第33話 ステータスの記録
「シア・アースファルさん、測りに来てください」
ルナと話していると、シアの名前が呼ばれた。
シアに群がってた人たちはシアのステータスを見ようとしている。
「ちょっと席を外すね」
俺はシアのステータスをどうするか相談するために、一度ルナとの会話を終わらせる。
位置座標を偽って、シアの隣に出る。
「シア、ステータスはどうしようか?」
「あの時と同じで、概念だけ隠していただけますか」
「おっけー」
いきなり現れた俺に驚いて、主に男子からは刺すような視線を浴びながら、シアのステータスを偽った。
先生に訝しげな視線を向けられるし、みんな(特に男子)からの視線も痛いのですぐにルナのもとへ戻る。
「いや~、みんな怖いね。俺が何をしたっていうのかな?」
「今、何をしたの?」
「え、今のっていうのは. . . . . .?」
まさか、俺がシアのステータスを偽ったのがばれたのか?
いや、でもさすがに相手の概念を見破るなんて無理だと思いたいし、そもそも俺は魔力を隠してやったんだけど。
「今の移動。私には予備動作が見えなかった」
なるほど、そっちか。
まぁ、転移の魔術は完成されて無いらしいし、驚くのも当然か。
「えーと、今のは、まぁ、俺の能力?だよ」
「オリジナルの魔術. . . . . . ?」
どうしよう、これの説明はした方がいいのか?
でも、俺の概念にかかわるし、どう説明しようか。
「レベルが50越え!?」
「すごい. . . . . .」
「魔術適性も高すぎる. . . . . .」
俺が悩んでいる頃、教室の前の方ではシアのステータスにクラスのほとんどの人が興奮ていた。
「ノール・リューゲ君、こちらへ」
おぉ、ナイスタイミング。
これで有耶無耶にできるぞ。
「あ、呼ばれたから行ってくるね」
「. . . . . .」
クラスメイトに囲まれたシアを通り過ぎて、先生のもとへ来る。
「はい、じゃあここに手を置いてくれますか?」
「はい」
そうして手を置くと、偽った通り概念は表示されず、レベルが73と表示された。
「なっ、73?さっきのシアさんもあり得ないくらい高いと思ったけど、これはもう意味が分からないわ」
「えっと、もう、いいですか?」
「まぁ、シアさんにも色々聞きたいですけど、噂通りだし
「ありがとうございました」
なんだその理由は。しかもこれは後で呼び出されるパターンだ。
♢ ♢ ♢
ルナのもとへ戻ると、少し目を見開いているように見えた。
この子は表情の変化が乏しく、何を考えているのかわかりにくい。嘘はわかるけど。
「やはりあなたは異常」
「えぇ、なんでそうなるの?」
「他の人はあそこのシアって人しか見えてないけど、あなたはあの人とは比べられないくらい異常。他の人が何も見えていないのが理解できない」
つまり、シアよりも俺の方が強いって言ってるのかな?
でも魔術はシアの方が上だし、試験官を倒したのはシアだし、どこでそう思ったんだろう。
やっぱり概念がバレてたりして。
「え~と、どうしてそう思うの?」
「レベル70越えは国でも数人しかいない。まだ50代の方が理解できる。それに、さっきの移動方法はおかしかった。あなたはどこか不気味」
なるほど、レベルが高すぎるのが原因か。
さっき先生も意味わからないって言ってたし。
概念がバレてるわけじゃないから安心、安心。
「あ、そういえば、この学園の地図とかどこにあるかわかる?地下が気になるんだけど」
「それは無い。自分で行って覚えて」
え~、厳しい。
せっかくあの地下の生き方が分かるかと思ったんだけどな。
♢ ♢ ♢
アイナ先生視点
私はこの学園に来て4年目だが、今年の生徒は2人ほど見たことないぐらい不気味であった。
生徒にこんなことを思うのはいけないかもしれないが、それでも不気味なものは不気味なのだ。
まずは、シア・アースファル。
おそらく10年ぐらい前にいなくなってしまった、あのアースファルだろう。
あの家は代々魔術に優れていて、貴族ではないがそれなりに名が知れ渡っていた。
どうしていきなり当主が亡くなったのかはいまだ不明だが、そこの子供がまさかこれほどの化け物になるとは思わなかった。
さっき見たステータスは、この学園の先生の中でもかなり上位に入るだろう。
もはや実力においてはここで学ぶことは無いと思う。
頭脳の方も、貴族でも8割をとるのが難しい試験で満点を出しており、この学園でもトップクラスなのは間違いない。
私では教えられるか不安で仕方がないけど、もう1人の方はもはやこの学園にいていい人じゃないと思う。
噂で副学園長とやりあったと聞いたときは全く信じられなかったけど、さっきのステータスを見て信じるしかなくなった。
年齢とか関係なくレベル70越えは普通におかしい。
もうSランク冒険者に届いているかもしれない。
副学園長とやりあったのも頷ける。
それに加えさっきの移動方法。
何もない所にいきなり出てきたように見えた。
あれはおそらく転移魔術に近い何か。
オリジナルの魔術だと思う。
たぶん、他にもまだ隠していそうだ。
本当に得体が知れない。
あのシアさんもノール君を慕っているようだし、よほどすごいのだろう。
これからが不安で仕方がない。
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