第5話 家族を偽る

 「はっ」


 「やっ」


 俺は現在、父さんと剣の鍛錬をしている。

 近くの物陰には、本を片手にこちらを覗いているシア。

 もちろん、父さんはシアに気づいていない。

 剣の練習をしながら他人の気配を偽ることができるようになっていた。

 ただ、他人の魔力はなぜか偽れないので、シアには魔術を使わないようにしてもらっている。

 まあ、気を抜いて一撃入れられてしまったら概念が途切れそうになるから、結構集中しないといけない。

 シアには、家では本を読んでもらいつつ俺の鍛錬を見てもらって、親がいないときに一緒に鍛錬したり、勉強したりしている。

 服とかの身だしなみは、俺の持っていた派手でない、動きやすい服を着てもらっている。

 出会った日にその姿を見たときは、ちょっと見惚れてしまった。

 ご飯に関しては、ご飯の量を偽って多めについでもらい、シアにわけている。


 いや~、この概念、有能すぎる。


 朝、昼の鍛錬や読書の時間は今みたいな感じで過ごして、森に魔物狩りに行くときに一緒に行って、魔法や剣の実践練習をする。

 夜は基本外で寝てもらって、なんとかばれずに済んでいる。

 まだ今は秋ぐらいで、外でも寝やすいからいいんだけど、寒くなってくると何か考えないといけない。

 俺の概念で寒さを偽れないかな。


 「隙ありっ」


 「おわっ」



 ♢ ♢ ♢



 森に来ると、お気に入りの穴場でまずはシアに魔術と剣を教える。

 家では知識をつけてもらってるから、ここでは実際にやってもらって、俺が修正したり、コツを教えたりしている。

 どうやら魔術に関してはシアのほうが適性が高そうだ。特に、水と風の適性が多分5だと思うぐらいに上達が早い。

 普通、こういった適性や概念は大きな町には一つある教会とか、冒険者ギルドがもっている鑑定道具で測るらしい。

 俺は他人のステータスはわからないから、父さんに頼んで冒険者ギルドを見に行く時に、こっそりシアのステータスを測ってみよう。


 「詠唱は短縮できるよう、家でも練習できるから、いったん詠唱ありで使えるものをはっきりさせていこう」


 「わかりました」


 あまり大きな魔術を使うと他の人が来てしまうかもしれないから、概念を使って音を偽る。

 魔力は、自分のならば簡単に偽れるが、他人のではほとんど偽れないので、あまり魔力を込めないようにして、発動するかどうかだけを調べていく。


 魔術をある程度測り終わったら、剣の練習をする。

 シアは栄養が足りていなかったからか、体が細かったので、体力をつけてもらえるように体作りから始めた。



 ♢ ♢ ♢



 今日は、シアのステータスを測るために冒険者ギルドへ来ていた。

 父さんに頼んだ時は、まだ早い、と言われたけど、何度もお願いして、適性を測るために連れて行ってもらうことになった。


 「うわ~、すごい人だらけだ」


 ちょっと古めいた感じの大きな冒険者ギルドの前に行くと、筋肉がすごく、凶悪そうな武器をもった人々が出入りしている。


 「大丈夫だろうけど、絶対に離れるなよ」


 「はーい」


 まあ、後でシアのステータスを測りに離れるんだけどね。


 そうそう、シアは俺の後ろについてきている。

 さっきから、冒険者の人たちが俺のことをちらちら見てくるが、父さんを見て納得したように視線を外していく。

 もちろん、概念を使ってるから、冒険者の人たちにもシアのことは気づかれていない。

 もしシアが見えていたら、シアの可愛さに目を離せなくなるからね。

 たぶん、熟練の冒険者とかだったら見破られるだろうけど、ここは比較的弱い魔物しか出ないので、そんな冒険者はいないようだ。


 出入りする人々に交じって、俺たちも中に入っていく。



 ♢ ♢ ♢



 中には、昼になっていないにも関わらず、酒を飲む人がたくさんいた。

 こちらを興味深そうに見てくるので少し怖い。

 受付らしい人の所へ行って、測定道具の説明を受ける。

 まあ、俺はステータスが分かるから測定の必要はないので、説明を受けたらトイレに行くとか言って、シアと共に受付の人が測定道具を持ってきた部屋へと入り込んだ。


 「よし、じゃあ、測るか。説明は聞いてたよね?」


 「はい。ですが、私から測ってもいいんですか」


 「あぁ、うん、俺はどうせ後で測ることになるからね」


 「では、測ります」


 そして、測った結果は、


 名前:シア・アースファル

 年齢:7歳

 Lv:6

 適正

  火:3

  水:5

  風:5

  土:4

 概念:停止


 おぉ、適性で苦手なものはなく、水と風が5とは、逸材かもしれない。

 しかも、概念を持ってるし。

 この「停止」って概念もかなり応用が利きそうだな。


 「よかったです。概念を持ってました」


 「あぁ、これはすごいステータスだと思うよ」



 ♢ ♢ ♢



 「遅かったな。ん?なんか嬉しそうだが、何かあったか?」


 トイレ(大嘘)から戻ってきて、嬉しそうにしてたら確かに気持ち悪いかもしれない。


 「何もないよ?」


 今日ここにきた目的は達成したし、早く帰りたいからさっさと終わらせよう。


 あ、でも、概念を持ってること&今の俺のレベルが30なのがバレたら、めんどいことになるのは目に見えてるし、シアのちょい上ぐらいに偽っておこう。

 ちなみに、駆け出し冒険者のレベルは20ぐらいで、一人前といわれてる冒険者のレベルはだいたい30後半らしい。


 「Lvが高いですね。それに、風の適性が4ですから、きっと良い冒険者になれますよ」


 「父さんに鍛えてもらってるので。これからも頑張ってみます」


 よかった。ちゃんと偽れたようだ。

 かなり上機嫌な父さんとシアと共に、帰路についた。






―――――あとがき―――――


 読んでくださり、ありがとうございます。

 次回はシア目線の語り?回想?を混ぜるつもりです。

 気に入ってくださったら、また読んでください。

 他の作品もぜひご覧ください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る