第13話 王都に到着&偽りの気配
長いようで一瞬だった3日間の馬車の旅が終わり、ついに王都へ到着した。
門をくぐるときはシアの存在がばれるかもとヒヤヒヤしたが、無事に通過できた。
王都に着いてまずは宿をとる。
とりあえず荷物を部屋に置き、鍵を閉めて、俺は父さんと母さんに王都を見て回りたいとお願いすると、ちょっとのお金と注意事項を言われて快く許可してくれた。
日ごろの鍛錬で信頼されるようになったみたいだ。
俺としてはとても動きやすくてありがたい。
まあ日が暮れるまでは2時間ぐらいあるし、シアと食べ歩きをして美味しそうなものを夜にでもノワールに持っていけばいいだろう。
せっかく王都に来たのだから遊ばないとな。
「シア、どっか行きたいところとかある?」
「行きたい所ですか. . . . . . 私は王都に来たことは無いので、ノール様のおすすめがあれば行ってみたいです」
おう、ちょっと難しい注文が来たな。
これは俺のセンスが試されている。
一応、姿は冒険者の時の姿にしているので、それなりの店でも入って違和感はない。
ただ、俺たちはまだ12歳だから、周りが大人だらけだと俺もシアも緊張してしまうだろう。
姿を偽ってるのだから、服屋とかアクセサリーショップとかは無理だしな。
う~ん、どうしよう。
前世でこういった場合は. . . . . . あ、俺前世で彼女いなかったわ。
くそ、どうすれば. . . . . .!
そのとき、美味しそうな匂いが鼻を刺激した。
シアもその匂いのする方向へ目を向けている。
よし、あそこら辺で食べ歩きをしよう!
♢ ♢ ♢
「うっ、美味い」
「本当に美味しいですね」
食べ歩きをしながらいろいろと見て回っていると、日が暮れだしてきていた。
「よし、あとはノワールへのお土産にさっき美味しかったやつを買って、いったん部屋に戻るか」
「はい、そうですね」
そうして、いくつか気に入った食べ物を買って部屋に戻ろうとすると、いくつもの少し強い気配が一か所にかたまっていた。
王都なので特におかしなことはないが、気になったのは気配を感じた方角だ。
その気配は、下から感じた。
「?. . . . . . どうかされましたか?」
「いや、地下にいくつか強い気配を感じるんだが、何かあるのかな?」
「確かに感じますが、地下の空洞にたまに魔物が湧くことがあると本で読んだことがありますし、王都なら使われていない地下がたくさんあるのでは?」
確かに、本に書いてあったな。
魔物にしては少し気配が違う気もするが. . . . . .
「. . . . . . そうだな。とりあえずノワールにこれを届けないと」
まあ、俺が気にすることでもないだろう。
♢ ♢ ♢
部屋に戻って、シアには悪いが買ってきたものを食べてもらい、俺は家族と宿の食堂で夕食を食べた。
食べ終わるとすぐに部屋に戻って勉強する(大嘘)と言って、速攻で部屋に戻りシアと一緒に買ってきた食べ物を持って、部屋の窓から飛んだ。
3時間もすると、いつもの町が見えてきた。
いつもノワールが寝ているところへ降り立つと、いきなり炎が飛んできた。
熱量を偽ってただの風にしつつ、飛ばしてきた方向へ目を向けると、なにやら不機嫌オーラむき出しのノワールが立っていた。
「やあ、ノワール。随分と
「ふんっ、せっかく我が待ってやったというのに3日も来ないとはどういうつもりだ」
「いや、それは悪かった。馬車だと抜け出せなかったんだよ」
「夜に来ればよいではないか」
「それが夜は父さんが見張りをしててさ。いなくなったらすぐに気づかれる」
「むぅ. . . . . .」
「まあまあ、お詫びにこれ買ってきたから、機嫌を直してくれ」
そう言って、買ってきた食べ物を渡す。
怪しそうに睨んでいたが、一口それを齧ると、目を輝かせて一気に食べてしまった。
「なんだこれは!? こんなに美味しいもんが王都にはあるのか!?」
「うん、俺もおいしいと思って買ってきたんだ」
「我も連れて行け。他のも食ってみたい」
「いや、ノワールにはここの安全を守っててほしいんだよ。それに、この町にだってこれに引けを取らない程おいしいものはあるよ」
「なに? ならば我も町へおりるとしよう」
「いや、それもダメだって。だいぶノワールはその体に慣れてきたみたいだけど、普通に人殴ったら死ぬからね? 力はドラゴンのままなんだよ?」
「殴らなければ良いだけであろう」
「いやいや、そういう問題じゃないって。ノワールは人間のことをあまり知らないでしょ?だから、俺がいるときに町に連れ出してやるからそれまで我慢してほしい」
「むぅ. . . . . . それはいつだ?」
「まあ、学園の入学試験が終われば少し時間が空くから、その時にでも」
「わかった。それまでは主の持ってくるもので我慢しよう」
なんとも面倒なドラゴン様だな。
入学試験が終わったら、シアと一緒に王都を回ってみようとも思ってるし、さっさとノワールに人の生活に慣れてもらわないと。
「じゃあ、ちょっとだけ鍛錬しようか」
♢ ♢ ♢
ノワールの不機嫌を何とか直して王都の宿に戻ってくる。
父さんも母さんももう寝てるっぽいな。
明後日が入学試験だから一応明日も自由ではあるが、まあ、入学試験の復習をするべきだろう。
今日はさっさと寝ようかな。
「シアはベッドで寝てくれ。俺は床の硬さを偽って寝るから」
「いえ、私が床で寝ますので、ノール様はベッドをお使いください。学園に通わせていただくのですから当然です」
「え、でも床じゃ寝難いでしょ?」
「私は大丈夫です」
う~ん、どうしよう。
まあ、シアの寝る床の硬さを偽ればいいんだけど、ここは女性に寝床を譲るのが紳士の態度だと思う。
でも、シアもあまり譲る気は無さそうだし、困ったな。
♢ ♢ ♢
ついに夜が来た。
せっかくノール様と同じ部屋にしてもらったのだから、このチャンスは逃せない。
なんとかして一緒のベッドを使いたいが、ノール様は私にベッドを譲って、床で寝ようとしている。
さすがにそれはいけない。
助けていただいた上に学園へ通わせていただくのに、ノール様が床で寝るのはあってはならない。
ノール様はあまりベッドを使う気は無さそうだし、ここは私から言わないといけないようだ。
「でしたら、一緒に寝ませんか」
♢ ♢ ♢
どうやってシアにベッドで寝てもらうか考えていたら、シアの方からとんでもないことを言ってきた。
「えっ、いや、さすがにそれは良くないよ。第一、シアはそれで寝れるの?」
「はい、床で寝るよりはノール様と共に寝たほうが断然寝やすいです」
まあ、床で寝られるよりはそっちの方がマシか。
若干顔が赤く見えるのは気になるけど、お互い譲る気はないし、妥協しないといけないな。
「わかった。それで寝れるのなら」
♢ ♢ ♢
何とか言えうことができた。
ノール様も折れてくださり、同じベッドで寝ることができる。
さっきは寝やすいとか言っちゃったけど、実際は床のほうが寝やすいかもしれない。
まあ、そんなのはどうでもいい。
先にノール様がベッドに入っていったので、続いて私もベッドに入る。
すると、ノール様から魔力が消えた。
これは、いつも寝る直前にやるやつで、魔力を放出して空にし、魔力量を増加させているそうだ。
私もずっとやってきていたが、今日はそれはできない。
急いでノール様の鍛錬を止めないと。
「あの、ノール様. . . . . .」
私がそういった瞬間、私の気配を偽る魔力量だけ残して、ノール様は気絶してしまった。
「はぁ. . . . . . 。いや、でも、まだ明日があります」
私は明日に賭けるのだった。
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