第39話 王子と相談

 翌朝、細心の注意を払い、誰にもバレずにシアを部屋へ送った。

 朝に同じ部屋から出るのを見られたら、先生たちにも何言われるか分かったものじゃない。

 まだ朝の6時半で、生徒たちは寮の食堂にいる頃だったから何とかなった。

 しかし、ちょっと遅れてしまったな。

 シアが食堂で群がられないといいけど。


 「おはようございます、ノール様」


 食堂に行くと、やはりシアが群がられながら俺の方へ歩いてきた。

 次から食堂の前で合流しようかな。


 「おはよう。思ったよりも早かったね」


 「はい。急いで参りました」


 「まだ授業には早いからゆっくりでいいからね?」


 「はい。ですが私はノール様とゆっくりしたいので」


 周りの視線が痛い。

 ゆっくり食べていきたかったけど、これは無理そうだ。



 ♢ ♢ ♢



 「やあ、ノール、シアさん。おや、ノールはなんだか疲れているように見えるな。何かあったのかい?」


 「いや、特にこれといったことは無いんだが、朝からシアの人気がすごくてな」


 「なるほどね。可愛い彼女を持つと大変だなあ」


 「か、彼女. . . . . .!」


 「いや、彼女ではないんだが. . . . . .」


 シアも真っ赤になっちゃったし。

 いや、これはこれで良いんだけど。


 「おや、そんなにいつも一緒にいといて彼女じゃないのかい?」


 「だから、彼女じゃないって」


 「ノール様は私が彼女と思われるのは嫌でしたか. . . . . .?」


 「え?いや、そんなことはないよ」


 なんかシアがすごい落胆しだしたかと思ったら、俺の言葉を聞いてぱぁっと顔を輝かせた。


 「本当に彼女じゃないのかい?」


 「しつこいぞ。そんなことよりも、エインに聞きたいことがあったんだ」


 「まぁ、この話題は終わりにしとこうか。それで、聞きたいことって?」


 シアとの関係の話は終わらせて、昨日見つけた学園の地下について話す。


 「なるほどね。王子の私でも知らないことだな。まぁ、それほどこの学園に詳しいわけでもないけどね。一応、私の方でも調べてみるとするよ」


 「ありがとう。ついでにだけどこの学園に詳しそうな人って知らない?」


 「そうだね. . . . . .私が知っているのは、図書館の司書さんだ。どうやら10年以上前からここで働いているそうだし、なにか知っているかもしれないね」


 「司書さんか。今日にでも行ってみるとするよ。ありがとう」


 「お礼は必要ないさ。もしなにか良く無い事だったら、私たち王族の問題でもあるんだから」


 これで少しはあの物体について調べられるかな。



 ♢ ♢ ♢



 放課後になり、図書館へ行くことにした。

 今日の剣術の授業では、ヒスイさんが俺とシアに剣を直接教えてくれた。

 他の人たちはとても羨ましそうに見ていたけど、なぜかヒスイさんは他の人には教えなかった。

 なんでも、他の人は話にならないらしい。

 シアでもギリギリだって言っていたぐらいだから、そりゃ他の人は話にならないだろうけど。


 「ヒスイさんはすごい方でしたね」


 「うん。剣術では全く勝てる気がしないよ。速度と筋力は上回ってるんだけど、技術と経験の差を感じるね」


 魔力を使えば俺が書てるっぽいけど、魔力無しの剣術だけなら全くかなわなかった。

 ヒスイさんにあの地下のことを聞いてみたかったけど、あの地下に入ったことがバレたらめんどそうだし、しばらくは自分で調べるとしよう。


 図書館に着いて、年配の司書さんを訪ねる。


 「すみません、この学園のことを聞きたいんですけど」


 「何かわからないところがありましたか?」


 「この学園の地下ってどうやって行くんですか?」


 「. . . . . . 地下ですか。どこで聞いたのかは知りませんが、地下は無いはずですよ」


 「え、そうなんですか? こんなにいろいろあるのに? 地下を造らない理由でもあるのでしょうか」


 「私にはわかりませんね」


 「新しく作られたとかでしょうか?」


 「ただの噂かもしれませんよ」


 「確かにそうですね。答えてくれてありがとうございました」


 「いえいえ、また何かあったら聞いてください」



 ♢ ♢ ♢



 か~な~り、怪しかった。

 最初に不自然な間があったし、地下のことを知らないって言ってたのは噓だった。

 たぶんあの塊のことも知っていると思う。

 俺に知らせなかったのは学校の機密情報だからなのか、それ以外なのかはわからなかったが。


 「ノール様、先ほどの司書はかなり怪しかったと思います」


 「うん。俺もそう思うよ。地下のことを知っていたし。ただ、もしかしたら学校の秘密なのかもしれないから、調べにくいね」


 「学校があのようなものを隠しておくのでしょうか?」


 「それはわからない。とりあえずは俺たちであの地下を見ていくしかないと思うよ。あとはエイン次第でもあるけど」


 「先生方には尋ねてみないのですか」


 「もし学校の秘密だったら、俺たちが悪いことになっちゃうし、面倒なことになりそうだからね。まぁ、学校も知らない事だったらかなり危険だから、そんなこと言ってられないけどね」


 そう、学校が隠しておきたいことなら首を突っ込むと面倒なことにしかならない。

 ただ、もし何者かの仕業であの化け物が暴れたりしたら、学校は崩壊するだろうし、シアが危険だ。

 エインの報告を待つしかないな。

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