第37話 みんなからの評価

 剣術の授業が終わり、ヒスイさんは帰って行った。

 帰り際に、


 「いつでも来るといい。遊んでやる」


 と言っていたけど、たぶん行かない。


 放心状態のみんなも再起動しだして、次の座学の授業へ歩き出した。

 次は魔術理論だ。

 家の本を全部読んだからあんまり面白くはないかもしれないが、もしかしたら新しい知識をもらえるかもしれないので少し楽しみである。



 ♢ ♢ ♢



 ダメだった。

 魔術理論の授業は全部知ってる内容で、まったく面白みがなかった。

 シアも似たような感じで退屈そうにしていたから、俺が偽って魔力の鍛錬を一緒にしていた。


 その次の座学も、歴史学だったけど全部知ってる内容で、こっちはさらに面白くなかった。

 まだ魔術の方は応用ができるけど、歴史は知ってしまったらそれで終わりだと思っている。

 俺はあまり歴史学が好きではないようだ。


 午前の授業が終わり、昼食の時間になった。

 ここの昼食は、朝同様に寮で食べてもいいし、学園の真ん中にある学食を使ってもいい。

 俺は朝は寮の食堂だから昼は学食を使いたいと思ったので、シアと一緒に学食にした。

 案の定、シアが入っていったら他の上級生の目もシアに固定された。

 シアは気にする様子もなく、ご飯を頼んで席を探す。

 多くの人(特に男子生徒)は自分の席にシアを誘いたいだろうが、たまたま人気のないところに4人用のテーブルがあって、そこに決めた。

 4人用だから、他の人がシアを狙ってくるかもしれないと思い、俺はシアの隣に座った。


 「やぁ、ここに座ってもいいかい?」


 ほら来た。シア狙いの奴が。

 そう思って相手の顔を見たら、この国のイケメン王子、エインだった。

 しかもルナを連れてきている。


 「あぁ、もちろん」


 「ありがとう」


 「ルナも席がなくて困ってたの?」


 「そう、彼女も場所がなくて彷徨っていたのを見つけたから声をかけてね。一緒に探していたら君たちが座ってるのを見つけたんだ」


 確かに王子様と座りたい奴は山ほどいるだろう。

 シアほどではないがルナもそれなりに可愛い方だと思うし。


 「これからはここを取っておこうかな」


 「それはいいね。誰かが1人でも座ってたら他の人は来にくくなるし」


 「シアは1人で座ってたらダメだよ?他の奴が群がってくるから」


 「はい。ノール様と座ります」


 「そういやエイン、みんなはどこで食べてるの? 寮の方かな」


 「あぁ、みんなはあそこらへんにいるよ」


 そう言って指し示したほうを見ると、確かに見覚えのある顔がちらほらいて、俺たちの方を見ていた。


 「どうやら剣術の授業でみんな怖くなったんだろう」


 「俺はヒスイさんに言われたからやっただけなんだけど」


 「あんなものは今までに見たことがないね。ドラゴンでも倒せそうだったし、あれほどの魔力を消費してもまだ楽そうにしているから恐ろしくなるよ」


 「魔力は半分ほど使ったからちょっと疲れたよ。それにドラゴンは魔術に耐性があるんじゃなかったっけ?」


 「あんなに魔力を込めたらドラゴンだって無傷じゃすまないと思うよ。もはや災害級だね」


 「あなたは危険」


 えぇ、俺、災害認定されたのか?

 ルナにも危険って言われてるし。

 みんなが寄ってこなくなるのは寂しいが、シアに寄って来る虫は減るかもしれないからいいか。

 あ、そもそも俺には寄ってきたことなかったわ。


 「皆さんようやくノール様のお力を理解したようですね」


 なんかシアさん怖いですよ。

 シアまでクラスメイトに怖がられないか心配だ。



 ♢ ♢ ♢



 昼食が終わり、また座学が入った。

 今度は魔物理論だ。

 魔物は俺の町じゃ弱い奴しかいなくて、本で読んだ奴も見たことない奴しかいなかったから、細かいことまでは知らず、面白い時間だった。

 今度王都を出て、ちょっと強めの魔物を狩りに行こうかな。

 ちなみに王都も魔物が出ないところである。理由は不明。


 そして今日の授業が終わり、放課後になった。

 宿題が出されているが、理解している範囲なのですぐに終わるだろう。


 「シア、あの地下を見に行きたいんだけど」


 「はい。どうやって行くおつもりですか?」


 「俺たちの座標を偽って行こうかなと思ってるよ」


 「仮転移ですか。それなら安全ですね」


 「うん、転移前は安全な場所にいとかないといけないけどね」


 「私の部屋に来ますか?」


 「え、いや、さすがに女子寮には入れないよ。シアがいいなら俺の部屋で. . . . . .」


 「ぜひお願いします!」


 おぅ、すごい被せ気味に言ってきた。

 まぁ、俺の部屋なら安全だろう。


 そういうわけで、自分の部屋に窓から侵入し、そこで仮転移を使ってあの地下へ行った。

 自分の部屋に侵入とはなんとも不思議な気分である。



 ♢ ♢ ♢



 よし、仮転移は成功だな。

 この前あの人が言っていた通路の先を確認しておきたい。


 「シア、この前の通路の先に行ってみたいんだけど、いいかな?」


 「はい、それがいいと思います」


 というわけで、あのだだっ広い通路を歩いていると、一番奥に大きめの扉があった。

 一応押してみたが鍵が掛かっていたので、また仮転移で自分たちを3m前の位置に偽ってみたら、中に入れた。


 中は真っ暗ではなく明かりがついており、そこには謎の肉の塊がドクドクと脈打っていた。

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