1日寝てたから一応は病み上がりだし、シアだって昨日は戦ってるから、別にちょっとぐらい休んでも大丈夫なんだよ」
「え、今朝まで寝たきりだったのにもうこんなに動いちゃって大丈夫なんですか?!」
あれ、さっきの説明で俺が寝てたこと言ってなかったっけ?
というか、学園が壊滅するかもしれない大事が起こった次の日に授業再開する方がおかしいでしょ。
「うん。体は大丈夫だし、魔力も複数の種類を持てるようになったから、むしろ強くなった感があるね」
「はぇ~、なら、もう学園で学ぶことはなさそうですね」
「ノール様はもともと、学園に通われる必要はありませんでしたよ」
いや、シアさん。
確かに授業はつまらないけど、学ぶことはたくさんあるからね?
「それよりも主よ。強くなったのであるなら我とも体で多少はやりあえるのではないか?」
「私とも鬼ごっこしよー」
「俺は料理を教えてほしい」
「私もお手合わせをお願いしたいです」
あ~、いつも通りみんながいろいろ言ってきてるな。
普段ならザックさんとレイさんが何とかしてくれるんだけど、今は順番にこなしていくしかなさそうだ。
♢ ♢ ♢
夜になって、ザックさんとレイさんが来てくれたので、俺とシアは学園に戻ってきた。
結局あれからずっとみんなの要望をこなしていったから、学園でいろいろやってるよりもよっぽど疲れた。
シアとサラとカインは3人で鍛錬してくれてたようだけど。
夕食は向こうで作って食べてきたから、食堂にはいかずにそのまま寮に戻ると、俺の部屋の前にエインがいた。
「おぉ、ノール。無事だったか」
「あぁ、大丈夫だよ。でもなんで俺の部屋の前に張り込んでるの?」
「いや、昨日君が行ってからすごい魔力と爆発音があったからね。そしてその後から君の姿が見えなくて」
心配してくれるとは、良い奴だ。
「見ての通り無傷で元気だ。あ、でも丁度いいや。エイン、地下で起こったことを話したいから、ちょっといい?」
「もちろんだ。聞かせてほしい」
そうして俺の部屋に入り、起こったことを説明する。
「10年前の魔物は私も聞いたことがあるよ。当時のことはあまり覚えていないけどね。しかしその時に関わった者がいたとは聞いていない。一応私の方でも当時の資料を調べておくよ」
「うん、お願いするよ」
王族も知らないこととなると、結構ヤバい事なのか?
まぁ学園の危険なものは取り除けたし、何もないことを祈ろう。
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