第32話 学園での友達

 クラスに来て最初に話しかけられたのが王子様だったとは思わなかった。

 友達がいないっていうのは、王子様も大変なようだ。


 「それで、なんで俺のことを知ってたんだ?」


 「さっきも言ったけど、先生方が話しているのを耳にしてね。入試で化け物みたいな成績を出したやつがいる、と」


 なんだそれは。

 確かにシアよりは派手にやったけども、化け物呼ばわりされるほどかな?


 「そんなに噂されるほどかな?貴族の人たちの中にはもっとすごい人がいそうだけど」


 「君が噂通りの実力なら、そんな学生はここにいないね。少なくとも、私よりはよっぽどすごい」


 「え、でも、エイン. . . . . と呼ばせてもらうけど、エインは魔術がすごいって聞いたよ?」


 「まぁ、それなりには使えるよ。ここだけの話だけど私は入試で3位だった。2位はシアさんで、1位は君だ」


 「なんで俺の方が上なんだ?的吹き飛ばしたんだから精度は測れないだろうし、試験官は倒せなかったのに」


 「的を吹き飛ばすなんてことは普通出来ないよ。私でも真ん中の的を何とか破壊できたぐらいだ。それに、君を担当した試験官の先生はあの副学園長先生だったんだろう?あの人は元Sランクの冒険者だからね。普通にやりあえただけでも十分化け物だ」


 マジか。あの人元Sランクの冒険者だったのか。

 ん?じゃあ、魔力無しならそれなりに戦えたし、俺ってこの国でも結構強い方なのか?


 「皆さん、おはようございます。ようこそ特待生クラスへ」


 初めてできた友達のイケメン王子ことエインとそんなふうに話していると、担任の先生っぽい背の低い茶髪の女性が入ってきた。


 「私はこの特待生クラスの担任を務めます、アイナです。本日はまず自己紹介をしてもらいます。その後、この測定器具を用いて皆さんの現在のステータスを記録します。これをもとにこれから1年間自分を高めるために頑張ってください。では、この列からいきましょう」


 そういって、俺たちの座っている廊下側とは反対側の窓に近い列から自己紹介が始まった。


 「私は. . . . . . よろしくお願いします」


 「僕は伯爵家の. . . . . . 」


 貴族の人たちが自己紹介をしていくが、やはり俺の耳には届かない。

 前世でもこんな感じで名前を覚えるのが苦手だったから、友達が少なかったんだろうな。

 頑張って覚えようとしてるんだけど、全然頭に残らない。


 「私はエイン・オーストシェン・アスラ。この国の第2王子をやっているけど、みんなには身分を気にせず、ぜひ気軽に話してほしい。同じクラスメイトとしてこれからよろしく」


 パチパチパチ~


 なぜか拍手が起こった。

 いや、まあ確かにカリスマ性を醸し出してて拍手したくなるけど。

 ていうか、次俺の番じゃん。


 「え~と、俺はノール・リューゲです。王都には最近来たばっかですので、色々と分からないことが多くて足を引っ張るかと思いますが、1年間よろしくお願いします」


 どうだ!前世の俺の失敗を生かして、それなりの自己紹介ができただろう!


 「. . . . . .」


 まぁ、王子の後じゃ俺のなんてただの石ころ同然だな。

 シアの自己紹介が少しかすんでくれたらありがたい。


 「私はシア・アースファルと申します。ノール様と共にこちらへ来ました。貴族ではありませんが、仲良くしていただきたいです。これからよろしくお願いしますね」


 と、シアが優雅にお辞儀をして微笑みかけると、全員が固まった。

 確かにあのスマイルはこの場の全員(主に男子)を殺しに来てる。


 「え、え~と、はい、コホン、では次の人どうぞ」


 アイナ先生までテンパっているじゃないか。

 わからんでもないけど、これはシアが大変なことになりそうだな。



 ♢ ♢ ♢



 そうして自己紹介が終わった後、ステータスを一人ずつ測ることになり、待っている間は自由にして親睦を深めてほしいとのこと。

 もちろんほとんどの生徒はエインとシアのいる俺たちの机へやってきた。


 「エイン様、私は. . . . . .」


 「代表の挨拶は素晴らしかったです。ぜひこの僕と仲良く. . . . . .」


 「シアさん。入学試験はすごかったとお聞きしました。よろしければ. . . . . .」


 「シアさん、俺は男爵家の. . . . . .」


 とまぁ、エインとシアにめちゃめちゃ群がりだした。

 俺は見向きもされておらず、みんなから邪魔そうな視線を送られてくるので、仕方なく隅の方に一人でいる女子生徒に話しかけに行った。

 決してやましい思いがあったわけではない。

 話しかけれそうなのがその人だけだったのだ。


 「え~と、はじめまして。俺はノール・リューゲっていうんだけど、ちょっと話してもいいかな?」


 「どうぞ」


 「ありがとう。ちなみに君の名前は?」


 「ルナ」


 「ルナね。よろしく。ルナも貴族だよね?このクラスって俺たち以外はみんな貴族なのかな?」


 「あなたたち以外は全員貴族。そもそもBクラス以上は平民はいない」


 「え、そうなの?あんなに平民枠で受けていたのに?」


 ここで、この学園のクラスについて少し説明しておこう。

 

 まず、クラスは入試の成績順で決まっている。

 1クラス40人で、特待生のクラスだけ20人だ。

 上からS(特待生クラス)、A、B、C、D、E、F、Gまでの8クラス構成、1学年の人数は300人である。

 ルナの話によると、入試では俺たちを除いて、上位100人は全員貴族のようだ。


 「そもそも平民は教育の機会がないから受からない。あなたたちは異常」


 おぅ、また異常呼ばわりだ。さっきは化け物だったけど。


 「まぁ、それは置いといて、貴族ってみんな知り合いなの?教室入ってきたとき大体の人が立って話してたよね?」


 「パーティーや王宮で挨拶ぐらいはする。私は挨拶以外しなかったから仲のいい人はいない」


 う~ん、なんかちょっと訳ありかな~。


 「どうして挨拶しなかったの?」


 「興味がなかった」


 あ、これ嘘ついてるな。





――――あとがき――――


 いつも読んで下さりありがとうございます。

 今回は変な終わり方になってしまいましたが、許してください。

 なんともいい区切り方が思いつかなかったのです。

 しかも次回はこの2人の会話の続きはありません。

 ごめんなさい。変に感じますでしょうけどご容赦ください。


 次はステータスを測るので、この会話の終わり方は忘れてください。

 それでは次回もよろしくお願いします。

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