第35話 初めての授業
この学園では入学式の次の日から早速授業が始まる。
昨日のちょっとした探検から少し経って、俺たちはいつも通り少し早めに食堂に来ていた。
「おはよう、シア。何回見ても似合ってるね」
「お、おはようございます。そんなに褒めてくださっても何も出ませんよ?」
いつも通り挨拶を交わして、朝食を食べる。
今日は初めての授業日なのだ。
「シア、今日の授業って最初に剣術だったよね?第一闘技場に集合だっけ?」
「はい。私たちが魔術の試験を受けた所です」
「あそこか。ちゃんと土は固まってるかな?」
「おそらく元の土よりも優れているかと」
いや、それはないだろう。
確かに頑張ってぎゅうぎゅうに押し固めたけど、ああいうのってある程度の威力に耐えられるように作るものじゃないのか?
「よし、じゃあ少し早めに行って確かめてみるか」
「はい」
あ、昨日のこと相談してなかった。
まぁ、後で良いか。
♢ ♢ ♢
闘技場にやってくると、授業が始まる45分も前なのに半分の人が集まっていた。
全員(特に男子)はシアを見た瞬間、俺に邪魔そうな目を向けて、シアに群がりだした。
まさか全員、シアが目的ではないだろうな?
「おはようございます。みなさん早いですね。何かあったのですか?」
シアが全員に聞いてくれた。
「ここはシアさんが吹き飛ばした試験会場なのですよね?ここに来たら魔術の力が上がると聞いて. . . . . .」
なるほど、いわゆるパワースポット目当てか。
しかし、俺もシアも吹き飛ばした覚えはないぞ?
シアは会場の一部を貫いただけだし、俺も地面は削っちゃったけどちゃんと直したし。
「吹き飛ばしたのは私ではなく、ノール様ですよ」
うん? シアも何を言っているんだ?
俺は決して吹き飛ばしてはいないぞ。
「シア、俺は吹き飛ばしてないよ?」
「いいえ、あれは吹き飛ばしたと言っていいです。それに、ここの噂はこの土に込められた魔力が元でしょう。つまり噂はノール様のものです」
えぇ~、なんか俺がこの噂作ったみたいになってるじゃん。
まぁでも、確かに魔力は込めまくったからな。仕方ない。
「シアさんは剣術もできると. . . . . .」
「ぜひ今度魔術のコツを. . . . . .」
シアが群がられてしまった。
俺がいても邪魔に思われるだけだし、少し離れておくか。
あ、アレはルナじゃないか?
「やあルナ、おはよう。今朝は早いんだね」
「ここの噂を確かめに来た」
「君もパワースポット目当てなんだね」
「パワー、すぽっと?」
「あぁ、いや、なんでもない。それで、魔術は上がりそう?」
「全然。ただ土に異常な魔力が込められているだけ」
「そっか。聞いてて思ったけど、ルナは魔術が苦手なの?魔力量は多いように見えるけど」
「適性が偏ってるから苦手」
別に適性が偏ってても得意なものを磨けばいいし、苦手になるようには思えない。
「全部の属性を使いたいの?」
「使えるようにはしたい。その属性にしかできないことが多いから」
なるほど、それはそうだな。
でも苦手なものは苦手なのだから、時間がかかるだろう。
「きっと時間をかければ使えるようになるよ」
「あなたは? 試験では3属性を使ったと聞いた」
「え、俺?使ったのは2属性だけど、物心ついた頃から魔術の練習をしてたからね。ルナほど魔力が多ければ絶対使えるよ」
「そう」
「よーし、全員こっちへ集まれー」
おっと先生に呼ばれた。
「呼ばれてるし行こう」
なんか聞いたことある声だな。
♢ ♢ ♢
「全員集まったな?よし、まずは自己紹介からだ。何人かは覚えてくれてると思うが、俺はゼム。この剣術の授業担当だ。よろしく」
おぉ、誰かと思えばあの時のゼムさんだ。
シアがボコボコにしちゃったけど大丈夫かな。
「さてと、授業を始める前に全員の実力を見ておきたいと思う。レベルは大事だが、技術も疎かにしてはいけない。レベル差があっても技術で勝っていれば格上でも勝つことができるんだ。そのことを忘れないでほしい」
おぉ、なぜかゼムさんの声は頭に入ってきた。
「じゃあ、まずはペアに分かれてもらおうか。とりあえず順位で偶数の人は一つ上の人とペアになってくれ。奇数は下の人とペアになるってわけだ」
ようやくクラスメイトがシアから散り始め、俺はシアの元へ行く。
そういやあのエインは誰と組むんだろう?
シアと同じくらい朝から群がられて大変そうだったが、今回は相手が女子ならその子も大変な目に遭うだろう。
そう思っていると、エインの方からある女子生徒のもとへ歩き出した。
ってあれ、ルナじゃないか。
ルナが入試の成績4位だったのか。
魔術が苦手とかいうから結構ギリギリなのかと思ってた。
「ノール様。あの子が気になるのですか?」
「ん? いや、あのルナって子が4位だったのが驚きでね」
「ずいぶん親しくされていたご様子でしたね」
なんかシアが怖い。
「じゃあ、3組ずつ同時にやってくれ。見て回るから」
そう言って授業が始まり、シアの怖い目線はなんとか逃れることができた。
それぞれの模擬戦を見てると、やはり特待生といえどまだ12歳ということもあって、それほど洗練されてなかった。
この前鍛え出したサラよりは強いだろうが、サラが概念を使えば勝てるだろうし、なんなら剣術もすぐに追い抜いてしまうだろう。
ただ、さすがというべきか、エインはそれなりに剣を扱えていた。
ルナも上級生と渡り合えそうだが、それでもエインの方がかなり強くて、エインはルナの力を見極めようとしている。
ゼムさんもそれに気づいているようで、エインに期待の眼差しを向けていた。
ちなみに3組ずつやると最後1組余るが、もちろん俺たちが余った。
他の人たちの模擬戦が終わり、残るは俺たちだけとなった。
「さてと、最後はお前たちだが、残念ながら俺から教えられることは何もなくてな。強力な助っ人を呼んできた」
強力な助っ人?一体誰だろうか。
すると、これまたどこかで会った気がする魔力がこちらへ歩いてきた。
「まさか、あの人は. . . . . .」
「すごい、生で見られるなんて」
「あれが元Sランクの副学園長. . . . . .」
そう、歩いてきたのは俺の試験官だったヒスイさんだった。
あれ? ヒスイさんって副学園長だったの? しかもSランクだったなんて。
俺はあのとき遊ばれてたのか?
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