第24話 子供たちの世話

 王都を観光し終えて夕食を宿で食べ、疲れたから部屋で寝てる(大嘘)と両親に言って、窓から森へと飛び立った。

 ノワールと子どもたちの様子を見に行くためである。

 もちろん、ちゃんと王都でのお土産を持って。


 森に到着すると、まずはみんなのためにうさぎ型の魔物を狩る。

 魔物を探して森を歩いていると、2人の冒険者が向こう側から歩いてきた。

 1人はすらりとした青年で、もう1人は少し小柄な女性だ。


 「あっ、あなたたちは. . . . . .ノールさんとシアさん!」


 どうやら、俺たちのことを知っているらしい。

 まぁ、この町では一番の冒険者だからそれなりに知名度はあるのだろう。


 「こんばんは。どうかしましたか?」


 「私はザックと言います。こっちはレイです。もう覚えてないかもしれませんが、私たちのことを助けていただいたので、ぜひお礼がしたいんです」


 ??? この人たちは初対面な気がするんだが?

 誰かと間違えてるんじゃないのか?


 そう思って、シアに視線を送ると、


 「昔、狼の魔物の群れから助けた方々ですよ」


 と、小声で答えてくれた。

 あぁ、確かにそんな人たちもいたなぁ。

 ノワールの存在がでかすぎて覚えてなかったわ。


 「あ~、あの時の方ですね。ご無事で何よりです。しかし、お礼は必要ありませんよ」


 「いえ、命を救ってもらってお礼も無しは、自分を許せません。ただでさえ軽率な真似をして死ぬところだったのに」


 「いや、本当にその言葉だけで十分ですけど」


 「いえ、お礼をさせてください。できることなら何かお役に立ちたいです」


 う~ん、どうしよう。

 ほんとにお礼なんて必要ないんだけどな。

 でも、この人たちは譲る気無さそうだし。


 「シア、どうしよっか」


 「あの子たちの面倒を見させるのはどうですか」


 なるほど、それは確かに助かるな。さすがはシアだ。

 しかし、ノワールのこととかを説明しないといけないな。


 「えーと、一つ、やってほしいことがあるんですけど」


 「はい、何でも言ってください」


 「ちょっと危険かもしれないし、他の人には絶対に言わないでほしいんです」


 「分かりました。口が裂けても言いません」


 うん、嘘はついてないから、本気なんだろう。

 相手の偽りがわかるって便利だね。


 「えーと、じゃあ、少しついてきてください。道中で説明しますので」



 ♢ ♢ ♢



 森の奥に着くと、ノワールと子供たちが待っていた。


 「おぉ、主か。ん? そやつらは何だ?」


 「この人たちはさっき会った冒険者の人で、ザックさんとレイさんだ。昔俺たちが魔物の群れから助けたことがあってね。そのお礼として、みんなの面倒を見てくれるよう頼んだ」


 「「っ、よろしくお願いします」」


 「本当に大丈夫なのか?」


 「多分。この町でもそれなりに強くて有名な人たちだよ。」


 さっきの説明で、ノワールにめっちゃビビってるな。

 こりゃ概念解いたらどうなるかわからん。


 「まぁ、主に子供たちに常識と、料理とかの技術を身に着けてもらいたいから、そこの教育をお願いします」


 「は、はいっ!お任せください!」


 そういうわけで、新しく2人の冒険者、ザックとレイが子供たちの世話に加わった。



 ♢ ♢ ♢



 ザック視点


 今日も森の深くまで行って宿に帰ろうというとき、前の方に2人の冒険者を見つけた。


 「あ、あなたたちは. . . . . .」


 そう、その人たちは、2年前に魔物の群れから助けていただいた命の恩人だった。


 その人たちも、俺たちのことを覚えていてくれて、何とかお礼をしたいと願った。

 今までも見かけるたびにお礼をしようと思ったが、俺たちはお金もなければ力もなかったので、森の奥深くまで行き、強くなってきた。

 最近はこの町でもかなり強い冒険者として有名になっていたほどだ。

 だから今日、ここで絶対にお礼をしたいと思った。

 ようやくお返しができるのだから。


 「じゃあ、少しついてきてください。道中で説明しますので」


 なんとか頼み込んで、お返しができそうだ。


 そうして、森の深くへどんどん入り込んでいきながら説明を受ける。


 「え~と、まず、俺たちのことなんですけど、ちょっと見ててください」


 そういうと、さっきまでの人たちの姿が揺らぎ、小さな少年と少女になった。


 「っ?! 姿を自在に変えれるのですか?!」


 「うん、まあ、そんなところです。それで、俺たちの本当の姿はこっちで、一応、年齢は2人とも12歳です」


 なんと、その2人はとてつもなく高いレベルにも関わらず、たったの12歳だった。


 「. . . . . .」


 「えーと、色々説明しないといけないんですけど. . . . . .」


 そうして、放心状態の俺たちにさらに訳の分からない説明をする。

 ノールさんが言ったことはこんな感じだ。


 数年前の魔物の動きは、この地に来たドラゴンの影響である。

 そのドラゴンをなだめてノールさんが契約をし、人を襲わないよう森の深くに住まわせている。

 そして最近、王都で奴隷にされていた子供たちを5人ほどこの森に連れてきて、そのドラゴン(普段は女性の姿で、名前をノワールというらしい)に世話させている。

 ただ、ドラゴンは人間の生活に疎く、子どもたちの安全を守るくらいしかできないため、自分たちに知識や技術面で教育してほしい。


 とまぁ、まとめてみたが、何を言ってるんでしょうかね?

 まず、ドラゴンが来た時点で国が動く一大事なのに、それをたった二人で解決して、しかも契約までして子供たちの世話をさせている、と。

 その上、その子供たちも王都で奴隷にされていたのを助け出してここまで連れてきた。


 とても俺たちには真似できない偉業だ。

 それを、まだたったの12歳で成し遂げた。

 なんとも恐ろしい人たちだ。


 「. . . . . . とまぁ、そんな感じだけど、どうでしょう。やってくれますか?」


 「はいっ。お任せくださいっ」


 ドラゴンに会うのも恐ろしいが、この人たちに背く方が恐ろしい。

 絶対に失敗しないようにしないと。


 「あっ、そうだ。その子供たちのステータス見たいんで、もし測定器具あったら今度持ってきてくれませんか?」


 「わかりました。明日に必ず持ってきます」


 「ま、まぁ、そこまで急がなくてもいいんですけど. . . . . .」


 何としても子供たちを立派に育てて見せよう。

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