第34話 地下の探検

 HRが終わり、放課後になった。

 シアに付きまとっていたクラスメートたちは、エインの声でなんとか散らばってくれた。王子様スゲェ~。

 放課後は自由なので、学園を探索してみようと思う。

 地下への行き方を見つけたいのだ。


 「このあたりの真下でしたよね」


 「そう。地面を直接下りて行ってもいいんだけど、この下に何があるかわからないし、バレたときに面倒だからね。この辺の建物に入って探してみようか」


 そうして、研究棟やら実験棟やらその辺にあった建物に入っては下への階段を探し、時には建物にいた人に聞きながら地下への入り口を捜索した。


 そして、見つけた。

 ただ、見つけ方は少々良くなかった。


 ある研究室にいた人に聞いたところ、知らないと言われたが、その人が嘘をついているのをわかってしまった。

 そしてその研究室は、魔物の研究室だった。


 怪しさ満点過ぎたから、いったん出ていくふりをして気配を偽り、その研究室を探し回った。

 そしたら、重そうな檻の床に細工がしてあって、そこから地下へ行けるようになっていたようだ。

 なぜそこがわかったかというと、わずかに魔力がたまっていたのでその辺をいじってたら、入り口を偽っているのが確信できた。

 つまり、俺の概念のおかげだ。

 でも、そこに階段があるということはわかったが、開け方はわからなかったので、他の人が使うのを待ってみた。


 そして数時間が経ち、今日が入学式ということもあってほとんどの人がこの学園からいなくなると、その研究室にいた人が檻の床ではなく檻のおいてある壁側に魔力を流して開けていた。

 その人が入っていくのと同時に俺たちも入っていく。その人は地下に下りてすぐボタンのようなものを押して入り口をふさいだ。

 入り口には“関係者以外立ち入り禁止”と書いてあった。



 ♢ ♢ ♢



 しばらく階段を下りていくと、少し薄暗いが研究室があった。

 そして、そこには弱そうな魔物からおそらくBランク相当であろう魔物までもが檻や水槽に入れられており、何らかの実験に使われていた。


 ただ、まだこれは魔物の研究としては不思議ではない。

 俺が違和感をもったのはこれほどの規模なのにそこには誰もいなかったということだ。

 入り口を隠しているからには何かがあるのだろう。

 万が一は俺の仮転移でいったん逃げることはできる。

 その間に先生方へ伝えて助けてもらえれば十分だ。


 そんなことを考えていると、さっきの人が紙束と羽ペン、そして謎の肉の塊をもって歩き出した。

 最初の部屋からも3つほどドアがあり、その人は来た道から最も遠くのドアに手をかけ、出ていった。

 俺たちも後を追ってそのドアを開けると、そこにはかなり広く先の見えない通路があった。

 左右の壁にいくつかの部屋があり、ちょっとした分かれ道もあってとても迷いそうだが、その人についていくことにした。

 通路をしばらく歩いているとその人は大きな通路を歩いている途中でいきなり止まった。

 ずっと紙束の文字を見ながら歩いていたが、ふと顔を上げてこちらを振り返ってきたのだ。

 一瞬ドキッとしたが、そのときにシアが俺の手を握ってきたのでさらにドキッとしてしまった。


 「誰かいるの?」


 今確かにドキッとしたから気配がわかりやすかったのかもしれないけど、概念を途切れさせた覚えはない。

 俺は気配を完全に偽っていると思っていたのに。

 なんともすごい気配察知能力だ。

 もしかしたらこの人はすごく強い人なのかもしれない。


 しばらく黙っていたが、その人はおもむろにもと来た道を戻り始めた。

 そして最初の部屋に戻って紙束をしまうと、階段を上がっていく。

 まだ出入口を知らない俺たちも仕方なくその人についていった。

 その人は階段の上まで来ると、また来た時とは違うボタンらしきものを操作して床を開けた。

 その人が地上へ出た瞬間にその床は締まり始めたので、俺は自分とシアの速度を偽ってすぐにそこから脱出した。



 ♢ ♢ ♢



 「いや〜危なかった。あんな所にあれだけ広い地下通路があるとはね」


 「はい。先ほどの方も何か隠しているようですし、何より、私たちの存在に気づいたようですので要注意かと」


 「そうだね。俺もあれは驚いた。もしかしたらとんでもなく強い人なのかもしれない」


 「ノール様なら大丈夫ですが、これからあの地下はどうなさりますか?」


 なんかしれっと断言してるけど、あんな地下だとちょっと怖いんだよな。


 「明日からは普通に授業があるし、仮転移で少しずつ捜索しようかな」


 「なるほど。それならば安全ですね」


 しかし学園はこのことを知ってるのかな?

 一応魔物の研究するだから、地下のを見ても不思議ではないけど、あんなに厳重に隠しているのは怪しい。

 ただ、入り口に“関係者以外立ち入り禁止”って書いてあったから、何か重要な研究をしていたのかもしれない。

 それにしては人がいなさすぎだけど。


 あとはさっきの人。ここの研究員っぽいけどかなり危険な感じがする。

 まぁ、明日からは授業があるし、少しずつ調べてみるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る