第41話 地下の案内(1)

 いったんヒスイさんの部屋から出た俺は、魔力で身体強化をして、シアのもとへ全速力で戻る。

 仮転移を使ってもよかったが、なんとなく実際に・・・ヒスイさんの部屋から離れたかったので、普通に走った。

 シアは棟を出てすぐのところで待っていてくれてた。


 「あ、ノール様。どうなさいましたか? 何か急いでいるようですが」


 「あぁ、うん。ちょっとシアに相談したいことがあってね」


 そうして、ヒスイさんの部屋であったことを話した。


 「なるほど。確かにノール様のお力でないと気づかれずに侵入は不可能ですね。しかしヒスイさんにノール様のお力を知られても良いのかどうか」


 「そうなんだよ。ヒスイさんなら他の人に言いふらさないとは思うんだけどね」


 「目隠しをしてもらいますか?」


 「さすがに先生にそれはできないよ」


 「では、お伝えするのですか」


 「それしかないかな。一応、ヒスイさんの秘密も共有してくれるらしいし」


 「ノール様は副学園長の秘密を知りたいんですか? もしかして、あのような方が. . . . . .」


 「え? ごめん。なんて言ったの?」


 「いえ」


 「そう? まぁ元Sランク冒険者の力の秘密を知れるのはいいことだと思うんだよ。それに、俺の力を知ってる人がいたら動きやすくなるからね」


 「利用しようとするのではないでしょうか」


 「あの人ならもともとめっちゃ強いからそんな利用しようとは思わないんじゃないかな」


 「そうでしょうか。ノール様の概念を知って利用したくならない人はいないと思います」


 「え? そうかな?」


 「はい。せめて仮転移ができることだけをお伝えしましょう」


 「確かに、それならまだ秘密にしておけるね。そう話すとするよ」


 こうして、俺の概念を伝えることになった。

 シアに相談しといてよかった。

 俺なら概念を1から10まで話してたよ。


 「あ、そうだ。仮転移できるの1人までだから、シアには悪いけどお留守番をしててほしいんだ」


 「え. . . . . . やっぱり副学園長を連れて行くのはやめましょう」


 ただ、シアはお留守番になっちゃうことを話したら、めちゃめちゃ機嫌が悪くなった。


 「いやいや、さすがにそれはできないよ」


 「でしたら正面から入るべきです」


 「そうしたら見つかっちゃうじゃん」


 「では、地面に穴を空けていきましょう」


 「見つかるかもしれないし、何かあったときに逃げられないよ?」


 「. . . . . . どうしても連れて行くのですか?」


 「うん。学校の先生だし、一度見てもらった方が対処しやすいと思うからね」


 「私も行くことができませんか」


 そんな悲しそうな顔をされたら困るよ。


 「俺もシアについてきてほしいけど、座標は他人の魔力に偽らないといけないからね」


 俺はシアの頭を撫でながら言うと、少し頬を赤らめながら渋々頷いてくれた。



 ♢ ♢ ♢



 ――コンコン


 「入れ」


 「失礼します」


 「失礼します」


 今回はシアも連れてヒスイさんの部屋へ来た。


 「来たか。2人でということは私に力を伝えてもいいということか?」


 「はい。ですが、絶対に他の人に言わないでほしいんです」


 「無論だ。約束しよう」


 「ありがとうございます。では、行き方を説明しますね」


 「私には何も求めないのか?」


 「はい。全てをお話するわけではありませんし、協力して下さるので」


 「そもそもこれは学園の問題だ。お前たちが協力してる側なんだが」


 「そうですか? えーと、じゃあ、強くなる方法を教えてください」


 「私よりはるかに強いお前が言うことか?」


 「ですが俺は剣術がまだまだですし、先生は何か奥の手を持ってますよね? それをお教えいただきたいんです」


 「なるほど、それなら同等だな。わかった。後で伝授しよう」


 「ありがとうございます。それで行き方はですね、安全な場所さえあればどこでもいいんです」


 「どういう意味だ?」


 「俺は二つできることがありまして、気配とか姿を消せる能力と一時的な転移能力を持ってるんです」


 「ほう、転移か」


 「はい、一時的なものですので、解除したら元の部屋に戻ります。ですから、安全な場所から転移して、すぐにまた戻ってこれるんです。一応、俺はこれを仮転移と呼んでます」


 「なるほど、色々と聞きたいことができたが、詮索はルール違反だろうから聞かないでおこう」


 「ありがとうございます」


 「それで、気配を隠すというのは、他人でも可能なのか?」


 「はい。一応静かにしてもらう必要がありますが、他人のも隠せます。しかし、仮転移は1人までが限界です」


 「それでも十分すぎる力だ。あの魔術と剣術に加えてその力を持っているとは、本当に化け物だな」


 「え、え~と、ありがとうございます?」


 「褒めたつもりではないが、いいだろう。この部屋は基本的に私のプライベートだから、他の先生も入ってこない。学園長先生ぐらいは入ってくるかもしれないが」


 「学園長先生ならバレても大丈夫そうですかね?」


 「ああ、あの方は大丈夫だろう。魔術に興味をお持ちだから、お前のその力を追及してくるかもしれんが」


 え~、それ面倒な奴じゃん。

 帰ってきたときに鉢合わせしないことを願うのみだ。


 「え~と、じゃあ、転移しますよ?」


 「ああ、頼む」


 そうして、俺は自分の魔力をヒスイさんの魔力に偽り、自分とヒスイさんの位置を偽った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る