第40話 先生と相談

 あれから1週間ぐらい、エインからは特に報告が無かった。

 俺は待っている間はあの地下を探索していたが、何やら怪しい組織の名前と魔物を使った研究の資料が出てきただけだけだった

 ちなみにその怪しい組織の名前はヴィセンシャフトラだ。

 初めて聞く名前だし、エインに聞いても知らないと言っていたから、少なくとも王族は知らないような組織なんだろう。


 「エイン、何かわかった?」


 「いや、特にはわからなかったよ。まぁ、先生たちも知らないらしいことはわかったけどね」


 「それは大きい収穫だと思うよ。先生に相談しても怒られなくて済むし」


 「そ、そこが問題なんだ? 危険なことをしてたのは変わりないから怒られるかもしれないけど」


 「え? ほんとに? それなら面倒だな~」


 「ノール様は学校が何もしていないからご自分で調べられただけですし、悪いのは学校なので怒られるとは思えませんが」


 「まあ、私も学校側の責任だと思うんだけどね」


 「いや、それでも怒られる気がしてきた。入試で変に目立ったし」


 「いやいや、あの入試を知ってる人なら怒れなくなるでしょ」


 「はい。怒ってきたなら自分の責任も分からない愚か者です」


 おぅ、シアさん辛辣。

 まあでも、確かに学校のことなのに知らないなら、それは学校の責任になるはずだな。

 じゃあ、怒られないか。

 とりあえずヒスイさんに相談してみよう。

 あの人なら何かあっても何とかしてくれるでしょ。



 ♢ ♢ ♢



 俺は授業が終わってすぐ、ヒスイさんの所へ来ていた。

 剣術の授業中に話したいことがあります、と言ったら、ヒスイさんの部屋へ来るよう言われた。

 どうやら名高い職員には個別の部屋があるらしく、ヒスイさんは職員室っぽい所がある棟の上から2つ目の階に屋を持っていた。

 さすがは副学園長先生だ。

 ノックをすると、入れ、と返ってきたのでドアを開けて中に入る。


 「失礼します」


 「そこの椅子にかけてくれ」


 「ありがとうございます」


 結構きれいな部屋だった。

 窓からの景色もいいし、ちゃんと整理整頓がされている。


 「さて、授業の時に言っていた話を聞こうか」


 「はい。先生はこの学園の地下をご存じですか?」


 「この学園の地下? 王都にはよくある下水道のことか?」


 「いえ、研究所の地下です」


 「それは知らん。あっちの方へ行くことは無いからな。しかし地下を作っているとは。地図にも載っていないぞ」


 「やはり先生でも知らないんですね。どうやら、そこでは魔物の実験が行われているようなのです」


 「魔物の実験というと、あそこの魔物の研究室か」


 「はい、地下の入り口も隠されていました」


 「良く見つけることができたな」


 「たまたまその辺を散策してたら地下の気配を感じまして。探してみたら見つかったんです」


 「そんなに簡単に見つかるものなら、なぜ今まで見つからなかったんだ?」


 「さ、さあ? 俺もたまたま見つかっただけですし、探す場所が悪かったのでは?」


 やべ、俺の概念を話すのは良くないから適当に言ったけど、めっちゃ怪しまれた。


 「そ、そんなことよりもですね、その地下にあったものが重要なんです」


 「まぁ、今はその話は聞かないでやる。それで、地下には何があったのだ」


 なんとか逃れられそうだ。

 問題の先送りにしかならないけど。


 「地下にはヤバい魔力を漏れ出している肉の塊がありました。どうやら改造された魔物のようでした。近くの部屋の本を見ても、魔物の改造について書かれていたので多分間違いないでしょう」


 「そうか。しかし、お前がやばいというほどの魔力を持っているとは、私でも対処できるか怪しいな。お前なら殺れそうか?」


 「多分できます」


 「相変わらず自信の無い奴だな」


 「いや、あれがもし暴れたら、この学園が崩壊するかもしれないんですよ」


 「だからこそ、強気でいるべきだ」


 えぇ~、できるかわからないのに、できますって言いきれないよ。


 「まあ、とにかく私も連れて行け。どうせお前のことだからよく調べに行っていたのだろう?」


 うげ、なんでわかるんだよ。

 いや、それよりもどうしよう。

 俺の概念がないと気づかずに入れないよ。


 「先生が一緒となると気づかれてしまいますが」


 「なら、どうやって今まで2人で入り込んでいたんだ?」


 マジでなんでシアと一緒ってわかるんだ?


 「お前たちは常に一緒にいる上に、シアの方はお前から離れないだろう?」


 まぁ、間違ってないけど。

 というか、心を読むのやめてくれませんかね。


 「お前の秘密にしておきたい力なら私は他には言わない。なんなら私の秘密も共有しよう」


 Sランク冒険者の力の秘訣を教えてもらえるなら、俺も多少は明かしてもいいかもしれない。

 でも、一応シアに確認しておかないとな。


 「少しだけ待っていてください」


 「いいだろう。しかし今日中に連れて行くのだぞ」


 「. . . . . . わかりました」


 あーあ、どうしよう。

 先生を連れて行かないといけなくなっちゃった。

 俺の概念を知られたらダルいことになるのは間違いないし。

 とりあえずシアに相談するしかないな。

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