第18話 入学試験(1)
受付には既に多くの人が並んでいた。
さっきの騒動で少し時間を取られてしまったので、ちょっと待たないといけない。
「それにしてもすごい人数だね」
「多くの人が、試しに受けてみよう、という感じで受けに来るらしいです。記念受験もあるそうですね」
「この人数を今日だけでやりきれるのかな」
「実際には、これと同じ人数が4日間受験するそうです」
「うへぇ、試験官とかよくやってられるね」
「はい、私も耐えられなさそうです」
そして受付が終わり、まずは筆記試験の会場へと向かう。
俺とシアは受験票を取りに行った時間が違うから、残念ながら違う部屋だった。
「もし何かあったら、遠慮なく魔術を使ってくれ。一応、偽る準備だけはしとくから」
「はい。ですが、大丈夫ですよ」
ちなみにだが、筆記試験の会場で魔術を使うと失格になる。
魔力を感知する魔道具が置いてあるから、多分偽れるとは思うけど魔力は決して使ってはいけない。
筆記試験の会場に行くと、半分以上が埋まっていた。
席についてあたりを見回すと、勉強しているものがほとんどだった。
俺も勉強しようかな、と思い本を出そうとした所で、大きな気配が一瞬だけ引っ掛かった。
本当に一瞬だけだし、この学園はすごく強い先生や生徒の気配が溢れてるから気のせいだと思うけど、それでも気になった。
その気配は、下から感じたのだ。
昨日と同じだな、と思うと、昨日の子供たちが思い出されて、どうしても気になってしまった。
まあ、さすがに学園だし大丈夫だとは思うけど。
♢ ♢ ♢
筆記試験は、思ってたよりも簡単なものばっかだった。
俺は前世でもケアレスミスが多かったから、一応全部分かったけど、もしかしたらどこかで間違えているかもしれない。
まあ、それなりの点数にはなるし、大丈夫だろう。
問題は次の魔術試験だ。
「シア、どうだった?」
「思っていたよりも簡単でした。全部解けましたよ。ノール様はどうでしたか?」
「俺も全部解けたんだけど、よく簡単なミスをしちゃうから、もしかしたらちょっと間違えてるかもしれない」
「そうでしたか。しかし、残りの2つでノール様ならば確実に特待生になれると思います」
「いやいや、さすがに難しいと思うよ。こんなに受験者がいるんだし、貴族もすごい人たちが多いと思う」
「今朝の貴族はあまり魔術が使えないようでしたが」
「まあ、あの子は、うん、きっと武術とか頭が優れてるんだよ」
「武術が優れているなら殴りかかったと思いますし、ノール様に魔術をぶつけようとした時点で救いようのないほど頭が悪いです」
おぅ、辛辣な言葉だ。
そして何気に俺を論破しに来てる。
くそっ、やはり俺の頭ではシアには勝てないようだ。
こうなったら話題を変えるしかないな。
「そういえばシア、試験中に魔力を感じなかった?」
「えぇ、感じましたよ。少し離れた会場からでしたが、おそらく失格でしょう」
「多分あれって、今朝の男の子だと思うんだ」
「えっ、そうだったのですか?」
「うん、そもそも筆記試験で魔術を使う馬鹿な奴はいないと思う。それが記念受験の多い平民ならなおさらね。それに、意図して使ったにしてはあまりにお粗末で魔力が漏れ出てたし、魔力を感じたのは試験の最後らへんだったでしょ?」
「確かに、そういわれるとそうですね」
「暴走してしまうのは仕方ないけど、可哀そうだな」
「そう. . .ですね」
少し暗い雰囲気になってしまったが、もう一つ聞きたいことがあった。
「話は変わるけど、試験前に下から変な気配を感じなかった?」
「変な気配ですか? . . . . . . 私はわかりませんでした。まさかまた奴隷の子たちでしょうか?」
「う~ん、それはわからない。俺も感じたのは一瞬だったし、気のせいってこともあるけど. . . . . .」
「気になりますか?」
「うん、あの子たちとはまた違った感じだったと思うんだけど、なんか地下っていうと嫌な感じがするからさ」
「入学したら、少し調べてみますか?」
「そうだね. . . . . . さすがに学園だから大丈夫だとは思うんだけど. . . . . . やっぱり調べてみよう」
ちょっと暗い雰囲気になってしまったが、次は俺が最も心配する魔術の試験だ。
「まあ、次は魔術の試験だし、集中していこう」
「はい」
そうして、次の会場へと移動するのだった。
――――あとがき――――
ようやく私の書きたかった場面のひとつに辿り着きました。
もっとささっとここまで来る予定だったのですが、いろいろと書いていたらこうなってしまいました。
一応、次回から無双させるつもりです。
もしよろしければレビューでアドバイスや感想をください。
できる限り直しますので。
あと、他の作品もぜひご覧ください。
今回も読んでくださりありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
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