第23話 王都の観光
学園の入学試験が終わり、結果が出る1週間後まで暇になった。
貴族は合格したら受験番号が学園に張り出されるらしいが、平民枠は家に通達が届くらしい。
何でも、平民が受かることは少ない上、全員が見に来たら大変なことになるからだそうだ。
確かにあの数が来たらちょっとどころの騒ぎではなくなるな。
と、いうわけで、俺たちは2日間だけ王都を観光して帰ることになった。
つまり、この2日間はシアと楽しく過ごせるのだ。
「シア、どこに行こうか?」
「そうですね. . . . . . 商業の盛んな場所へ行ってみたいです。」
「そういえば、まだあっちの方は行ってなかったね。俺も何があるのか楽しみだ」
「ノール様と一緒なら何処でも楽しいです」
俺もシアと一緒なら何処でも楽しめるだろう。
一応姿を偽って行くが、できるならシアの服もいろいろ見てみたいな。
「それじゃ、ちょっと行ってきまーす」
♢ ♢ ♢
てなわけで、商業地区の方にやってきた。
名前の通り様々な商業が発達している地区で、飲食店だけでなく服屋や武器屋、装飾店に市場などいろいろある。
とりあえず、気になっていた服屋とか装飾店に入ってみて、シアに似合いそうなものを探す。
「シア、これなんてどう?」
「きれいですね。さすがノール様です」
ただ、姿を偽っているので、試着や実際につけるときは気を付けないといけない。
本当はそのままの姿で着てみてほしいが、平民の子どもが2人だけで店に入っても、追い出されるだけだろう。
今度は誰かを保護者代わりに連れてこよう。
ん? いや、俺が保護者になって、シアの姿を偽らなければいいんじゃないか?
「シア、次の店にはシアの姿を偽らないで行きたいんだけど、いいかな?」
「?. . . . . . はい。私は構いませんが、ノール様はどうなさるのですか」
「俺はこのままの姿で、シアの保護者?的な感じにすれば、シアの服とか見れるし」
「なるほど、私はノール様の娘になるのですね」
シアが俺の娘っていうのはなんか変な気分だ。
前世では悲しいことに、家庭を築く夢もなかったしな。
♢ ♢ ♢
そして、いくつかの店を回り、シアの服を買ってみた。
お金はもちろん冒険者として働いて得たお金を使っている。
さすがにお金は偽りたくないしね。
「シア、本当に似合ってるよ。すごくいい」
「. . . . . . あ、ありがとうございます」
「このアクセサリーとかも似合うんじゃない?」
「. . . . . . どうでしょうか?」
「おぉ、超似合ってる。シアのために作られたみたいだな」
「. . . . . . ありがとうございます」
終始顔を赤く染めて話しているシアだが、ちょっと可愛すぎると思う。
「. . . . . . ノール様、こんなに買っていただいてよろしかったのですか?」
「うん、シアの服は今まであり合わせだけだったからね。これからはもっと楽しまないと」
「ありがとうございます。しかし、ちゃんとお金の管理はしてくださいね」
もちろん、使いすぎて金欠 . . . . . . なんてことにはならないように気を付けている。
まあ、シアのためなら金欠になってもいいけどね。
前世で言う、“推し活”的な感覚だ。
店を出て、次に行きたい所を探す。
「シア、他に行きたい所とかない?」
「私はたくさん付き合っていただいたので、次はノール様のいきたい所に行ってみたいです」
おぅ、俺の行きたい所か。
正直、シアと一緒ならどこでもいいんだけど。
う~ん. . . . . . 、あ、一つ思いついた。
「じゃあ、武器屋に行ってみたい」
♢ ♢ ♢
もうお昼になっていたので、近くのレストランで昼食を済ませてから武器屋を探す。
まあ、武器屋なんて入ったことがないので近くの所を選ぶと、客はおらずかなり静まり返っていた。
「いらっしゃい、何をお探しで?」
どうやら店主?っぽいドワーフのおじいさんが店の奥から歩いてきた。
「いや、特にこれといったものはないんですけど、どんな物があるかな~って」
「そうかい、まぁ、何かあったら聞いてくれ」
「はい、ありがとうございます」
そう言って、店の中を見て回ると、様々な種類、形の剣や斧、弓が並んでいる中で一つ、気になるものがあった。
「これって何ですか?」
それは、柄の部分に赤黒い魔石の埋め込まれた魔剣のようだった。
値段は. . . . . . あまりに高すぎてもはや見物用だな。
「それは、魔剣の一種だな。魔力をその魔石に流すと、使用者の身体能力が強化される」
身体能力を強化する魔剣とは、結構面白いな。
普通、魔剣って聞いたら火が出るとか、凍らせるとかだと思っていたから、まさか身体能力の強化ができるなんてな。
「この赤黒い魔石が強化してくれるんですよね?」
「そうだ。この魔石は滅多に出回らなくてな。この前、本当にたまたま手に入れたんだ」
「普通の魔石とは違うのですか」
「あぁ、普通の魔石は魔力の塊だが、こいつは魔力の供給源を強化する性質があってな。昔から貴重な戦力として利用されていたらしい」
「剣の性能は強化されないのですか?」
「もちろん、魔力を送っている間は剣自体も硬くなるから刃こぼれしにくくなる。ただ、あまり魔力を送り込み過ぎると、逆に剣が耐えられなくなって折れてしまうらしい。まぁ、鋼鉄が耐えられないほどの大量の魔力を持ってる奴なんて存在しないがな」
「え?じゃあ、どうやって折れることが分かったんですか?」
「あぁ、それはな、その魔石は昔、魔物との契約の時に使われていたものなんだ。大概、契約する魔物は契約者よりも弱いからその魔石で強化しとったんだが、ほとんどの魔物が魔力に耐えきれず寿命が短くなったそうだ。それで、今は魔物の契約に使うことは禁止されておるが、武器に使っても同じ効果が出るもんだから、魔物と同じく折れるだろうって考えだ」
なるほど。そういえばノワールとの契約の時にそんな文章を読んだ覚えがあるな。
しかも赤黒いって、ノワールがなんか言ってた気がする。
まぁ、あとで聞いてみよう。
「お主は魔剣に興味があるのか?」
「あ、いや、そういうわけじゃないです。ただ、とても高価だったので」
「なるほどな。どれ、お主が持っている剣を見せてみい」
いつも持ち歩いている剣を渡す。
「ふむ、かなり刃こぼれしておるな。激しい戦いでもしよったのか」
あ、そういえばヒスイさんとやりあってだいぶ刃こぼれしたんだった。
「あはは~、はい、実はそれなりに激しい戦いをしたばっかでして」
「なるほどのう。なら、こっちの剣はどうじゃ」
そう言って、俺が持っていた剣とほとんど変わらない剣を渡してきた。
「それはこの剣と形も大きさも同じだが、素材が違って、かなり頑丈だ。その分、重くはなるがな」
なるほど、確かに重い。
しかし、これの方が強い威力を出せそうだ。
「これはいいですね。少し振ってみたいんですけど」
「この裏にちょっと広い場所があるからそこでやるといい」
そして、剣を振ってみると、思っていたよりもしっくり来た。
「ノール様、どうですか?」
「うん、これはかなりいいよ。これを買おうかな。シアも新しい剣を買う?」
「いえ、私の剣はまだ大丈夫ですので」
「そっか. . . . . . じゃあ、これください」
「まいどあり」
そうして新しい剣を買った。
まあ、これなら父さんにもばれないだろう。
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