第26話 暗い雰囲気
サラ達のステータスも確認して、日々の鍛錬とザックさんたちのやることを指示した後に、ちょっとだけみんなと鍛錬して、おしゃべりして、宿に帰ってきた。
「じゃあ、寝ようか、シア」
「はいっ」
シアとは初日から、宿では一緒に寝ることになった。
まぁ、シアは嬉しそうだし、俺はちょっと寝れないかもしれないけど嬉しいには変わりないからいいんだけどね。
この宿でのお泊りも今日で終わり。
明日は最後に王都を観光して、昼ご飯を家族で食べて、また家に帰る予定だ。
シアと王都を観光するのは学園に受かってたらいつでもできるけど、落ちてたらなかなかできなくなるから、楽しんでおきたい。
そんなことを考えてたら、シアが近寄ってきた。
「ノール様. . . . . . ノール様はサラちゃんのためにあの貴族を潰すおつもりですか」
「うん、そうだな。でも、サラのためとはちょっと違うかな」
「どういうことですか?」
「サラはもう過去のことはどうでもいいって言ってたでしょ?あれは本心から言ってたから、サラにとって、あの貴族はもうどうでもいいんだよ。ただ、俺がそうしたいってだけだ」
「それでも、サラちゃんのためですよね?」
「俺はそう思ってるけど、実際はただやりたいから潰すだけの自己満足だよ」
「やはり、ノール様はお優しいです. . . . . .」
そう言って、抱きしめてきた。
「ノール様。明日も楽しみましょう」
「あぁ、そうだね。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
うん、俺は寝付くのに2時間かかったけどね。
♢ ♢ ♢
翌朝、いつものように両親に言って、俺はシアとともに学園の近くに来ていた。
なぜ学園なのかって?そんなの大体の場所を回っちゃったからに決まってるだろ。
まあ、正確にはまだ行けてないところは山ほどあるが、俺もシアも学園の方が興味があった。
「この前も思ったけど、ほんとにでかくて広いな~」
「はい。学園の周りにも美味しそうな食べ物屋さんとか武器屋さんがありますね。試験の時には学園の中にも食べ物を売っているところがありました」
「あ~、あったね。確かにおいしそうだった」
学園の中を探索してみたい。
そう思えるほど敷地が広く、周りを歩いているが、一周するにはかなり時間がかかりそうだ。
そんな風に歩いていると、道のわきに男の子を見つけた。
なにやらとんでもなく暗い雰囲気で学園を見つめている。
ん?あの子って門の前で貴族とトラブってた子じゃね?
「やぁ、3日ぶりかな。大丈夫?かなり暗い雰囲気出してるけど」
「あ. . . . . . あなたは、門で助けてくれた人. . . . . .」
覚えていてくれたらしい。
「えっと、俺はノール・リューゲっていうんだけど、何かあったの?」
「あ、僕はカイン・ドレ―エンと言います. . . . . . 実は、入学試験の筆記試験で力が暴走しちゃって. . . . . .」
あ、そうだった。
筆記試験の途中で魔力を感じて、この子が失格になっただろうって話をしてたな。
「受かってる可能性はないの?」
「筆記試験で失格と言われましたから、絶対に受かってません。頑張ってここまで来たのに. . . . . .」
それはなんとも悲しいことだな。
しかし、暴走するというのはもしかして概念持ちか?
呪いと言われてるやつかもしれない。
「カイン. . . . . . と呼ばせてもらうけど、カインは学園で何したかったの?」
「この力をなんとかして、魔術師とか冒険者になるつもりでした」
なるほど、それならばいいことを思いついた。
「じゃあさ、俺たちと一緒にその力を使う練習しない?」
「えっ?」
「学園には通えないけどさ、その力を何とかできるかもしれないし、魔術の練習もできて、冒険者に近づけると思うよ」
「でも、ノールさんは学園に通うんですよね?」
「まぁ、まだ合格発表されてないけど、そうだと思う」
「でしたら、僕とは練習ができないじゃないですか」
「あぁ、俺の知り合いに冒険者の人がいてね。よくその人と練習してるから、一緒にやらない?」
「でも、冒険者の人は迷惑じゃないですか?」
「う~ん、その人は他にも一緒に子供たちの面倒を見てくれてるから、喜んでくれると思うよ」
「でも. . . . . .」
まぁ、急に言われたら戸惑うわな。
ここは少し考えてもらおう。
もし概念持ちならとても興味深いし、そうでなくても暴走する力は調べておきたい。
サラの呪いについて何かわかるかもしれないからね。
「じゃあ、今日の夜にその人の所へ行くつもりだから、そのときに聞いてみるよ。君はいつまでここにいるの?」
「両親に失格だなんて言えないので、合格発表まではここにいようかと思っています」
「なら、また明日ここにくるから、そのときまで考えておいてほしい」
「ノール様。明日は馬車の中ですよ」
あ、そっか。今日の昼にここを発つんだった。
えぇと、そうなると、3日後とかかな?
「あ、ごめん。明日と明後日は用事があるから、3日後にここに来てもいいかな?」
「は、はい。わかりました。考えておきます」
よーし、また一人森の住人が増えたぞ。
まぁ、まだ増えたと決まったわけじゃないけど。
いや、別に増やしたいわけでもないんだけどね。
「それじゃあ。シア、帰ろうか」
「はい。ノール様」
また馬車の旅かぁ。
両親がいちゃつく上に身動きができないけど、シアが隣にいるからいいか。
そういえば、明日から森の方へ行けなくなるけど、ノワールへのお土産どうしようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます